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映画で英語学習「ロング・ウォーク・ホーム」~人種差別を考えるシリーズ②


Black Lives Matter。アメリカ社会が直面している人種差別問題。しかし抗議活動「Protest」は今に始まったことではありません。1955年アラバマ州モンゴメリーで実際に起こった「バス・ボイコット運動」。これは歴史に残る非常に大きな黒人差別への抗議活動「Protest」のひとつです。

今日はこのバス・ボイコット運動をモチーフにして描かれる「ロング・ウォーク・ホーム」という秀作をご紹介します。

「バス・ボイコット運動」とは

映画のストーリーの背景となるバスボイコット運動とはどのようなものだったでしょうか?

当時、黒人はバス乗車時、後ろ側にしか乗車できませんでした。1955年のある日、アラバマ州モンゴメリーで発端となる事件が起こります。ローザ・パークスという一人の黒人女性が、黒人用の席に座っていたところ、運転手に白人に席を譲るよう指示されます。しかし彼女はこれを拒んだことから、警察に逮捕されてしまうのです。これが「ローザ・パークス事件」です。

多くの黒人がこれに抗議し、公民権活動家キング牧師などの呼びかけに応じで、公営バスに乗車することを黒人層がボイコットしたのが、この「バス・ボイコット運動」です。

バスの利用者のほとんどが黒人であったため、バス事業を大打撃をうけ、その後、1956年に連邦最高裁判所がモンゴメリーの人種隔離政策は違憲であるとの判断を下した画期的なものでした。

ロング・ウォーク・ホーム

「ロング・ウォーク・ホーム」は、この運動をモチーフに、黒人と白人の両側の視点から、当時の人々の心情を淡々と描いていています。静かでありながらも不条理に対し強い怒りを秘める黒人。一方白人は、差別の気付きに愕然とする者と黒人の反発を許せない者に二分されてゆきます。

黒人の活動であるバス・ボイコット運動は、自宅で黒人メイドを雇っている白人の生活にも徐々に影響を及ぼしてゆきます。主人公の白人女性がこの騒動をきっかけに、それまで深く気にもかけていなかった黒人使用人の「人間性」に目を向けてゆくストーリーです。

最後のシーン、セリフは多くないのですが、強烈なメッセージに涙が止まりません。

「天使にラブソングを」でおなじみのコメディダイナマイト、ウーピー・ゴールドバーグが、この映画ではシリアスな役どころに挑み、非常に味わい深い演技を披露しています。

作品データ

原題:The Long Walk Home(1990)
監督:リチャード・ピアース
キャスト
  ミリアム・トンプソン:シシー・スペイセック
  オデッサ・コッター:ウーピー・ゴールドバーグ
  ノーマン・トンプソン:ドワイト・シュルツ

あらすじ

メイドのオデッサは、勤め先の白人家庭へ毎日バスで通勤しています。黒人はバス乗車時、どんなに前の方がすいていても後ろ側にしか乗車できなかった時代です。そんなある日、ローザ・パークスという黒人女性が「前の席に座った」ため逮捕されるという事件が起こり、怒った黒人たちが抗議の証にバス乗車をボイコットする運動を始めます。オデッサも仕方なく徒歩で数時間かけて通勤することに。それを知った女主人のミリアムは、勤務に遅刻してほしくない一心で、彼女を車で迎えに行くことを思いつきますが……

心に残るセリフ

ナレーションから始まります。映画の中で小さな少女だったメアリー・キャサリンが、大人になって当時を振り返るナレーションです。

Her name was Odessa Cotter. I called her Dessie.  As best as anyone knows she was the first woman to rock me to sleep. There wasn't anything extraordinary about her, but I guess there's always somethin' extraordinary about someone who changes and then changes those around her. That's me

「彼女の名前はオデッサ・コッター。私はデッシーと呼んでいた。私を抱っこして寝かしつけてくれた最初の女性だということは間違いない。彼女は特に何かに秀でていたわけじゃなかった。けれど、やはり特別な何かを持つ人だったんだと思う。自分を変えることができて、周りの人間をも変える力があったのだもの。私もその一人」

次は、黒人メイドのオデッサと、その雇い主である白人女性ミリアムの会話です。二人が初めて同等の人間として会話するシーンです。


Odessa Cotter: Miss Thompson, I don't want your children to grow up scared of mine.
Miriam Thompson: It's just that a lot of the whites are scared. I'm a little scared.
Odessa Cotter: We're all scared. What's scarin' you Miss Thompson, who you are, or what Mr. Thompson wants you to be?


オデッサ:奥さん、私はあなたのお子さんたちが、うちの子供たちを怖がるようには育ってほしくないんです。
ミリアム:でも、たくさんの白人が今恐れてるわ。私も少し怖い。
オデッサ:誰だって怖いんです。奥さん、何を恐れているんですか?自分が誰であるか?それともご主人があなたに求めている姿でしょうか?

以下のビデオは英語ですが、ご紹介したセリフのシーンが出てきます。

注目の英語表現

I called her Dessie=私は彼女をデッシーと呼んでいました

第5文型(S+V+O+C)の形です。O(目的語)であるherとC(補語)であるDessieがイコールの関係です。

As best as anyone knows=誰もが知っている限りで

As(形容詞or副詞)as~の構文です。イディオムで覚えましょう。

as long as =~である限り
as far as=~の限り
as well as=~と同様
as soon as =~するとすぐに

学習単語

extraordinary=(形容詞)非凡な、普通ではない(ordinaryは普通)
guess=(他動詞)言い当てる、予想する、~と思う
grow up=(自動詞)育つ、大きくなる
scared=(形容詞)怖い (scared of~:~を恐れる)

鑑賞レベル

英語難易度★★★★☆
言語・暴力・性★★★★☆
おすすめ度★★★★★

まとめ

「ロング・ウォーク・ホーム」は1956年に実際に起こったモンゴメリー・バス・ボイコット運動をモチーフに、当時無理やり強いられていた人種差別という常識に異議を唱える人、違和感を感じる人、戸惑いながらも手探りで正しい道を模索する人々の姿が細やかに描かれています。

白人至上主義的な考えを持つ登場人物も、ごく普通の市民ですから、その考えがどこから来るものなのか、問題提起を受け、考えさせられる映画です。

一度見るともう一度見たくなる力強い映画です。

残念ながら日本語字幕版でのDVD化はされていませんでした。レビューにはDVD化を望む声がいっぱいありましたが。。。

スクリプトは手に入りますので、英語版チャレンジしたい方は輸入DVDをそうぞ。

映画を使った英語学習の仕方については、以下の記事で詳しく解説しています。



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Lily(悪魔の英語術)
英語を習得したい、上手くなりたいというのは多くの人の普遍的な希望ですよね。こうすればいいよと言葉で表現することのむつかしさをかみしめています。楽しくて自然に英語が身に付いていくような、そんなコンテンツの発信を目指しています。