2019年 アングラの現場を騒がせているタイインディーズバンド 7選
ここ1~2年ほどでアジアから発信される音楽が日本でより注目されるようになってきました。なかでも、インディーズシーンもしっかり確立されているタイの音楽を聴く人たちが増えてきた印象です。タイのミュージシャンは、メジャー・インディー問わず、YouTubeや音楽系サブスクに新作をばんばんアップしてくれるので、海外からでも掘りやすくなっているのもその要因の一つかな、と思います。実際、皆さん深掘りされてて、「そんなバンドまで知ってるんだ!?」って驚くことが多々あります。
タイのインディーズシーンに身を投じている者としては、今現在、当地のアングラの現場を騒がせているバンドを共有したいな、と思い、以下、ご紹介します。
「現場を騒がせている」の名の通り、ライブが震えるほど素晴らしいバンドばかりなので、機会があればぜひ彼ら彼女らのライブを目撃してください。できれば、タイインディーズシーンが再び胎動を始めた今のうちに。
Beagle Hug
ツインドラムにギターとボーカルという変わった構成のバンド「Beagle Hug」。ボーカル Ae の力強くて伸びやかな声に心奪われるし、ギター Bankの音作りと間を大切にするフレージングに心奪われるし、ツインドラムの掛け合いに心奪われるし、Torphanがベース弾きながらバスドラ踏みながら電子パッドいじるスタイルに心奪われるし、ライブが始まってから終わるまでとにかくずっと心奪われてます。
来年にはまとまった音源をフィジカルでリリース予定とのことで、聴く用と観賞用と配る用に10枚くらい買おうかと思ってます。
DOGWHINE
インディーロックな疾走感と倦怠感を漂わせつつ、サックスが縦横無尽に駆け巡るバンド「DOGWHINE」。歌詞の内容が社会派で、伝えたいことがはっきりしてて、確固たる意志を感じられます。
今年はCAT EXPO 6の新人ステージにも抜擢され、注目が集まりつつあり、ボクとしても嬉しい限り。ライブの完成度がここに来てグンっと上がってきており、このまま突き抜けていってほしいです。
今年10月にはフィジカル・サブスクともにEP(というには結構ボリュームあるけど)をリリースしているので、ぜひチェックのほどを。
Soft Pine
タイでも大流行してるCity Pop・Synth Popの流れを汲んだサウンドなものの、摩訶不思議なコードやリフをぶっこんで来るバンド「Soft Pine」。
もともとこういったジャンルの音楽を好んで聴くことがなかったんだけど、たまたま見に行ったCity Pop系イベントに彼らが出演しており、その一筋縄ではいかない感じに惹きつけられました。
ここ2~3年くらいかな?新たに出てくるバンドがほぼCity Popにかぶれて似たようなことやるバンドばっかりなって、ボクにとってはつまらないシーンになってたんだけど、遂にはこういう尖ったのがでてくるんだったら、それも産みの苦しみの期間だったのかな、と思えてきます。
こちらも今年10月にアルバムをリリースしたばかりで、サブスクでも聴けるので、心ゆくまで堪能してみてください。
JANUARY
正統派インストポストロック「JANUARY」。正統派って言葉がしっくりくる感じの、これぞインストポストロックな楽曲。こちらもメンバー構成がちょっと変わってて、ギター2人とドラムでベースレス。ドラムがスティック短めに持つのが個人的に好みです。
練習やりこんでるんだろうな、と思わせるステージングで、3人の息もピッタリ合ってるし、ギタータッピングの掛け合いパートもビタッと合わせてくる。清々しいライブを見せてくれます。
音源はすでにEPを2枚リリース済み。来年早々にリリース関係で動きがありそうなので、一聴してお気に召した方は彼らのFacebookをチェックしてみてください。
Midnight Children
ジャズの手練れたちがポストロックやるとこうなる、っていう音楽を奏でている「Midnight Children」。
ドラムのTorphan君の腕前が秀逸すぎて、彼にドラム習いたい。数年前のジャズコンテストかなんかで優勝したらしい(全部うろ覚え)。ベースもギターも手練れで、ずっと見ていられるレベルで演奏がずば抜けて上手い、ってだけでなく、曲もひねりが利いてて耳に残るし、こんなに難解な曲なのに熱量高いライブやってて、もうなんの死角もなくて羨ましい。でも、メンバーがそれぞれやっているプロジェクトや仕事などで時間がなかなか合わないみたいで、残念ながらあまりライブがありません。なので、ライブがあるときは皆勤賞目指してます。
H1F4
ジャズ出身者たちによるロックバンド「H1F4」。
ベースがHariguem Zaboy、ドラムがKUNSTも兼任してて、リズム隊がロックなのでもうロックですね。一方でギターは別のジャズバンドも兼任してて、いい具合にジャズのコード感やリフが混ぜ合わさってます。
以前、とあるジャズバンドのみのイベントに彼らが出演したとき、「ジャズをずっとやってるとこんな風になるんだ、って(今日見に来ている)後輩たちが思うんだろうな」と言ってて、ジャズを離れてロックバンドとして挑んでいる姿勢を表していました。
このバンドもライブがどんどん良くなってきてて、以前は(ボクが勝手に感じていた)課題だったライブでのダイナミクス不足もすっかり克服してて、ライブが待ち遠しくなるバンドの一つとなりました。
Supergoods
しっとりずっしり響くボーカルがサイケでソウルフルな楽曲を歌い上げる「Supergoods」。バンコクの知る人ぞ知る系バーで夜な夜なライブを繰り広げているので、ステージングが堂々としてるし、ライブの完成度が半端ない。今年は、Jam Fest、Bangkok Music City、Maho Rasop、CAT EXPO、Wonderfruit(これは音楽フェスじゃないけど)などなど、大型フェスにも引っ張りだこで、Supergoodsの時代が来てる感ビシビシです。
11月にアルバムをリリースしたばかりで、しかも、全然関係ないけど、ジャケのモデルが友人で以前のバンドのライブサウンドエンジニアやってくれてたNui君なので、ジャケを見ると安心します。こちらも、サブスクでアルバム全曲聴けるので、是非に。
まとめ
Safeplanet、Moving and Cut、Gym and Swim、Solitude is Blissなど、今やすっかり人気者となったバンドが同時多発的に出現した6~7年前。色んなスタイルのバンドがごった煮で一緒にライブやってて「これから何かが始まる」っていうワクワク感がシーンを席巻してた時期を経て、City PopやSynth Popが大流行して似たようなバンドばっか出てきてつまらなくなった期間が数年続き、でもここ1~2年ほどで面白いことをやっている音楽がまた芽を出してきました(活動自体は1~2年以上だったりするバンドもいるけどね)。タイのインディーズシーン、また胎動始まったな、って感覚。あと3年もすれば(続けてくれれば)、上記にあげたバンドから人気バンドがでてくるはずです。
それにしても、Tomato Love Records、いいバンド揃えてますね。上記のうち3バンドはここのレーベル所属です。インディペンデントな姿勢のレーベルで、スタッフもしっかりバンドのサポートしてて、このままの勢いで良いバンドを輩出していって欲しいです。レーベルオーナーはSummer Dressのギターボーカル Tent君。以前の日本ツアー直前に足を骨折して、それでも気合いの車椅子で日本ツアーをおこなった強者なので、きっと良い活動を継続していってくれることでしょう。
できれば、彼ら彼女らの音楽がちゃんと評価されて、人気が出て、音楽で実入りがあるようになって、その実入りが音楽を続けていくうえでの一つの支えになればいいなぁ。そして、売れ始めても、流行に迎合して誰かと似たような音楽を吐き出すようになるんじゃなくて、誰とも違う、面白くてカッコよくて震えるような音楽を続けていって欲しいです。まぁ、でも、そんないらん心配しなくても、彼ら彼女らなら大丈夫か。
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dessin the world
日本とアジアのインディーズシーンを支援するためのレーベルです。 「日本の音楽をアジアに。アジアの音楽を日本に。」をコンセプトに、アジア音楽交流のための草の根活動をおこなっています。主に、タイのインディーズ事情について発信していきます。
日本・タイのインディーズバンドによるコンピレーションアルバムのフリーダウンロード「a plan named overlap」、アジアの現場で鳴っている音を共有するためのプレイリスト「Scenario Asia」はこちらから。
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