ライフ・オブ・パイ
2024.2.6Amazonプライムビデオ
公開時話題になっていたのを覚えている。その時点では少年がトラと漂流するハートフルな映画だと思っていて、あまり関心がなかった。
今回、存外にも精神性の高い映画だと聞いて関心を持ち、一昨日の昼間に見た。
ここからはネタバレになる可能性があるため、3行空ける。
見終わった後、正直、当惑した。
主人公パイの話をどこまで信じたらよいのか?
映画の最後で、主人公は保険会社の質問に対して、もう一つの全く異なった物語を話す。映画をそれまで見てきた我々観客は、当惑する。その場で考えた作り話とは思えないからだ。そして生き残った証言者が彼一人である以上、どちらの物語も否定はできない。
しかし我々観客は、ずっとこの不思議な、信じ難い物語に付き合っていたのだ。
もう一つの現実的な物語は、映画の中では主人公パイの語りだけであって、映像は一切ない。
これが原作本でどのように描かれているかは知らないが、この映画では二つの物語は完全に差別化されていて、主人公パイの体験したのは、トラとの壮絶なサバイバルであり、この映画の尺の大半を占める。
もう一つの物語は、劇中では保険会社の調査員を納得させる為だけに作った、取って付けたような話だ。
しかし観客は、待てよ、と思う。
そもそも、シマウマとハイエナとオランウータンとトラが、小さなボートに偶然乗り合わせたり、凶暴なトラと海のサメに怯えながら何ヶ月も漂流し、挙げ句、何処かの島に漂着したかと思えば、ミーアキャットだらけで、夜になると生物を溶かしてしまう死の孤島だったり、ホラ吹き男爵真っ青な冒険談の、何処をどう信じれば良いと言うのか?
実際に起きた事実とは異なる記憶を持っているのは、極限状態がもたらした精神錯乱なのか?
事実(ファクト)と真実(トゥルー)がパイの中で共存している。何故なら、パイは調査員の前でいとも簡単に第二の物語を語るからだ。
そして小説家に「どっちの物語が良い?」と尋ねる。
記憶している方が真実なのだ。個人の体験としては、その人の目に映ったものだけが真実だ。
トラは存在したのか?幻か?
不思議な映画だった。
2024.2.8
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