海外登山#1-1 雪山主峰(3886M) 2024年度版 装備/心得/コース編@台湾
1.0:イントロ
はじめまして!!
2023年5月18日から二日間をかけて、台湾第二の高峰である
雪山(せつざん/ Shei Pa / Xueshan / Snow Mountain)主峰に登ってきました。
3886メートルの標高が魅せる息をのむ風景と登山後の達成感は格別でした。
一方で、登山への申請の大変さや、不慣れな地域での登山といった、日本では味わえない冒険要素も非常にいい経験でした。
今回の記事では、自国での登山準備から下山までの手順などを、
私自身の経験と調べた情報をもとに、極力詳しくシェアしていきます。
この記事は、特に
・自身で申請から登山まで自力でやりたい方
・ツアーではなく、友達と、または一人でマイペースに登りたい方
・冒険するスリルを味わいたい方
・少しでもお金を節約しつつ登りたい方
・公共交通機関を使いたい方
におすすめです。
ツアーはお金がかかってしまい、登山時期の融通がききづらいものの、
安全性や手間がかからないといった点でメリットがあります。
自身の目的や性格、体力や目的に合わせた計画を立てていきましょう。
1.1:この記事の構成
この記事は、
#1-1 雪山 (Shei Pa):装備+3つの心得+コース編
#1-2 雪山 (Shei Pa):申請編
#1-3 雪山 (Shei Pa):台湾空港→登山口まで編
#1-4 雪山 (Shei Pa):登山当日編
の四部構成になっています。
特に、#1-1、#1-2、#1-3を読むことをおすすめします。
というのも、今回の雪山登頂を経験して、3つの難関がありました。
1つめの難関は登山計画です。
海外の登山ということもあり、詳細な情報収集が困難でした。
#1-1では、装備、事前情報、コース日程の情報をシャアしていきます。
2つめの難関は、雪山登山の申請です。
台湾の3000メートルを超える山は、事前申請を求められる場合があり、
雪山もその内の一座です。
申請については、写真を交えながら、#1-2で詳しく見ていきましょう。
3つめの難関は、登山口までの道のりです。
普段知らない場所に公共交通機関で向かうのは、冒険心をくすぐる一方で、
安心できない要素でもあります。
#1-3では、Google Mapの位置情報などを交えて、確認していきます。
1.2:登山行程
下記の内容が筆者のコースタイムです。登山計画の参考になればと思います。
(宜蘭から雪山登山口までの行き方は、別の記事の#1-3で触れるのでご安心ください。また、登山道中の細かい箇所は#1-4でお見せします。)
合計所要時間 27時間(休憩等含む)※1
[1日目] 歩行距離:7km(本来なら15.7km) 標高差:1061M
武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 —【約30分 / 8.7km ※2】— 雪山登山口 服務站(2140M) —【1時間40分 /2km】— 七卡山莊—【4時間 /3km】— 雪山東峰(3201M) —【1時間20分 /2km】— 369山荘(369臨時キャンプ場)
[2日目] 歩行距離:14.8km(本来なら23.5km) 標高差:836M
369山荘(369臨時キャンプ場) —【3時間/ 3.9km】—雪山主峰(3886M)—【2時間30分 /3.9km】—369山荘(369臨時キャンプ場)
—【5時間 /7km】— 雪山登山口 服務站(2140M)—【15分 /8.7km ※3】
— 武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場(宜蘭行きの終バスは、14時18分に乗車。)
※1:軽装備であれば、コースタイムはもっと短くなるかも。
私は、長旅のため合計15キログラム以上の全ての荷物を持って登りました
(コインロッカーなどに預けておけばよかった涙)。
不必要な荷物は台北駅にコインロッカーに預ける方がいいかもしれません。
台北駅内であれば、コインロッカーが各所に設置されています。
※2:武陵農場 バス乗り場から雪山登山口服務站までの公共交通機関は
基本的にないようです。普通に歩くと2時間30分ほどです。
私の場合は、ヒッチハイクで車に乗せてもらったので、
約30分で到着しました。
※3:※2で説明したように、公共交通機関不在のため、
本来ならバス乗り場まで歩く必要がありました。
しかし、運よく登山口から乗せてくれる方に出会えたため、
車で戻ることができました。
1.3:装備
装備について見ていきましょう。
数日の縦走で用いられる装備があれば問題ないと思います。
下記は私が雪山登山で必須だと思う登山用品です。
・山ぐつ
・3リットル分の水
(個人差はありますが、給水エリアが限られているので、十分に水を持ち歩ける装備でいきましょう。)
・Offlineでも見られるGPS地図
(個人的にはMaps Meがおすすめ。
無料でかつ、世界中の登山道がダウンロード可能。)
・ヘッドライト
(午前2時から雪山主峰にトライする可能性があるので。)
・ガスストーブ※4
(山の水とはいえ、水道インフラが古いため、現地人に、水道水はいかなる場所でも沸騰させることをおすすめされました。)
・浄水器(上記と同じ理由。)
・熱に強い水筒(沸騰した後に、そのまま注げるので。)
・ポンチョ等の雨具
・防寒着
(5月でも日本の初夏の暑さの台湾ですが、山頂トライの際には、やはり寒いです。5月19日の朝6時で7度でした。)
・テント
(2023年5月20日以降、369山荘が改築があるため一時的に山荘が利用できなるとのこと。そのため自動的にテントが必要になります。詳しい情報、下記のリンクからご覧ください。) https://www.ourtrails.com.tw/news-xue-mountain-369/
・シュラフ
・耳栓/アイマスク(山荘やキャンプサイトでは、集団で夜を過ごすので。)
・言語習得、またはOffline自動翻訳
(登山まで準備期間が十分に取れるのであれば、台湾中国語、台湾語の簡単な聞き取りと発話ができるのが理想。自動翻訳の代替も可能だと思います。助けを求めたり、危険を避けるための情報を得たりするときに、何かと語学か文明の力が役立ちます。ちなみに私は英語で逃げ切ってしまいました。現地語が話せた方がもっと深い話ができたのにな~と後悔しましたが。)
・現地の知り合い(「1.4:申請が必要」をご一読すればわかります。)
※4:筆者は下記のリンクの場所から、ガスタンクを購入しました。宜蘭(Yilan)駅から徒歩で行ける距離にあります。
1.4:雪山に登る前に知っておきたい3の心得
1 体力と登山経験が求められる
最低でも21.8kmの距離を歩く必要があります。
標高差は1700mを超えます。
入山時と夜の気温差も激しく、雨に見舞われる可能性も非常に高いです。
テントを持って登る可能性もあります。
加えて、公共交通機関を使う場合は、タイムリミットがあります※5。
そのため、読者の皆さんが普段から実践しているように、
無理をしないことが肝心かと思います。
また、雪山主峰の代わりに東峰で引き返してもいいと思います。
2 申請が必要
雪山を目指す上で最初の難関は雪山入園許可証(Entry Permit)の取得です。
全てオンラインで申請することになります。
申請難易度は少し高いです。
この申請の大変さの原因は、
①中国語、または、英語で申請する必要があること
②台湾在住の知り合いの個人情報を登録する必要があること※6
の2つに凝縮されています。
①は、翻訳機や自力でどうにかなるとしても、
②をクリアできない人の方が多数派かと思います。
②では、有事の緊急連絡先として、台湾在住者のフルネームとメール、携帯電話番号を登録することになります。①、②の条件をクリアするのが難しい場合には、ツアーを申し込むことをお勧めします。
もしも時間がある方なら、台湾語/中国語学習と台湾人友人探しに、時間を割いてみてはいかがでしょうか。
3 申請方法の種類
雪山入園申請にあたって、Standard Application (スタンダード申請)と
Foreign Advanced Application(外国籍事前申請)の2種類の申請方法があります。
それぞれの申請方法の特徴は、
Standard Applicationの場合:
-台湾在住者と非台湾在住者、どちらも申請することができる。
-登山予定日の2ヶ月前から5日前までに申請することができる。
-台湾在住者と山荘や入山の枠を争うので、競争が激しい。
- 金曜日と土曜日を含めた登山計画を立てることができる。
-登山道中のキャンプ場を申請することができる※7。
Foreign Advanced Applicationの場合:
-台湾非在住者(外国籍の人)のみが申し込みができる。
-登山予定日の4ヶ月間から65日前までに申請することができます。
-台湾在住者よりも2ヶ月以上早く申請ができるので、希望日が通りやすい。
-金曜日と土曜日に登ることができない。
-登山道中のキャンプ場を申請することができない※7。
上記のような違いがあるので、各自の都合に合わせてご検討してみてください。また、もしも登山予定日が決まっているなら、4ヶ月前、または、2ヶ月前に申請した方がいいです。ある一定の人数を超えると、申請ができなくなってしまいます。
ちなみに、台風が来ない4月から5月上旬と10月は、Standard Applicationでは、かなり運任せになってしまうので、体力に自信があれば、4ヶ月前から申請ができるForeign Advanced Application をお勧めします。
※5:基点となる町である宜蘭(イーラン)へ帰るためのバスの時間は14時18分です。これを逃すと、タクシー以外の方法では帰れなくなっています。
※6:筆者の場合は、最初、日本在住の母の連絡先で登録しましたが、
当局から台湾在住者の連絡先を求められました。
その結果、10年前に知り合った台湾在住者の方にコンタクトをとり、申請に成功しました。
※7:369山荘(7.1km地点)は、2024年まで閉鎖されています。
その代わりに現在は、369臨時キャンプ場が近隣に設けられています。
1.5:コースを決めましょう!!
それでは、皆さんが実際に登るコースを見ていきましょう。
おそらく下記の3パターンになるのではないかと思います。
Standard ApplicationとForeign Advanced Applicationでは、
申請できる山荘とキャンプ場が違うため、
雪山主峰までの登山工程も同時に違いが発生してきます。
この違いの原因は、369山荘(7.1km地点)の閉鎖によるものです※7。
現在、369山荘の近くに369臨時キャンプ場が設けられていますが、これはStandard Applicationでのみ予約ができるができるとのことです
(筆者が担当局に確認 2023年5月27日時点)。
つまり、Standard ApplicationとForeign Advanced Applicationでは、下記のような3つコース組みになることが予想されます。
①Standard Application: 二泊三日
[1日目]
武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 —【8.7km】— 雪山登山口 服務站(2140M) —【2km】— 七卡山莊(宿泊)
[2日目]
七卡山莊—【3km】— 雪山東峰(3201M) —【2km】— 369臨時キャンプ場(宿泊)
[3日目]
369臨時キャンプ場 —【3.9km】—雪山主峰(3886M)—【3.9km】—369山荘(369臨時キャンプ場)
—【7km】— 雪山登山口 服務站(2140M) ー 【8.7km】 — 武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 (宜蘭行きの終バスは、14時18分です。2023年5月18日時点で)
-少しづつ山の高さに順応できるので、高山病になりづらい。
-1日の歩く距離を分散できるので、体力がない方でもある程度安心しして登ることができる。
-Standard Applicationなので、競争率が高い。極力早めに申請を済ませましょう。
-テント持参。
-出国から帰国まで最低5日の休みが欲しい。
②Standard Application:一泊二日
[1日目]
武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 —【8.7km】— 雪山登山口 服務站(2140M) —【2km】— 七卡山莊 —【3km】
— 雪山東峰(3201M) —【2km】— 369臨時キャンプ場(宿泊)
[2日目]
369臨時キャンプ場 —【3.9km】—雪山主峰(3886M)—【3.9km】—369山荘(369臨時キャンプ場)
—【7km】— 雪山登山口 服務站(2140M) ー 【8.7km】 — 武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 (宜蘭行きの終バスは、14時18分です。2023年5月18日時点で。)
-時間がない方にお勧め(出国から帰国まで最低4日の日程で収めることができる)。
-Standard Applicationなので、競争率が高い。早めの申請を!!
-健脚が求められる(筆者もこの日程で行きましたが、かなりきつかったです。二泊三日にすればよかったと少し後悔しました涙)。
-テント持参。
-ヒッチハイクなどで、武稜農場から雪山登山口までの距離を車で移動して、コース時間の短縮させたいところ。
③Foreign Advanced Application:二泊三日
[1日目]
武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 —【8.7km】— 雪山登山口 服務站(2140M) —【2km】— 七卡山莊(宿泊)
[2日目]
七卡山莊—【3km】— 雪山東峰(3201M) —【2km】— 369臨時キャンプ場 —【3.9km】 — 雪山主峰(3886M)—【8.9km】— 七卡山莊(宿泊)
[3日目]
七卡山莊ー【2km】— 雪山登山口 服務站(2140M) —【8.7km】 — 武稜農場(Wuling Farm) バス乗り場 (宜蘭行きの終バスは、14時18分です。2023年5月18日時点で。)
-Foreign Advanced Applicationなので、優先的に日程を決められる。
-テント持参が不要。
-2日めに17.8kmを歩かなければいけない。
-帰りのバスの時間に余裕がある。
-出国から帰国まで最低でも5日の休みが欲しい。
2024年の369山荘の修繕が完了するまでは、この3パターンのどれかを選ぶことになります。
筆者は体力に自信がなく、ゆったり登山を楽しみたいので、①か③をお勧めします。また、時間や体力、天候などに応じて、雪山東峰のみに狙いを定めるのもの選択肢の一つです。
以上で#1-1の記事は終了です。
#1-1では、装備、大事な心得、コースの計画だてについてみてきました。
装備とコース計画だての大枠が見えてきたら、幸いです。
登山コースと日にちが決まったら、いざ申請ですね。
次は、#1-2で雪山主峰に登るための、オンライン申請の流れを見ていきましょう!!