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へそくり

何かと金は入用だ。贅沢な生活をしたいわけじゃないが、ギリギリの生活をしていて明日が見えなくても、手元のあり金が羽を生やして飛んでいく。

恥ずかしい話だが預貯金ゼロ。
必要な生活費もままならないが、年単位でかかってくる必要な金は、もうへそくりをして取っておくしかない。
へそくりと銀行預金は違う。銀行預金というのは動く金だ。実にダイナミックだ。スタティックではない。

心に鍵をかける。
この金には絶対に手を付けないと。
それにはもう、そう、忘れるしかないのだ。
一万円札を出して、ジッと見る。
そして静かにそっと忘れる。燃やすように忘れる。
この金はもう存在しない。灰になってしまった。
タンス預金というけれど、タンスになんかしまってもだめだ。完全に記憶から抹消しなければ、へそくりはできない。
誰にせがまれようと、拷問を受けようと、決して思い出してはいけない。

忘れることと、忘れない事は表裏一体だ。
よくあるだろう?夢の中でありもしなかった事を思い出すこと。
記憶はあてにならない。
失くしたものと所有しているものは同じだ。

さぁ、今、思い出すのだ。自らをも欺いてきた隠し財産を!


2024.1.16

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間 良 ―Ryo Hazama
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