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月刊 デスクトップLinux 創刊号(2025年3月号)
[特集] デスクトップLinux最前線!!
2024年は、私たちのデスクトップ用OSの選択肢に大きな変化があった1年となりました。2024年4月、StatCounterの調査でデスクトップ向けOSにおけるLinuxのシェアは4.55%となり、前年の3.18%から大幅に増加、ついに4%を超えたのでした。( 参考 )
筆者はそのような背景から、本誌「月刊デスクトップLinux」を立ち上げたわけですが、本稿では大きな転機を迎えるデスクトップLinuxの最前線を紹介したいと思います。
今、Linux移行が加速中!
近年、Linuxをデスクトップ環境として選択するユーザーが増えています。その背景を少し探ってみましょう。
クラウド化の進展
まず、Webアプリやクラウドサービスの普及により、多くの作業をブラウザだけで完結できるようになったことが挙げられます。ユーザーはOSの選択肢に縛られることなく、業務が行える環境が充実してきました。
Windows 11の影響
次に、Windows11の登場に伴う、システム要件の厳格化やTPM 2.0必須化によって、古いPCが使えなくなったことがLinux移行を促す大きな要因となっています。
この波は2段階あったようで(筆者は最初に弾かれてしまいました 汗)。まずはWindows 10 → 11移行時に、、そして最近、Windows 11 24H2では、サポート対象外でありながらも辛うじてアップグレードできたPCも「起動不可」になってしまったようです。( 参考 )。
筆者自身も、2017年に購入したThinkpadを延命させるためにLinuxを入れた経緯があり、同じような経路をたどった方がいるのではないかと考えています。
ハードウェアの進化
過去に比べ、Linuxのハードウェア対応が格段に向上しています。加えて、メーカー側の対応も強化されつつあり、特にDellなどでは自社のホームページにUbuntuのインストール方法を掲載するなど、デスクトップLinuxをとりまく環境は大きく変わってきています。
ゲーム対応の向上
Proton(WindowsゲームをLinux上で動作させるための互換レイヤー)やSteam Deck(Steam用ゲーム機でLinuxを採用)の成功により、ゲーム用途でもLinuxが選択肢に入るようになりました。
Linuxはデスクトップに適しているのか - よくある不安とその解決策
ここまで勢いのいいことを言ってきましたが、それでも、「本当にLinuxって使えるの?」と疑問に思う読者の方は多いと思います。そこで、Linuxデスクトップへの乗り換えを考えている方々の代表的な疑問に答えてこうと思う。
「ドライバがちゃんと動くの?」
昔は周辺機器やWi-Fiアダプタの対応に苦労しましたが、現在では多くのメーカーが公式にLinuxサポートを提供しています。特にAMDやIntelはオープンソースドライバを積極的に開発しており、標準インストールでほぼ問題なく動作しています。
「ソフトが足りないのでは?」
よく普及している種類のLinuxでは、iOSのAppStoreやAndroidのPlayStoreに相当する充実したパッケージライブラリを利用することができます。かつてこれらのインストールはコマンドを打ち込んで行っていましたが、今ではGUIのツールが用意されています。
「仕事で使える?」
SlackやzoomなどのソフトウェアはLinux版の提供があります。また先述の通り、TeamsなどのクラウドサービスはWeb版で利用することができます。エンジニア用途ではもともとUNIX互換環境ですので環境構築は元々容易で、最近では、Microsoft系のvscode や Powershell も Linux で利用することができるようになりました。
実際のユーザーはどう使っている?
これまでの改善により、Linuxはもはや専門家向けのOSではなく、一般ユーザーにも現実的な選択肢になりつつあります。実際にデスクトップLinuxを使っている方々のブログやnoteを紹介します。
たおたおさんは、Windows11が求めるスペックに疑問を持ち、Linuxに乗り換えられたようです。PC選定から実際導入するまでの家庭を丁寧に説明されています。→記事を読む
また、以下の記事では、Linuxを日頃デスクトップOSとして利用されてる方々の利用状況を調査した結果が報告されています。多くのLinuxユーザがどのような環境を利用しているのかを垣間見ることができます。→記事を読む
まわりにLinuxを使ってる人が少ないのはなぜ? - 有名人やインフルエンサーがLinuxを使わない理由から探る
すでにお気づきの読者も多いと思いますが、Linuxデスクトップの事例はほぼ全部「エンジニア」のものでした。エンジニア以外の方はほとんど使ってないのが現状と見て問題ないように思います。それはなぜでしょうか?
そこで、少しだけ角度を変えて「SNSで見かけるインフルエンサーの多くはMacを利用している理由」をもとに「みんなLinuxを使わない理由」を探ってみたいと思います。
そもそも必要ない
最初から強烈で恐縮ですが、多くのインフルエンサーの方々はスポンサーと契約しており、その投稿によってなにかを購入してもらう必要があったりします(私もそうなりたい)。そのため、新しいMacやThinkpadにOSを入れる必要はもちろんのこと、古いPCを復活して使ったりする必要がないことが最大の理由だと思います。
フォロワーの環境にあわせている
多くのフォロワーがWindowsやmacOSを使っているため、馴染みのないLinuxをメインに扱うと視聴者を混乱させたり、参考にならない可能性があることが挙げられます。
また、ユーザ目線という意味ではiOSアプリの開発者は、開発に必要なXcodeがMac以外で動作しないので、Linuxは最初に選択肢から外れてしまうことになります。
Adobe製品が完全対応していない
地味にこの理由も大きいと思いますが、クリエイターの多くはPhotoshopやPremiere Proを利用しており、いずれもLinux版は存在しません。もちろんLinuxで代替できるソフトがあるにはありますが、満足できないことが多いのが現状です。
特に、最後のAdobe製品は動画編集のためにPC環境を整備する方にとってはノックアウト要因となってしまうので、PCを利用する目的が明確な方は、それをLinuxで達成できるか、できないとして代替の方法はないのかを慎重に検討することをお勧めします。
ディストロの選び方
Linuxには様々な『ディストロ(ディストリビューション)』があり、それぞれ特徴が異なります。
そして、「どのディストロを選べばいいのか?」という問題は、初心者から上級者まで悩むポイントになります。今回は用途ごとにおすすめのディストロを紹介します。
初心者向け: Ubuntu、Linux Mint、Zorin OS(安定性・使いやすさ重視)
軽量・古いPC向け: MX Linux、Lubuntu、Puppy Linux(軽快な動作)
最新技術・開発向け: Fedora、Arch Linux、openSUSE Tumbleweed(新しい技術に素早く対応)
安定運用向け: Debian、Ubuntu LTS、Rocky Linux(長期サポート・安定志向)
特殊用途: SteamOS(ゲーム)、Kali Linux(セキュリティ)、Vanilla OS(Immutable OS)
もしLinuxに興味があるなら、まずはUbuntuやLinux Mintなどの初心者向けディストロを試してみるのがおすすめです。PC内のWindows環境を壊さなくても、VirtualBox をインストールすればテストすることができますし、USBメモリからの起動できるLinuxもありますので、ぜひ試してみてください。
今回ディストロについては、簡単なまとめとなってしまいましたが、本誌では今後、より詳細なユースケースごとのディストロ選びや、最新の動向についても取り上げていく予定ですので、次号以降にぜひ期待してください。
[今月のディストロ] Plasma 6.3 登場!KDE Neonで早速試してみた
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KDEは2月11日(現地時間)、デスクトップ環境「KDE Plasma 6.3.0」をリリースしました。
創刊号ということで、本来であればもう少しメジャーなUbuntuなどを取り扱ってもよいのですが、今回はデスクトップに重きをおいたディストロということで、普段はLinuxのGUI環境を開発しているKDEが開発したKDE neonをインストールし、 Plasma 6.3 の世界を楽しんでみたいとおもいます。
主な改善点
公式サイトによると、それぞれ以下の通りのようです。
グラフィックと表示の改善
描画タブレットのサポート強化
ハードウェアモニタリングの向上
カスタマイズ機能の強化
Discoverの改善
タブレットのサポート強化は今回残念ながら見れないのですが、他のポイントをチェックしてみます!
インストールしてみた
さて、検証用のメインPC(Thinkpad 5th gen)にKDE neonをインストールしました。公式サイトでiso取得→USB作成→ブート→LiveLinux起動→インストーラ(勝手に起動)→インストール…といった流れで進みます。
LiveLinux起動後にインストーラーを閉じてしまえば、PCを汚すことなくKDEneonを試すことはできそうです。途中、パーティション設定後のクリーンアップで失敗したのですが、再インストールしたらうまくいきました。(焦った)
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新機能をざっと確認
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ディスプレイの拡大率を5%単位で調整
Windowsなどでは25%単位の拡大率設定が5%単位で調整できます。拡張ディスプレイを使ってる場合はディスプレイ間のずれを可能な限り減らすことができそうです。
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パネルの複製機能
パネル(Windowsでいうところのタスクバー)を複製できるようになりました。これは拡張ディスプレイを追加したときに、メインディスプレイとサブディスプレイのタスクバーを揃えるときに有効です。
Discoverの改善は割と普通
KDEでいうところのAppStore的な役割を果たすDiscoverですが、この改善は「パーミッションの変更をハイライト表示する」と「開発者自身によって提供されているか、信頼できる第三者によって検証されているかを明示する」です。地味ですが最近アプリライブラリを使ったサイバー攻撃が増えているのでとても有効なアップデートと言えます。
Discover自体については後述します。
個人的なおすすめポイント
それでは、KDE neonを使っていて気に入った点を上げていきたいと思います。
KRunnerがめっちゃ面白い
KRunner(ケーランナー)はWindowsの「コマンドを指定して実行」をコマンド以外にも拡張させたような機能で、ほぼキーボードだけで様々な画面を呼び出すことができます。
アプリ・ファイル検索(ランチャー機能)
firefox → Firefoxを起動
settings → システム設定を開く
~/Documents/test.txt → 特定のファイルを開くシステムコントロール
shutdown → PCをシャットダウン
reboot → PCを再起動
lock → 画面をロック計算機(電卓機能)
12 + 34 → 計算結果を表示(= 46)
sqrt(144) → 平方根を計算
15% of 200 → 割合計算もOK(= 30)単位・通貨換算
100 cm to inches → 100cmをインチに換算(= 39.37インチ)
50 USD to JPY → 為替レートに基づいて計算(オンライン接続時)ウェブ検索
!w KDE Plasma → Wikipediaで「KDE Plasma」を検索
!g KDE neon → Google検索
!yt Linux tutorial → YouTubeで検索ショートカット機能
chrome https://example.com → Chromeで特定のURLを開く
man ls → Linuxコマンドのマニュアルを表示アクティビティ管理
switch to activity <活動名> → Plasmaのアクティビティ(デスクトップ環境の仮想ワークスペース)を切り替えスクリプト・コマンド実行
ls -l ~/Documents → KRunner上でターミナルコマンドを実行
kill firefox → プロセスを終了(強制終了)
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Discover使いやすい
アプリ導入のDiscoverがとても使いやすいです。ChromeやGIMPなどメジャーなアプリはすべて入っており、ワンクリックで導入することができます。
しかし、中には怪しいアプリもありそうなので、今回のアップデートはとても良かったのではないかと思います。
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外部ディスプレイをつないだら速攻使い方の選択肢が現れた
地味ですが、Windowsを使っていて外部ディスプレイをつなぐと、その前の状態によって、どういう挙動になったりするかが代わりますが、KDE neonは外部ディスプレイを接続すると、どのような形で画面を表示させたいかの選択肢を提示してきます。これは自席のモニターにつないだり、会議室のプロジェクターにつないだりする人にとってはとても使いやすい機能ではないでしょうか?
また、筆者のLG DualupMonitorも問題なく接続できました。
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様々な動作は以下の動画でも紹介されていますのでぜひご覧ください(英語)
安定はしていないらしいので注意
このように、魅力的な機能が多く、見た目もすっきりしていて私好みのKDE Plasma6.3 ですが、リリース後、多くのユーザーからバグや不具合の報告が寄せられているようで、(報告例)上記の動画にもネガティブなフィードバックが寄せられています。
現時点で私は困っていませんが、あくまでも利用は自己責任でお願いいたします。
まとめ
KDEのお勧めポイントをまとめてみました。課題があるようですので最新情報に注意しながら、ぜひ試してみてください!
KRunnnerが面白かった!ぜひ使いこなしてみたい!
Discoverはじめ、インストールから使い始めがとてもスムーズで、優しいOSだと感じた。
全体的にすっきりしたみたい目で、ディスプレイ管理が柔軟
LinuxPCで確定申告に挑戦
確定申告の季節がやってきました。今年こそはWindowsやMacに頼らず、Linux環境だけで確定申告を完遂できるのか? その限界に挑戦してみましょう。
国税庁の確定申告書作成コーナーへGo!
確定申告では、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を活用することでオンライン申告が可能です。こちらを使って、確定申告を進めていきたいと思います。
いざFirefoxで国税庁に凸します。
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ICカードリーダーが不要に!ドライバー問題から開放!!
以前までは、確定申告をするのにマイナンバーカードをICカードリーダーで読み込ませる必要がありました。そのため、LinuxだとICカードリーダーのドライバで問題が発生してしまう可能性が非常に高かったのですが、なんと最近はカードリーダーがなくても、持っているスマートフォンがICカードに対応していれば確定申告ができるようになりました。
こいつがあれば怖いものなし!ついにLinuxの壁を超えることができそうです。
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異常事態発生!
しかしここで異常事態発生。不穏なポップアップが出てきました。
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ここで「推奨環境を確認する方はこちら」をクリックすると、どうやら推奨環境とやらは以下の通りのようです。
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困りました。「Windowsの場合」と「Macの場合」の選択肢は提示してくれていますが、「Linuxの場合」についての記載がありません。もしかしたら、もしかしたらブラウザのせいなのかもしれません。念の為、Chromeで挑戦してみましょう。
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すみません!だめでした!
やっぱりLinuxでの確定申告はできませんでした。残念です。今年の確定申告はスマホで済ませることになりそうです。
これ以上やれることは無いことも無い気がするのですが、なにか色々問題になりそうというか、確定申告そこまで頑張ってやるものでもないというか、、、しかし少し引っかかるのはこういうのは「推奨環境」とは言わず「必須環境」というべきな気は少ししました。
Linux関連情報リンク集
本誌は月刊ですので、最新情報は各サイトをご覧ください。参考までに、私がウォッチしているサイトの一部をご紹介いたします。
さいごに
本記事に関する免責事項は以下の記事をご覧ください。
編集後記
月刊 デスクトップLinuxの創刊号を書き終えました。これから添削してブラッシュアップしていくところです。Linuxに触れたことがなかった方にはなにか参考担っていただければ、昔Linuxをいじってた方や雑誌を購入してた方はなにか懐かしさを感じていただければ幸いです。
次号予告
次回はまだ決まっていないのですが、ChatGPTの情報によるとVirtualBoxがアップグレードされて、TPMをサポートしたことにより、Windows11入れられるんじゃないか疑惑が出てまして、それが試せたら試したレポート入れようかなと思います。結構こすられてたらやめます。
ディストロは変にいじって壊れにくそうという意味で、イミュータブルなものを試して見ようかと思っています。ほかは・・・自分が「いまさら聞けない」と思ってるようなことを「いまさら聞けない○○」とか言う感じで書くかもしれません。(なんでペンギンなん?とか)
3月20日公開予定です。
本誌について、読者の皆様へのお願いについては、是非以下の記事をご覧ください。