朝露の降りる日は
草花に付着した朝露は、雨上がりの雨粒と違って水滴がとても細かい。雨粒は上空で成長した水滴が落下したものであるのに対し、結露は地上付近の大気が冷えて水滴となったという形成過程の違いがある。
朝露のついた花は小さなビーズを身に纏うように煌めく。それはしかし日の出から長くても数時間のひと時で終わる。陽が高くなるにつれ、いつの間にか露は跡形もなく消えてしまう。
露が降りたり消えたりする過程は、考えてみると一度もじっと凝視したことがない。いったいどれほどの時間がかかって、そうした現象が起こるのか知らない。おそらく畑で農作業をする方々はそれを当たり前のように知っていることだろう。
写真に撮りながら朝露の花を見て思う。当たり前の光景を取るに足らないものとして、これまで地上で起こるたくさんの美しい現象を取り逃してきたようだ。
朝露の降りる日は高気圧が続き、一日中秋晴れが広がり、花の色も一段と色鮮やかとなる。夕暮れ時の空も澄み渡って美しい。暮れそうで暮れない光に揺れる花もまた妖艶である。
そうした心地よい季節も、あっという間に通り過ぎてゆく。
秋も、朝露のようにいつも儚い。
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