アナトリア建国記
※この物語は、AIに書かせた架空戦記小説です
アナトリアとは
小アジアの古代地方名。
現在のトルコ周辺である。
南西には地中海が広がり、ヨーロッパ・アジアの中間地点となる場所。
ローマとペルシャの息吹がかかったこの地に、もし独自の多神教国家が興るとしたら……？
紀元後３世紀から４世紀に渡るＡＩ架空戦記。
ぜひお楽しみください。
序章：神々の地にて
紀元後296年、アナトリア半島の広大な平原を黄金の夕日が染め上げていた。丘の上に立つ若き将軍イオアネスは、戦場の静寂の中、風に乗って聞こえてくる祈りの声に耳を傾けていた。それは彼が幼い頃から慣れ親しんだ多神教の神々への祈りであり、戦勝を願う兵士たちの切実な声だった。
イオアネスはローマ帝国の属州兵団を率いる地位にあった。彼の名は、ギリシャとローマ、さらには古代から続くアナトリアの伝統が交わる地にふさわしいものだった。兵士たちは彼を「アナトリアの獅子」と呼び、その指揮下で戦うことを誇りとしていた。
だが、彼の胸には焦燥が渦巻いていた。
ローマ帝国は内外の敵に苦しみ、属州には重税が課され、民衆は疲弊していた。サーサーン朝ペルシャは東方で勢力を拡大し、西方ではゴート族が国境を脅かしていた。ローマはもはや無敵ではない。それどころか、イオアネスの目には、帝国が自らの重みに押し潰されつつあるように見えた。
「この地を守るにはローマに頼ることはできない」
心の中でそう確信したイオアネスは、ある計画を胸に秘めていた。それは、アナトリアの地を独立した国として築き上げるという途方もないものだった。
数日後、イオアネスは密かに招集した盟友たちとともに、小さな山間の村で会合を開いていた。そこには、軍の副官であるテオドロス、交易商人のバルカス、古代の預言を研究する哲学者エウクレイアらが集まっていた。彼らはローマの支配下にあっても、それぞれの分野で名を馳せる存在だった。
「イオアネス、君が話していた計画とは何だ？」
副官のテオドロスが問いかけた。戦場では鋭さを見せる彼の眼差しも、今は訝しげだった。
イオアネスは立ち上がり、低い声で語り始めた。
「我々はこのアナトリアの地を、ローマの重荷から解放するべきだ。サーサーンにも、ローマにも頼らず、この地の民と神々の力で国を築くのだ。」
彼の言葉に一瞬沈黙が訪れた。誰もがその計画の大胆さに戸惑ったが、エウクレイアが静かに口を開いた。
「それはただの反逆ではない。我々が求めるのは独立ではなく、新たな秩序だ。アナトリアは、神々が与えた祝福の地だという教えを広め、多民族が共に暮らす理想郷を築ける。」
「しかし、どうやって実現する？」バルカスが続けた。「ローマの軍勢を相手に戦うのか？」
イオアネスは首を振り、答えた。
「戦う必要はない。我々はまず港を建設し、交易の拠点を作る。そして、この地の穀物や鉱物をローマやペルシャへ売り込み、資金を蓄える。さらに、オルタ教という教えを広め、アナトリアの民を一つにまとめるのだ。軍事力はその後だ。」
テオドロスは深く息を吐いた。
「狂気じみているが……君ならやれるかもしれない。」
＿＿＿
紀元後298年、アナトリア南部の港町タルソス近郊。
イオアネスは海を見下ろす崖の上に立っていた。彼の視線の先には、小さな漁村が広がっている。古びた船が波間に揺れ、村の人々が網を干しているのが見えた。彼の計画では、この地がアナトリア国の未来を支える重要な拠点となるはずだった。
「この村を港として再建する。ここをアナトリアの交易の中心地にするんだ。」
彼の横に立つ副官のテオドロスが、険しい表情で頷いた。
「だが、イオアネス、それには多額の資金が必要だ。この小さな村からどうやってそれを得る？」
イオアネスは穏やかに笑った。
「交易だ。この土地には豊かな農地がある。ここで育てた穀物を地中海沿岸に売る。さらに、エジプトやリビアからの貿易ルートを確保し、鉱物や香料を運ぶ。最初は地道だが、やがて大きな利益を生む。」
港の再建
その日から、イオアネスの計画が動き始めた。
タルソス近郊の村には職人や技術者が次々と集められた。ギリシャ人の建築家が港の設計を行い、ローマの工学を学んだ地元の労働者たちがそれを形にした。
「この港はただの交易拠点ではない。ここが新しい国の象徴になる。」
イオアネスはそう語り、村人たちを鼓舞した。
初めは懐疑的だった村人たちも、徐々に彼の情熱に心を動かされていった。農民たちは余剰の穀物を提供し、漁師たちは漁船を港の建設のために貸し出した。
交易の開始
半年後、港が完成すると、交易はすぐに活発化した。
イオアネスの交渉術と、バルカスの商人ネットワークを活用し、エジプトから小麦、ペルシャから織物、さらに地中海西部から金属製品がアナトリアに運ばれるようになった。
港では異なる民族や言語を話す人々が行き交い、交易所では常に賑わいが絶えなかった。バルカスは初めての交易船が入港した際、イオアネスに微笑みながらこう言った。
「この港はまさに希望の入り口だ。我々の国が成長する道がここから始まる。」
オルタ教の広まり
交易が成功を収める中、エウクレイアは宗教的結束を進めるべく行動を起こした。オルタ教は、すべての神々を一つに結びつける教えとして徐々に広がり始めた。神殿では、ギリシャ、ローマ、そしてペルシャの神々が並列に祀られるようになり、祭司たちはそれぞれの信仰を尊重しつつ調和を説いた。
「アナトリアの地は、神々が争う場所ではなく、共に力を合わせる場所だ。」
エウクレイアの教えは、民衆の心に深く響いた。異なる民族間での衝突は減り、港町には平和と繁栄が訪れた。
軍事の整備
イオアネスは平和が続くとは限らないことをよく知っていた。交易の成功は、他国の嫉妬を招く可能性があった。彼は軍隊の整備にも着手した。
地元の農民から選抜された兵士たちは弓兵として訓練された。
傭兵として雇ったゴート族の戦士たちは騎兵部隊を形成し、周辺の侵略に備えた。
また、港の守備隊にはエジプトから招いた技術者が設計した投石機が配備された。
「我々の国を守る力があれば、交易はさらに広がる。そして、民は安心して暮らせる。」
イオアネスの言葉に兵士たちは士気を高め、軍の訓練は日を追うごとに厳しさを増していった。
絆の深まり
イオアネスは民との信頼関係を築くため、直接村々を訪れ、港や農地の現場で働く人々と語り合った。彼の姿を見た人々は「イオアネスは神々が使わした王だ」と語り、次第に彼のカリスマ性は広がった。
ある夜、テオドロスはイオアネスに問いかけた。
「お前はどこまで本気なんだ？本当にこの地をローマやペルシャから守れると思っているのか？」
イオアネスは星空を見上げながら答えた。
「私たちは、ただの属州兵団からここまで来た。これが神々の導きでないなら、何だと言うのだ？」