日本の音楽業界で発案されている様々なマネタイズの方法まとめ
タイは3月26日より非常事態宣言下にあり、4月3日からは夜間外出禁止令も発令されています。そのおかげもあってか、新規感染者数は徐々に減少してきている状況です(4/10現在)。
ただ、日本と同様、タイでもライブができるバー(タイには、厳密には所謂「ライブハウス」はありません。こちらの記事ご参照。)などは営業停止を余儀なくされており、だいたい3月中旬くらいから店を閉めていて、壊滅的な被害を受けています。イベントも大小問わず中止・延期となっており、このままでは、インディーズバンドが演奏する場所が無くなってしまう、ひいてはタイの音楽シーンが縮小してしまうのではないか、と危惧しています。
タイの音楽業界にお世話になっている日本人として、ささやかながらでも、なにか貢献できることはないか。
ということで、今、日本の音楽業界で発案されている様々なマネタイズの方法を、タイの音楽業界の人たちにも紹介したいと思います。そのなかで、自分たちに適用できそうなものがあって、それによって少しでも実入りができて助かるのであれば、やる意味があると思ってます。拾える範囲にはなりますが、やってみます。なるべく多くの人が生き残れればいいと願っています。
※必要都度、追記していきます。
※タイ語版はこちら。บทภาษาไทยกดที่นี่
バンド・アーティスト向けマネタイズ方法
デジタル音源を販売
音源をアップロードしたら直ちに販売開始できるので、即効性があるのが魅力です。
有名どころだとbandcampですかね。bandcampの場合、販売手数料はデジタル作品で15%、CDやグッズで10%となっています。
日本の希望「LOSTAGE」も、ニューアルバムをCDでのリリース前にbandcampにてデジタルリリースされています。
EC・SNSでグッズ販売
日本にはBASEやSTORESという簡易にECサイトを作成し、商品を販売できるシステムがあります。タイだとFacebookやInstagramなどを活用したソーシャルコマースのほうが馴染みがあるかもしれません。
日本では、こんな感じでバンドのCDやグッズが販売されています。こちらはハードコアバンド「ENDZWECK」のECサイト。
音源の収益をライブハウスへ寄付・ライブハウスへ寄付して音源視聴権利入手
この方法は、バンド・アーティストへのマネタイズというよりも、バンド・アーティストの音源をデジタル販売→その収益をライブハウスへ寄付するという方法なので、ライブハウス存続支援といった位置づけですね。
・音源配信でライヴハウスを救う『Save Our Place』
「読んで、聴いて、買える ミュージック・ストア」である「OTOTOY」では「Save Our Place」というプロジェクトが企画されています。ミュージシャン / レーベルの未リリース音源をOTOTOYで配信し、その音源売り上げを経費だけ差っ引いて、ミュージシャンが希望する施設(ライヴハウス、クラブ、劇場など)へ送金する、といった企画です。
・ライブハウス支援プロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」
日本のロックバンド「toe」の発起による、コロナの影響で収益が得られなくなってしまったライブハウスを支援するプロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」。全国にある登録ライブハウスの中から、自分が応援したいライブハウスの EC ストアを検索/選択し、楽曲データフォルダへのアクセス権をダウンロード購入することで、自分が応援したいライブハウスを支援することができます。
フォルダの中には、支援へのお礼として、「プロジェクトに賛同した約70組のミュージシャンが提供する楽曲データ」が置いてあり、期間内(2020年6月末日まで)であれば好きな時に聴いて楽しむことができる、といったプロジェクトです。
日程未定のツアー実施
Hip Hopユニット「MOROHA」が提示した日程未定のツアー。日程も内容も未定で、会場と実施するということだけ決まっているツアー。会場となるライブハウスには会場費を「寄付」ではなく「先払い」をし、ライブができるような状態になり、日程が決まったら、会場からアナウンスされるとのこと。
この方法も、バンド・アーティスト自身のマネタイズというよりも、ライブハウス存続支援といった位置づけになるかと思います。
ライブハウス向けマネタイズ方法
ドリンクチケットを前払いで販売
日本のライブハウスでは、入場するときに「1ドリンク制」を採っているところがほとんどです。入場時に、入場料とは別でドリンク料(だいたい500~600円ほど)を支払ってドリンクチケットをもらい、このドリンクチケットをバーカウンターでドリンクに交換します。このドリンクチケットを前売りして資金調達をし、チケットは店がオープンした後に使ってもらう、という方法です。
タイのインディーズが演奏できるようなバーでは「1ドリンク制」を採っているところはなく(発音が尻上がりのほうのクラブでは、外国人は入場料代わりにドリンク代をあらかじめ払うようなところはあります)、イベントによってはチケット代に1ドリンク含まれてることもある、くらいな認知度です。なので、タイでドリンクチケット前売り販売という方法を実施する場合はちょっと説明が必要になるかもしれませんが、難しい仕組みでもないので、すぐに理解してもらえるかとは思います。
東京・小岩のライブハウス「BUSH BASH」では、上述のBASEを使ってドリンクチケットをEC販売しています。
・リンク代金前払いプロジェクト "SAVE THE LIVEHOUSE"
自分の支援したいライブハウスと、ドリンクチケットの枚数を選び、購入することで、ライブハウスの資金繰りをサポートするプロジェクトも発足しています。
クラウドファンディングの活用
ネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みであるクラウドファンディング。タイにも以前、Asiolaって名前のクラウドファンディングサイトがあったのですが、今はもうなくなっているようです。プロモーションが足りなかったのか、タイの風土に馴染まなかったのか。
日本ではクラウドファンディングを活用し、支援者への様々なリターンを設定しつつ、多くのライブハウスが運用資金を調達しています。
こちらは千葉県・柏のライブハウス「DOMe」が日本のクラウドファンディングサイト「Campfire」にて運用資金を募っています。
EC・SNSでグッズ販売
ライブハウスもお店独自のグッズを製作し、上述のようなECサイト・ソーシャルコマースを活用して販売しています。
こちらは東京・新代田のライブハウス「FEVER」。
こちらは東京・青山の「月見ル君想フ」も運営する音楽レーベル「BIG ROMANTIC RECORDS / 大浪漫唱片」。
イベンター向けマネタイズ方法
投げ銭でのライブ配信
多くの国で利用されている動画系WebサイトでいうとYouTubeだと思います。日本だとYouTubeのSuper Chat機能が使えますが、タイでは利用できません。また、Super Chat機能利用までの条件がフォロワー1,000人以上 かつ 視聴時間4,000時間以上というのがあり、まずはこれをクリアしないと利用できません。
こちらは東京・新代田のライブハウス「FEVER」のYouTubeチャンネルで「the band apart」がライブ配信をしている様子。他にもカッコいいバンドのライブ配信の模様がアーカイブされています。
タイだと、先日、タイのインディーズ音楽系ストリーミングサービス「Fungjai」がおこなった、出演バンドが自室からライブ配信をする「At Home Festival」にてタイ式投げ銭を取り入れていました。「ライブ配信中の画面にQRコードが表示される→視聴者が各々のスマホの銀行アプリにてQRコードを読み込む→任意の額を振り込んでサポート」という、手軽だしキャッシュもすぐ回る方式でした。実際に約300,000バーツ(≒1,000,000円)集まっていたので、タイで投げ銭でのライブ配信をおこなう方法として、有用なのかもしれません(詳しくはこちらの記事で)。
こちらは第1回目のダイジェスト。4/25(土)には第2回目がおこなわれるようです。
ライブ配信の電子チケットを販売
ライブ配信向けに電子チケットを販売してマネタイズする方法です。電子チケットを購入することで、配信されているライブを観覧することができます。
日本だと「ZAIKO」がよく知られてるのでしょうか。現在はYouTubeとVimeoでのライブ配信に対し、電子チケット販売が可能なようです(プレスリリース)。
3月13日には日本のファインポップバンド「cero」がZAIKOを使って電子チケットを販売し、有料でのライブ配信をおこないました。「ceroだから面白いことやるんだろうな」という期待感だったり、チケット代が1000円とリーズナブルだったり、と、様々な要素が重なり、結果、購入者が5000人を超えるほどの反響があったとのことです。
その他
政府への支援要望
現在、日本のライブハウスは、そのほとんどが、政府からの営業自粛要請を受け休業をしています。休業するということは、当たり前だけど、収入はストップするので、ライブハウス自体の存続はもちろんのこと、音響エンジニア、照明エンジニア、スタッフなど多くのライブハウス関係者の生活が危ぶまれます。
そうした状況の中、自粛要請に伴う損失に対し、政府からの補填を求める活動をする団体「♯SaveOurSpace」が発足しました。署名を募り、助成金交付に向けた嘆願書とともに、政府関係者に声を届ける活動をしています。
ネット上で3月27日の夜から署名の呼びかけ、31日までに30万筆以上を集めました(当初目標10万筆)。
実際にこの活動がどのようになっていくのか、注視したいと思います。
まとめ
上記の各マネタイズ方法については、もちろん、バンドが自身のライブの電子チケットを販売してもいいし、ライブハウスが投げ銭ライブ企画してもいいし、イベンターがグッズ作って販売してもいいし、各々が自分に合った方法を採用してマネタイズができればと思います。
こうして外出を自粛して自宅にいる時間、ボクが触れるのは音楽であり映画であり本であり、そういったエンタメ文化がボクを救ってくれています。皆、それぞれエンタメに対しての考え方は違うんだけど、できれば、音楽を、文化を、一緒にサポートしていければ、そして、ポストコロナでも音が鳴り響いていればいいな、と切に願っています。
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dessin the world
日本とアジアのインディーズシーンを支援するためのレーベルです。 「日本の音楽をアジアに。アジアの音楽を日本に。」をコンセプトに、アジア音楽交流のための草の根活動をおこなっています。主に、タイのインディーズ事情について発信していきます。
日本・タイのインディーズバンドによるコンピレーションアルバムのフリーダウンロード「a plan named overlap」、アジアの現場で鳴っている音を共有するためのプレイリスト「Scenario Asia」はこちらから。
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