【#ウェブりば】webtoonは本当に「スナックカルチャー」なのか?
どうも、浮雲です。
気づけば最後に書いたnoteから随分間が空いてしまいました。
確認したら最後のnoteが2021年10月14日……いや、我ながら空きすぎでしょ。
気を取り直して。
この間何をやっていたかというと、あたらしく「BookBase」というサービスのリブランディングに協力したり。
その一環として、BookBase代表のオタクペンギンさん、プロラノベ作家のしろいるかさんと3人で、作家さんや編集者など創作にまつわるいろんな方をゲストに呼んで創作論を語るYouTubeラジオをやったり。
それ以外にも、持ち込み企画でリアルプロダクトの企画を動かしてみたり、ミュージシャンの方となんかやりたいねと悪だくみをしてみたり、あれやこれやといろいろやっていたりします。
年内にはいくつか形になって世に出そうなものもあったりするので、その際はまたnoteやtwitterでお知らせしたいと思います。
どれも面白い企画になっている自信だけはあるので、お楽しみにです!
と、期間が空いた分前置きも長くなってしまいましたが。
今回はゲームの話からは少し離れて、最近何かと話題が多い「webtoon(ウェブトゥーン)」についてのnoteになります。
実は一時期仕事としても関わっていたのですが、もともとゲームよりも漫画が好きなのもあって、今も興味深くウォッチしていたりします。
勢い余って、最近twitterに追加された「コミュニティ」機能を使って「Webtoon しゃべりば」というコミュニティを作ってみたりもしました。
略称兼ハッシュタグは「#ウェブりば」で。
寄り道が多くなって恐縮ですが、今回はwebtoonを表する際によく聞く「webtoonはスナックカルチャーだよね」という話について、最近いろいろ考えていたことがあったので、それを整理も兼ねて言語化してみようと思います。
ちなみにこの「スナックカルチャー」話、ざっと調べてみたら昨日今日言われ出したわけではなく、2014年にはすでに記事としても確認できました。
つい先日、翻訳・言語データプラットフォーム事業を展開するFlittoが「ピッコマ」を展開するカカオピッコマとの協業を発表したプレスリリースの中でも、「ピッコマ」について“スナックカルチャーコンテンツプラットフォーム”と説明しています。
一方で、東京マンガレビュアーズさんのwebtoon作品『モンスターベイビー』に対するレビューでは「WEBTOONはスナックカルチャーではない」というコピーが躍るなど、逆のスタンスを取る方もいらっしゃいます。
というところで。
前置きが長くなりましたが、ここからが今回の本題です。
webtoonは本当に「スナックカルチャー」なのか?
この話を考え始めたのは、ナンバーナイン遠藤さんのこちらのtweetがキッカケでした。
言われてみれば当たり前のことなんですが。
「スナックカルチャー」と書くとまるで単一のように見えますが、一口に「スナック」といってもいろんなものがあるわけで。「その中でどういう存在を目指すのか」が重要だよなぁと思った次第です。
webtoonは「スナックカルチャー」ではない
結論を先に言っちゃいますが、個人的には「webtoonはスナックカルチャーではない」と思っています。
じゃあ従来の漫画と同じなのかというとそれも違うと思っていて、自分の中でどう言い表すのが良いかと考えていたのですが、一番しっくりきたのが「ファストフードカルチャー」という表現でした。
「ファストフードカルチャー」とは?
「ファストフードて、スナックと何が違うん?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、一言で表すと「体験の重さの違い」です。
どちらも食べ物なので、イメージとしては「食べたときの満足度(満腹度)」と言い換えられるでしょうか。
ついでに言うなら、従来の漫画は「レストラン」というイメージです。
というところで、それぞれのイメージの持つ内容を具体的に言語化してみると、こんな感じです。
もちろん個々で見れば、従来の漫画同様じっくり腰を据えて読みたい作品もあることは理解しています。
それは理解したうえで、「webtoonというカテゴリ」全体で見た場合には「ファストフードカルチャーである」というのが私の考えです。
とはいえ、「ファストフードカルチャーだから劣っている」とかいう話では決してありません。みんな違って、みんな美味しい。
大切なのは、上でも書いたように「その中でどういう存在を目指すのか」だと思っています。
漫画(書籍)とwebtoon(スマホ)の対比による分析
そんな風にあれやこれやと考えている中で、webtoonの在り方を理解するためには、webtoon単体での分析ではなく、作品の内容や作り方とは別の切り口からの「日本の漫画との対比」による分析を行うべきだと考えました。
具体的には、多くの方が認識している「縦スクロール」と「見開き・横読み」という見せ方の違いみたいなところではなく、「作品を読む体験」という視点からの分析となります。
これまでの食事の流れに例えると「ご飯を食べる体験」ということになるでしょうか。
というわけで、今回分析するにあたっては自分なりに理解とイメージをしやすくなるように「作品を読む体験=ご飯を食べる体験」に置き換えて定義しています。
加えて、漫画以外のコンテンツから体験的に近しいサンプルとして、小説などの「文字コンテンツ」、動画SNSなどの「ショート動画コンテンツ」も比較対象として扱うようにしています。
1.お腹の減り具合い(=漫画を読みたい欲求の大きさ)
「ご飯を食べたい」と思う時って、基本的には「お腹が空いているとき」ですよね。
要は、「(何か)したい、(何か)欲しい」という「欲求があるかどうか、それがどれくらい大きいのか」が重要だと思います。
よくある5W1H的なもので表すとすると「なぜ食べたいのか(Why)」という部分です。
一口に「お腹がすいた」と言っても、
・お高いものが食べたい
・安くても量をたくさん食べたい
・ジャンキーなものが食べたい
・小腹が空いたから軽くつまみたい
など、「欲求」の中身はいろいろだと思います。
今回の分析スタイルで定義すると、例えばこんな感じでしょうか。
なお、いくら好きでも毎日同じものを食べたくなるわけではないように、時と場合によっていろんな「欲求」を持つことも、至極当たり前のことだと思います。
私も(最近は電子書籍が多いですが)家でがっつりコミックスを読むときもあれば、電車乗りながらスマホでwebtoonを読むこともあるしで、どちらも同じくらい楽しんでいます!
2.食べたいもの(=コンテンツの属性や性質)
また、お腹の空き具合とは関係なく「あれが食べたい!」となることもあります。俗にいう「〇〇な口になってる」というやつです。
5W1Hでいうところの「なにを食べたいのか(What)」ですね。
これも、味の好みだけでなく、その日の気分だったり、前日の体験(前日食べたもの)などにも左右されるので、単純な話ではないのですが。
その中で「味の好み=コンテンツの属性や性質」という部分を切り出すとしたら、以下のような認識でいます。
webtoonは「縦ヨミ漫画」「縦スク漫画」などと表現されることもありますが、個人的には漫画よりも映像に近いコンテンツだと考えています。
なので、乱暴な言い方をすると「漫画表現と映像表現の間にある表現形式がwebtoon」というイメージでいます。
3.食べる方法や場所(=メディア/デバイス・読む環境)
そして、今回の分析における「体験」という切り口で考えた場合に、私が一番重要だと考えているのがこの「食べる方法や場所」です。
5W1Hでいうところの、「どんなふうに体験するか(How)」「どこで体験するか(Where)」ということです。
もう少しかみ砕くと、
・メディア/デバイス:紙の書籍なのか、スマートデバイスなのか
・読む環境:落ち着ける場所でなのか、時間や場所関係なくなのか
みたいな感じでしょうか。
特に大事なのは「どこで」の部分だと思うのですが、これが実現できるようになった背景は、日常生活において常に持ち歩いている存在としての「スマートデバイス(スマートフォン)」の出現と普及がかなり大きいです。
そういう意味でも、webtoonとスマートデバイスは切り離せない関係になっていると思います。
なお、KADOKAWAさんがやられている「タテスクコミック」というブランドがあるのですが。
ここでは、KADOKAWAが持つたくさんのコマ割り漫画を、ただコマのレイアウトを変えるだけではなく、比較的手をかけてフルカラー・縦スクロール対応しています(作品によってかけ具合に差は見られますが)。
スマートデバイスでコマ割り漫画をページ単位で見るとどうしても見づらさがが出てしまうですが、ひと手間ふた手間かけることで、豊富な人気作品をスマートデバイスでも良い体験として楽しんでもらおうというコンセプトだと理解しています。
今回のイメージに置き換えるなら、「お店の味を、シェフが自宅に出張デリバリー」みたいな感じでしょうか。
とは言え、コマ割りの漫画は「見開き・横読み」に最適化されているので、必ずしもそれが縦スクロールにうまくコンバートできるとは限らないですし、できたからといって同じような漫画体験ができるとも限らないのが難しいところだなとは思うのですが。
ただ個人的には、タテスクコミックのように「単に縦スクロールにしました」ではない作品であれば、これまで海外ではなかなか読まれにくい状況にあった日本の面白い漫画がより世界中で読まれるチャンスが増えるのではないかなぁと期待していたりはします。
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というわけで、久しぶりの今回は「webtoonはスナックカルチャーなのか」というテーマに対して、私なりの分析と見解をまとめてみました。
過去に関わっていたことがあるとはいえ、私自身が現時点でwebtoonのプレイヤーではないため芯を喰ってない部分はあるかもしれませんが、市場が拡大するためには多くのユーザーに届く・楽しんでもらうことが大切であることは間違いありませんし、ユーザー体験からの切り口自体は大切なアプローチだと思っています。
こんな感じで、ゲームデザイナーな管理人がwebtoon作品をお勧めしたりリサーチしたり分析したりしながら感じたことや気づいたたことを、みんなでシェアしたりあーだこーだ話したりしようというコミュニティがあったりするので、興味があればぜひ遊びに来てください。
それでは、また。
※何か質問や聞いてみたいテーマがあれば、以下の質問箱からどうぞ!
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