香川県ネット・ゲーム依存症対策条例年表 2022年編
概要
本記事は香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下条例)を巡る「AFEE」こと「エンターテイメント表現の自由の会」が発行するAFEEマガジンに寄稿したシリーズの第3回です。第1回、第2回の改訂版、3年間を振り返る長編、各項目に注目した記事も追って公開します。
本稿の読者はご存じと推察しますが、条例を違憲として県を訴えた訴訟で合憲判決が出されました。予想通りの判決には驚きませんでしたが、原告が訴訟の取り下げを図ったことには動揺を隠せませんでした。
2022年の条例を巡る時事を振り返るには訴訟取り下げにかかわるを避けた執筆は難しく、AFEEマガジンにはそぐわな表現が含まれると見込んだため寄稿を見送り、個人で公開することにしました。
出来事一覧
1月30日
三豊市議選にて条例について発信を継続している田中達也市議が再選
2月7日
違憲訴訟第6回口頭弁論
2月9日
住民訴訟(違憲訴訟の弁護士費用返還訴訟)第2回口頭弁論
住民訴訟原告団が裁判の情報を発信するWebサイトを公開
2月11日
ICD-11発効
2月22・23日
一般社団法人日本デジタルデトックス協会がデジタルデトックス体験プログラムを三豊市粟島にて試験開催
3月23日
作花知志弁護士が違憲訴訟代理人を辞任
原告の男性と21年秋から連絡がつかなくなったため母親を通して裁判が進んできた。ところが、22年4月の民法改正で成人年齢が引き下げられ、たため成人となった男性と連絡が取れなければ裁判を進められなくなった。
作花弁護士は住民訴訟の代理人も務めているが、こちらは継続している。
4月6日
地元企業の穴吹エンタープライズが新入社員研修にデジタルデトックスを導入すると発表
プログラム運営は日本デジタルデトックス協会が行う。
4月8日
住民訴訟第3回口頭弁論
4月29・30日
「最強ゲームジャム2021」開催
21年9月に中止になったイベントの再開催のためイベント名が2021となっている。
5月6日
違憲訴訟の原告2名が4月25日付の訴訟の取り下げ書を提出
5月16日
違憲訴訟第7回口頭弁論、結審
無人原告席を目の当たりにした傍聴人の間に動揺する反応が現れた。
5月17日
違憲訴訟原告の姉を名乗る人物がYouTuberコレコレ氏の配信に出演
https://www.youtube.com/watch?v=OpMqAXYbZcM
5月28日
瀬戸内海放送にて「検証ゲーム条例2」放送・配信
https://www.youtube.com/watch?v=X8IF2XLHeGA
6月17日
住民訴訟第4回口頭弁論
香川県議会共産党県議団が議会として施行状況などの検討を行うよう
高城宗幸議長に申し入れ
6月29日
香川県議会文教厚生委員会にて秋山時貞県議が条例の付則に基づく
見直し検討を行うか質疑
7月8日
高城宗幸議長が検討委員会を開かない旨を共産党県議団に回答
7月10日
第2回「Sanuki X Game」開催
地元住民が主催するゲームイベントが高松市内で開催された。全身を使ったゲームや地元の学生が制作したビデオゲームの体験、ゲーム業界人や医師が登壇するトークショーが行われた。
参議院議員選挙投開票
漫画家の赤松健氏が当選する一方、表現の自由を訴えるほとんどの候補が落選した。条例について香川で精力的に活動した藤末健三氏が落選し議員でなくなったことは残念である。
8月7~11日
条例に基づく事業として高松市の五色台少年自然センターにてオフラインキャンプ実施。県内で依存症外来を設ける三光病院が企画運営
8月19日
香川県議補欠選挙告示 坂出、観音寺選挙区で無投票当選
坂出市選出の植條敬介氏、観音寺市選出の城本宏氏とも自民党香川県政会へ
8月28日
香川県知事選挙
現職の後継候補自民・立民・公明・国民池田豊人氏と共産推薦の中谷浩一氏の新人による一騎打ちとなった。
現職の後継である池田氏が当選。
香川県議補欠選挙(高松市、善通寺市選挙区)
高松市では里石明敏氏が当選、自民党香川県政会へ
善通寺では氏家寿士県議が当選、自由民主党県政を考える会を結成
8月30日
違憲訴訟に対して原告の請求を棄却する判決
9月1日
住民訴訟第5回口頭弁論
9月3日
香川県主催のネット・ゲーム依存予防対策講演会開催
9月4日
浜田恵造知事が退任
9月5日
池田豊人知事が就任。住民訴訟の被告が池田知事に変更される
9月7日
松岡里佳県議が自民党香川県政会に合流
10月9日
横浜市にて「ネット・ゲーム依存基礎講座」開催。三光病院の海野順医師が講師を務める
10月24日
住民訴訟第6回口頭弁論、結審
全国都道府県対抗eスポーツ選手権2022TOCHIGI
『シャドウバース』学生の部で香川大生のあおどり選手が優勝
10月31日
違憲訴訟について原告が控訴せず
地裁の合憲判決が確定
11月
ネット・ゲーム依存について20年に高松市で講演を行った井出草平氏が日本嗜癖・依存症学会を設立
11月6日
8月に実施されたオフラインキャンプのフォローアップキャンプ実施
雑感
違憲訴訟編
もともと表現規制問題に明るい人たちの間では賛同しない意見が相次いでおり、裁判では厳しい結果になると評されていた。しかし、率直に言えば「原告が闘いを降りる」展開は想定外で、5月の裁判で無人の原告席を目の当たりにした瞬間には驚くしかなかった。
閉廷後の私は動揺した結果、昼間から複数の国会議員事務所や市民団体に現場の報告電話をする面倒な人になってしまった。
詳細は今後の投稿に譲るが県に相当有利な結果になった。
山田太郎参院議員からは他自治体への影響を懸念するコメントが出されている。
住民訴訟編
23年1月26日に判決が出る予定である。原告団は納得する結果が出るまで争う姿勢を示しているため引き続き動向を見届けたい。
県民の活動編
県内の有力企業グループである穴吹でデジタルデトックスキャンプが採用されたことを鑑みるとネットやゲームと距離を取ろうとするためのビジネスが県内に広がりつつあることを感じる。このまま利権化も進むだろうか?
県内のゲーム産業関係者や一般の県民による「最強ゲームジャム」や「Sanuki X Game」が継続して開催されたことが嬉しい話であった。
後者は第3回の開催に向けて動いているとのこと。地域に定着するかどうか、今後が楽しみである。
県政編
22年は任期満了に伴う県知事選、各地の市長選に県議が立候補したことで欠員が発生したため県議補選が執行された。
県議補選は無投票当選の選挙区が2か所出て、県知事選は投票率が前回を0.25ポイント下回る投票率は29.09%となった。直近4年間で実施されたすべての都道府県知事選挙の中で最も投票率が低いという不名誉な結果も残した。
投票先が無い、立候補してほしい人が見つからないなど事情はあると考えられるが国内外で政治的議論が起こった地域の選挙結果とはにわかに考え難い。
一方、22年12月の宮崎県知事選では投票率が前回を22.79ポイント上回る56.69%、現職と元知事の得票差が2万票に迫っていた。
香川でも候補者数が増えたり当選させたい候補が複数立候補したりすれば政治への機運は高まるのだろうか。高松市議選、香川県議選高松選挙区では前回より立候補者が増えるとという噂がある。23年春の統一地方選に期待する。
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