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Summer Pockets REFLECTION BLUEを遊んで聖地巡礼しませんか

離れたはずの鍵作品を再び手にする日が来るとは。

本稿はKey(鍵)のノベルゲーム『Summer Pockets REFLECTION BLUE』を遊んで舞台となった地域に遊びに来てほしいという下心満載の紹介文である。

PC版、スマホアプリ版(Android,iOS)Nintendo Switch版、PS4版が発売中です。CGを規制なく閲覧できる点からPC版を推奨します。反対に、島モンファイト、島ポンファイト未収録のアプリ版は推奨度が低いです。しろはルートが無料なので試遊としてはありだと思います。


ご当地ゲー、やるしかない

元鍵っ子が別作品ファンから知る体たらく

舞台は故郷の香川県、しかもアートで有名な直島町と住所的には私の地元となる高松市の男木島おぎじま女木島めぎじまである。これを知ったのは別作品を通して繋がった地元の方からの情報だったと思う。
鍵の初期作を熱心に追った身にも関わらず知らなかったことに自分の興味関心もライフスタイルも変わってしまったことに気付いた。『CLANNAD』の完成度が高すぎてそれ以降のタイトルに触れたいと思わなくなったのだ。(例外あり)

地元の話に戻そう。ここ十数年、香川がエンタメ作品の舞台になり時折話題になった。しかし目立つのは高松以西と小豆島。高松市が舞台の作品には『うどんの国の金色毛鞠』があるがアニメ版スタッフの間で色々あり下火になっていた。

もし本作が面白いならまた高松にも聖地巡礼に来てもらえるかもしれない。まちを薦めるネタになる。こうして本作を読み進め始めた。

追体験を求めて

スタッフ推奨攻略順があったとのことだが、うみちゃん、紬ルートに走った。2024年8月のことである。

真っ先ににうみちゃんルートを選択したのは進行しすぎるとオールクリアするまでロックされると知ったためである。どこかで息詰まり数か月寝かしかねなかったので早めに済ませた。実際、9月に中断してから再開できたのが翌年1月。我ながら己の習性を分かっている。

紬ルートを優先したのは本作のモデルの一つである香川県の男木島で開催される「男木島灯台サマポケ祭り」に参加して本編を追体験するためだ。2023年夏に一度参加し、灯台下に並ぶキャンドルを拝んだとき「次は本編の意味を知った上で見る」と誓ったのだ。なお、24年の祭りは台風の影響で9月に延期、キャンドルは中止となった。

本編のワンシーンを再現。未プレイだと夕暮れとゆらめく灯りに見とれるだけになる

未プレイの方に薦めるよう詳細や結末の中身は触れぬよう注意を払っている。しかしその他のネタバレは容赦してほしい。

サマポケのここがおすすめ(安直)

背景の質感

この風景がゲームに登場します。
以下の場所は直接関係はしませんが、舞台の島々は2010年より瀬戸内国際芸術祭の会場になっております。港や民家の作品、瀬戸内海の多島美を楽しむために3年に一度国内外から観光客が押し寄せます。高松市郊外育ちの自分が感銘を受けるほどなので、きっとお住まいを問わず喜んでいただけること間違いなしです。

男木島にある石造りの灯台。ゲームと比較して内部は非常に狭い。
砂浜も登場します
直島の集落から離れた場所も登場。ここに行く者は聖地巡礼者である。
直島のつつじ荘。ここでカレーを注文すれば本編の追体験になる。
物語は宮浦港から始まります
もっと天気がいいと海も澄んでいる!

やり込み要素の多さ

過去作『CLANNAD』以降おなじみの遊び要素が本作にも詰まっている。
選択肢を使って会話遊びができることで、紙芝居ではなく文章で遊ぶノベルゲームになっている。また、ミニゲームのカードゲーム、卓球ゲームが能動的に選択・操作可能なので研究する余地がある。
悩ましいのはやり込む時間を確保しづらいプレイヤーがテキスト差分を読み込もうとすると相当周回が必要そうなことだ。静久ルートはプロローグの選択肢が最後に影響することに驚いたぞ!

なお、シナリオを読むだけならMAP選択画面で目当てのキャラクターだけを選択すればいい。さほど難易度は高くないと思われる。ノベルゲーム初心者、早く読み進めたい諸氏は攻略サイトを検索していただきたい。

人の縁や家族の縁の温かさ

人の想いや優しさに涙腺が緩む。堪えられたルートもあったが、トータルで結局泣けた。私の場合は傾向はあった。超常現象ではない、人の縁が紡ぐ奇跡に弱い。

以下、各ルートのおすすめポイントを自分のプレイ順に列挙する。興味を持っていただけたらアニメだけでなく、ゲームでも楽しんでいただきたい。

読みごたえのある物語

うみちゃんルート

一番右の子。説明書の「加藤うみ」名義は本編で出ないためうみちゃんとする

中盤の親子の対話
泣いた。家族の話で揺さぶられる己の傾向がよく分かる。

うみちゃんの帽子
意味がある小道具は好き。

水泳と向き合う羽依里、水泳部のみんな
優しい世界。これを正史にしてほしい。

紬ルート

座っているツインテールの娘

岩井映美里の演技
中盤の羽依里と紬の告白シーン。泣きそうな震える声の紬にこっちも泣きそうになった。彼女がもっと売れてこの先も作品に恵まれますように。

限られた時間を全力で生きるシナリオ
詳細は言いません。中今の大切さを感じられて泣けます。

しろはルート

画面中央、白髪の娘

しろはの一生懸命さ
デレるとかわいい。

浜辺のウミホタルに照らされるしろは
背景が美しい。
ウミホタルは瀬戸内海に存在するのでリアリティ面でもアリ。

ただ……その後の展開を考えると、羽依里はしろはを選ばないほうがいいとしか思えない。他ルートの未来のほうが爽やかそうだ。

静久ルート

座っている紫髪の娘。紬と互いに補完する役割

紬ルートの一側面とも位置づけられる展開
それ自体が良き

カレーとチャーハンを通じた描写
鳥白島ではチャーハンが圧倒的支持を受けている。ところが静久ルートではカレーが鍵となる。途中でチャーハンも登場するが、両者が同時に登場するエピソードがシナリオの象徴、本質ではないか。

エンディングが2つ
個人的にはどっちを選んでもいい気はする。
みんながみんな逞しく在れるわけではない。

蒼ルート

右の虚空に手を伸ばす娘。オールクリア後に見ると感慨深くなる

羽依里と蒼の一線超えた行動
エロゲならノーカット!
公式では明かされないと思うので脳内補完が捗ったよ!!
珍しくエロ同人誌が欲しくなったよ!!!!

蒼ルートで登場する人物
低めのトーンの声色が好き。蒼ちゃんを好きすぎる愛情表現が好き。
言い回しがいちいち好き。可愛い。実はPC版特典の鳥白島観光日誌vol.2にいる。

鴎ルート

左端の娘。スーツケースの中身とは

ぼくのなつやすみ感あふれるシナリオ
世界観の核心に触れないからこそ夏を全力で満喫できる。

鴎の宝物、羽依里と鴎の縁
唸らされた。宝物の正体で一筋の涙が流れた。

恋愛要素薄め
恋愛よりも冒険、友情や約束に重きを置くシナリオで爽やか。鴎とイチャコラしたい想いをあまり育てずに済む。鍵作品は正ヒロインが固定され気味なので他の子に想いを強く寄せすぎると後が辛くなる。

観光資源化の余地あり
鴎に人気があれば現地で使える印象を受けた。
現状は女木島の洞窟のパネル設置が該当するのかな。
直島のレンタサイクル(個々の自転車)の前カゴにひげねこの絵ががあしらわれていることもかな。
※2024年9月時点

のみきルート

ショートヘアの娘が野村美樹、通称のみき

のみきの人となり
他ルートでは面倒見がいい、自身のルートでのデレ
抱える悲しみが判明してしまうところもまた良き

中盤の狂気
笑えるのに徐々に恐怖が増す。

エピローグ
ベタで泣いた。
のみきの行動を見ている人はいる。あなたは愛されているんだよ。

識ルート

追加キャラ。増えた理由は皆さまの解釈次第

他キャラクターのシナリオを下敷きにした設定と構成
このルートを最後にまわすと他ルートを踏まえた発見と感動が多々現れる。ぜひ個別ルートの最後に読んでほしい。

ファイルーズあいの演技
流石空条徐倫の中の人、中盤の号泣を通り越した絶叫で泣いた。素性を思い出した瞬間の識は押しつぶされる寸前だったに違いない。それほどの説得力があった。

識が振る舞うご飯
調理担当がいない加藤家ではぐちゃぐちゃの食材やカップうどんを食べるシーンが続く。識と深く関わると彼女が料理を度々こしらえてくれる。識の汁物やおむすびの味が私の舌に沁み渡った。自分も食べながら読み進める気分だったので読む立場にもかかわらず美味しかった。
文化的なご飯はこんなにも有難い。

識の奮闘
識はがんばる。

ALKA TALE

シナリオ分量的に残り5分の2(主観)

三言だけ言わせてください。
「チャーハン作りではまず中華鍋を用意」する天丼は笑えます。
多くの人の力を借りて個別ルート以上に遊ぶ夏休みを過ごせて楽しいです。
ある人物を「がんばったね」とねぎらわずにはいられなくなります。

島モンファイト

CLANNAD以降の鍵作品には寄り道シナリオが搭載される。

これは鳥白島で捕獲した生き物をカードに見立てて1対1の対戦バトルをするゲーム。生き物は虫や動物からUMA、イナリ、島民まで幅広い。レアカードで無双できない局面もありデッキ編成を楽しめた。
ミニゲームの一つにもかかわらず、ラストが本筋とリンクする。飛ばしている人にはぜひ遊んでほしい!

周回が必要なやり込み要素にゲーム性、経験を積む実感を味わえた。

全宇宙卓球王選手権こと島ポンファイト

ちょっとしたアクションゲーム。羽依里の声アリ。
卓球の覇者を目指して島民とシングルスで戦ったりシングルスで勝った相手とペアを組んでダブルストーナメントを戦ったりする。島モンファイトと異なりPCスペックに依存するのか高難度な印象。

プロローグでの選択次第で羽依里の能力が変化したり、ペア相手が特技で援護してくれたりする。やり込めるので本編クリア後のお楽しみ感がある。
こちらは本筋には関わらないが真っ当にエンディングがある。PCで遊べる諸氏はぜひ勝ち抜いてほしい。個人的にはこれも含めて個別ルートのEDが好きである。

私のPCは2016年製のためスペック面で苦しく、挙動を見切るのが手間だった。一番易しいモードが丁度良かった。

サマポケは電脳紙芝居ではなく立派なゲームである。

公式ショートストーリー(web/書籍版有)

本編の補完アリ、エンディング後の物語アリでどれも読み甲斐があった。むしろ各ルートクリア後に本編同然と見なして読んでほしい。天善の卓球道の始まりは面白い補完だった。

ちなみに、ショートストーリーの一部設定はアニメで扱うべきと訴えたい。
イナリが蒼に懐く背景と鏡子さんの解説は必須。
イナリは説明が無いと歴代鍵作品に登場する謎動物と誤解される。
鏡子さんの岬姓に引きずられて本編を楽しめなくなると勿体無い。

読んでからの観光は何倍も楽しめるはず

本作を初めて知った方、ノベルゲームに触れた経験のない方には一足飛びの紹介になったかもしれない。それでも興味を抱いていただけたならぜひ世界観に触れてほしい。地元住民(あくまで一部)、高松市の観光に関わる部署は歓迎している。


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