医療的ケア児(0歳)の"手続き"あれこれ
はじめに
今年産まれた息子は、生まれてすぐに気管切開を要した”医療的ケア児”です。
医ケア児については、近年新聞などでも目にするようになりました。しかし、まだまだネット上にも情報は多くはありません。
息子に会うため日々病院に通いながら、通常の出生後手続き(出生届など)に加えて、どのような制度があるのか(どのような手続きを行えばいいのか)苦心しました。
そこで、息子の出生後に行った手続き(制度)を大きく3つに分けて、ご紹介しようと思います。
①入院中に行った手続き
②退院後に利用しているサービス等
③その他
体力的にもすべて自力で調べることが難しいお母さん、お子さんが生まれたことに喜ぶ間もなく手続きの波にのまれているお父さんは、是非参考にしてみてください。
(なお、様々な情報を一から自分で収集・取捨選択することは、時間的にも体力的にも難しい場合が多いと思います。わが家でも、退院支援看護師、訪問看護師、自治体の保健師や医療的ケア児等コーディネーターなど支援してくださる皆さんからの情報提供がとても重要だと痛感しています!ぜひ、退院前カンファレンスなどで繋がっておきましょう。)
<注意点>
ご紹介しているのは、私の把握している行政関係の手続きが中心です。(病院での手続きは看護師さんらの指示のもと、迷うことが少ないと思うので載せていません。)
各種制度は、自治体によって異なることも多いようです。詳細については、退院支援看護師や自治体にしっかり確認してくださいね!
行政関係の制度はどれも複雑なため、書き誤り等があるかもしれません。そこは、なんとか乗り切った医ケア家族のリアルな認識、ということでご容赦ください…。
なお参考として挙げるwebサイトは、分かりやすく国または大阪市のものに統一しています。
※一部、現在まさに手続き中のため「執筆中」としている項目があります。
①入院中に行った手続き
はじめに、産後~子どもがNICU・GCUに入院している間に行った手続きをご紹介します。
通常の産後手続き
まず当然のことですが、医ケア児であるないに関わらず、子どもが生まれたら行わないといけない手続きがいくつかあります。出生届や乳幼児医療(子ども医療費)、児童手当、会社勤めの方なら育休関係の手続きなどでしょうか。
これらについては既に様々な情報源がありますので、ここでは詳細割愛しますね。
養育医療
養育医療とは、ざっくり言えば、体重2,000g以下または入院養育が必要な乳児が受けられる医療給付です。この申請については、病院からなるべく早く行うよう言われました。
「乳幼児医療と何が違うの?」と思われる方もいると思います。
主な違いとしては、養育医療は入院中のみが対象で、乳幼児医療ではカバーできないミルク代まで公費負担となることです。
小さな違いにも見えますが、入院期間がどれだけ長引くかも分からない中、とにかく日々病院に通わないといけない親御さんにとっては、何らか心の支えになると思います。
なお、おむつ代は自己負担です。我が子の入院していた病院では、1日1,000円ちょっとかかっていました。(←高くない?笑)
小児慢性特定疾病医療費の助成(及び日常生活用具給付)
小児慢性特定疾病医療費の助成とは、ざっくり言えば、小児慢性特定疾病をもつお子さんがいる家庭の医療費負担を軽減しましょう、という制度です。
これまた「乳幼児医療と何が違うの?」と思われる方もいると思います。私もそう思いました。そこで病棟の看護師さんや自治体の窓口の方にも聞きましたが、なんとも歯切れが悪かったです。(笑)
私の把握した限り、ざっくり違いは下記のとおり。
小児慢性 :国の事業、2割負担(上限あり)、入院時の食費も対象
乳幼児医療 :自治体の事業、多くが医療費の自己負担なし
なんと両方の適用を受けている場合、国の事業が優先されることから、
[窓口で2割負担(小児慢性)⇒後日、還付請求(乳幼児医療)]
という流れになるそうです。
…めんどくさい!(笑)
入院した際の食費に備えることと、毎月の還付請求をする手間を比較して、「小児慢性要らないのでは?」とも思いました。(実際、小児慢性の対象だが申請していないご家族もあるそうです。)
しかしわが家では、小児慢性も申請することにしました。
その理由は、「日常生活用具給付」を受けられるからです。
退院に向けて、お家でも医療的ケアを行うために、様々な医療機器が必要となります。小児慢性を受けていれば、そうした医療機器の購入にあたり公費負担が受けられるのです(一部自己負担あり)。
なお注意点としては、実際に医療機器が手元に届くまでに時間がかかりすぎること!
小児慢性の手続き(意見書等の必要書類の準備→申請→交付決定)が済んだのち、改めて生活用具の手続き(意見書等の必要書類の準備→申請→交付決定→購入)を行うことになります。
実際、出生後2か月経たずに退院となった息子については、退院までに吸引機の購入が間に合いませんでした…。
(詳細は書きませんが、退院支援の看護師さんや自治体の職員さん、医療機器販売の方等みなさんにご協力いただき、なんとか乗り越えることができました。)
現状の制度は、医ケアのわが子の状況を想定したものになっていないんだな、とひしひし感じたのでした。
障がい児福祉手当・特別児童扶養手当
医ケア児が受けられる行政からの手当金について、病院から「障がい児福祉手当」及び「特別児福祉手当」を紹介されました。
どちらも月数万円の支給があり、通常の育児に加えて消耗品など出費のかさむ医ケア家族にはありがたい制度です。
ただし、どちらの制度も”医ケア”そのものを直接対象としたものではなく、対象になるかは病状等について審査を受ける必要があります。また両親の収入条件などもありますので、詳しくは各自治体へ確認してみてくださいね。
~余談~
私が自治体の窓口に相談に行った際、はじめは「申請対象外です」と言われました。しかしホームページなどの説明を読む限り、申請の対象外とは考えられなかったため、お願いして内部で確認してもらったところ、やはり申請することができました。(結局、審査のうえ却下されましたが…。)
それほどメジャーな制度ではないのかもしれません。窓口職員の方が誰でも詳しいとは限らないので、やはり親がしっかり勉強しなきゃと痛感しました。
結局、入院中の医療費はどうなった?
乳幼児医療に養育医療、そして小児慢性と3つも医療費について手続きを行いました。
そしてそれらの手続き中も、病院からの請求が毎月送られてくるわけです。なので病院からは、「手続きが全部済んでから、支払いしてくれたらいいですよ」とのことでした。
支払い後に確認したところ、入院中は「養育医療」が適用となり、支払いはおむつ代や文書代、そして拡大新生児マススクリーニング検査費用のみとなっていました。
ただし治療内容によって制度の適用が異なる場合があるそうなので、必ず病院の指示に従ってくださいね。
【補足】"拡大"新生児マススクリーニング検査とは?
赤ちゃんがみな無料で受ける新生児マススクリーニング検査に加えて、早期発見できれば対処可能だと近年わかってきた病気についても追加・任意で調べるものです。(主治医の先生談)
②退院後に利用しているサービス等
次に、退院後にわが家で利用しているサービス(制度)をご紹介します。
訪問看護
退院後はお家での育児が始まるわけですが、わが家は初めての育児なうえに、医療的ケア(入院中に習います)も行う必要がありました。
そこで、病院の紹介で定期的に訪問看護の方々に来ていただき、一緒に育児をしてくれたり(初めのころは親への指導がメインでした…笑)、レスパイト(親の休息)をしてくれています。
費用については、乳幼児医療等のおかげで実質負担はありません。また回数や時間については、病状によって異なるそうです。
ここで「育児までしてくれるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。例えば気管切開をしたわが子については、その切開部の管理に加え、沐浴時にも切開部に水がかからないようにする等、+αの育児なんだとイメージしてもらえればと思います。
また、子どもに24時間付きっきり(地理的かつ医療的ケアが必要な事情から、祖父母の助けも得られません)のわが家にとって、レスパイト中は仮眠をとったり、夫妻で愛犬を連れて散歩にいける等、本当にありがたい時間です。
(この点は、通常の育児よりも恵まれているといえるかもしれませんね。)
(参考記事)医ケア育児についての試行錯誤を綴っています
また訪問看護の方は、24時間いつでも相談に乗ってくれます。これが本当にありがたい!
詳細は下の記事に書いていますが、退院後約1か月が経ったころ、子どもの酸素飽和度が低いままだということに気づいて相談した際、夜遅いというのにすぐに駆け付けて、処置をしてくださいました。感謝しかありません。
訪問診療
(執筆中)
薬の配達
(執筆中)
乳幼児健診について
(執筆中)
デイ等の障害福祉サービス
医ケア児が利用できる可能性のある行政サービスに、児童発達支援やショートステイなどがあります。どちららも家まで迎えに来てくれて、半日ほど預けることになります。
これらは元々障害福祉サービスなので、本来は障害手帳が必要だそうです。
しかし生まれて間もない医ケア児は障害手帳の交付が難しいケースも多いらしく、私の住む自治体では別の様式(医師の記載が必要)で代用できるようになっています。(このような情報は個人でなかなか収集できないため、自治体の中でも医療的ケア児に詳しい職員さんを見つけると早いです!)
なお医ケア児が利用できる施設は看護師の配置など限定されるため、そうした施設が近隣にあるか、空きはあるか等の確認は必要です。
(参考)先日、医ケア児を預かる事業者への支援がニュースになっていました。
③その他
医ケア児の保育所入所について
私の住む自治体では、医ケア児は4月時点で2歳以上でないと、保育所に入ることができません。そして、看護師のいる保育所に限られます。
皆さんの自治体ではどうでしょうか?
近年医ケア児については制度作りが進められていますので、これでもまだ昔と比べれば良いのだとも思いますが…
自治体の皆さん、一層の改善をよろしくお願いします!!!
育休延長について
我が家は夫妻ともに会社勤めですので、ともに育休を取得しています。
出産前は、保育所に入れたら仕事復帰して~などと一般的な流れを想定していましたが、先述の通り育休を1年で終えることができないということが明確となりました。
そこで困るのが、「お金」。
育休中は1年まで育児休業給付金をもらえますが、その先どうやって暮らしていこう…と悩んでいました。
しかし調べてみると、保育所に入れなかった場合に限り、給付金を最大2年まで延長できるんだそうです。(数年前、待機児童が問題になった際にできたのかもしれませんね)
もちろん、医ケア児のうちは普通に入所希望を出せば、却下されます。
…助かった!
それでも保育所に入るまでに無収入の時期は生じますが、給付金の延長のおかげで、貯金を取り崩せばなんとか生活できそうです。
医ケア児でも入れる民間保険について
医ケア児となったわが子は、ありがたいことに、ここまで書いてきた様々な公的支援を受けることができています。
しかしこの先のことも考えると、またいつ入院等になるかわからず、少なからず金銭的不安もあります。
そこで調べてみると、医ケア児でも加入することができる保険を見つけることができました。coop共済の「たすけあい」です。(個配でもお世話になってます。笑)
詳細は直接確認いただきたいのですが、ざっくりいえば、
”現在入院中でなく、今後1年以内に入院や手術の予定がない”ならば加入できるコースがあるのです。(「ジュニアコース・告知事項A」)
高額の保障でないにせよ、月掛金1,900円で万が一の場合のお守りになると思えば、検討する余地は十分にあると思いました。
まとめ
以上、医ケア児として生まれたわが子をとりまく、様々な手続き・制度について書いてきました。
医ケアについての制度整備はまだまだこれからのようです。
役所に行った際も、窓口が子育て系だったり障がい系だったりと、ややこしい…。(ポジティブに考えれば、その分顔見知りの職員さんが増えて、その後もいろいろと聞きやすくなりましたよ!)
もちろん、ここに書かれていない(私の知らない)制度もたくさんあると思います。
ただ、少しでも医ケアパパ・ママになられた方の参考になれば嬉しいかぎりです。
(繰り返しになりますが、正確な情報は各病院や自治体に確認してくださいね!)
※この記事に載っていない手続きや、「こんな工夫があったよ!」などありましたら、ぜひコメントでご紹介ください!