ポーラー 狙われた暗殺者 | Netflix
ポーラー 狙われた暗殺者 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
最高に腕利きの殺し屋が引退しようとするが、今さらそうは問屋が卸さないというパターンは、キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』シリーズが金字塔とはいえ、他にも数多く撮られている。その市場に満を持してマッツ・ミケルセンが参入しようとしたが……
ブラック・カイザーという異名を持つダンカン・ヴィズラは、国際的な暗殺請負業のダモクレス社に雇われてきたが、50歳の定年を2週間後に控え、モンタナ州の湖岸の別荘で悠々自適の生活を送ろうとしていた。極寒で、絶え間なく雪が降り続いている。ストーブの側で借りてきたビデオを見る毎日だが、夢のなかでは過去の悪行が甦り、楽隠居とは程遠い。
原題 polar という意味はよく解らないが、この極北の土地柄を「極地」に例えているのかも知れない。あるいは「矛盾する両極を併せ持つ」という意味でも使われるようだ。ダンカンの性格を示しているのかも……
というのは彼は偏屈で、言うこととやることがまるで違う。医者を前に「煙草はやめた」と言うくせに、次のシーンではスパスパ吸っている。生き物には興味はないと言うくせに、つい犬を飼ってしまう。ガキは嫌いだと言うくせに、小学校で殺しのテクニックを嬉々として教える。ことごとくそんな感じだ。
向こう岸の隣家ではカミーユという少女が独り暮らしをしている。しごく立派な別荘で、なんでこんな女の子がひとりぼっちなのか、なぜダンカンが彼女のことを秘かに見守っているのか、最初のうちは全く解らない。というか、その種明かしの過程がもたつき、それやこれやで批評家からの評価が低くなったのだと思われる。
ダンカンには高額の年金が入る予定だが、ダモクレス社としてはそんな無駄金を払いたくない。いっそ消してしまえ、という話になる。ここらの設定も安直だ。世界一の殺し屋を狙えば自らも危ういなんて解り切っているはずだろう。『ジョン・ウィック』シリーズを復習しろ。
ダンカンの元には若い殺し屋のチームが差し向けられる。その居場所を突き止めようと彼らは無法の限りを尽くす。極端な暴力シーンがギャグのように繰り広げられ、湖畔の静謐な情景と対照される。動と静、不真面目と真面目のバランスを取ろうとしたのだろう。自分はしごく愉快だったが、万人向けとは言えないかも。映画としてのテーストに首尾一貫性を欠く。
この暗殺チームの動きを察知して、マッツ・ミケルセンが全裸のままアッと言う間に返り討ちにする中盤のシーンがいちばん面白い。そこから先は中だるみ。この凄腕が昔の仲間に気を許し、不覚を取って囚われの身になるのだが、いかにも間抜け。好いやつ過ぎる。拷問シーンも取ってつけたよう。
続篇が予定されているようだが、本作はネットマンガが原作で、それもあってか元々のストーリー設定が甘い。次に繋がるような要素が見出せない。ここから新しい展開を捻り出すのは難しいのではないか。