年金の端数処理とは? ー過払い年金解説 番外編ー
偶数月に振り込まれる年金、1円未満の端数が出たときは切捨てられます。過払い年金返納額の計算にも当然、関係してきます。間違えてはいけない、過払い年金の計算について、解説します。
目次
1 端数処理の方法
2 過払い年金返納額の計算
1 端数処理の方法
年金の振込は基本的に偶数月の15日です。前2か月分が振り込まれます。例えば、10月に振り込まれる年金は、8月分と9月分の年金になります。
年金額の6分の1が振り込まれる事になりますが、6で割り切れない場合があります。
割り切れない場合の端数は切捨てられ、2月の振込時に端数の合計が加算されます。
端数計算について、わかり易く解説された記事がありますので紹介します。
・シモムー先生が丁寧に教えてくれます「年金力養成講座・みんなのねんきん」
2月の振込で調整される、という扱いは平成27年10月からであり、それ以前は切捨てられるのみでした。なぜ2月の振込で調整されるか、というと、被用者年金一元化に伴い、共済年金の方に合わせた結果です。
では、それまでは数円損していた事になります。違法ではないか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
過去に端数処理について争われた判例があります。
平成21(行コ)56 年金支払等請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成21年(行ウ)第6号)
平成22年2月26日 名古屋高等裁判所 その他
端数処理によって1年間に切りすてられた6円を支払わないのは違法だ、という訴えでしが、判決により「違法とはいえない」という結果がでました。
1年分の額として決定される年金額ですが、きっかりこの額を受け取ることが確定するわけではありません。あくまで、振込日に支給される計算の基になる額にすぎません。
なので、年金額が端数処理によって、実際に受け取る額と異なってしまっても問題ないわけです。
年金の受給権には、基本権と支分権があります。
基本権: 保険給付を受ける権利
支分権: 当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の 支給を受ける権利
年額として算出される基本権が受給できる事が確定された金額ではなく、支分権に基づき計算された額が、実際に受け取れる、という事です。
法改正により、2月の振込で差額が調整されるようになりました。しかし、基本権の年額がきっちり受給できるようになった訳ではありません。
2月振込でたまたま全額支給停止になった場合には、端数の加算はありません。
2 過払い年金返納額の計算
過払い年金の計算にも当然この支分権に基づく金額が使用されます。わかりやすいように、平成27年10月改正前の例で解説します。
年額1,978,400円で1年間受給し、年金額に誤りが判明、再裁定により1,878,400円になったとします。返納額は、1978400-1878400 で100000円、 という訳ではありません。
支分権に基づく受給額に直さないといけません。
再裁定前
1978400×1/6 =329733.333・・・ 切捨て 329733円
6を掛けて1年分に戻します。 ×6=1978398
再裁定後
1878400×1/6 =313066.666・・・ 切捨て 313066円
6を掛けて1年分に戻します ×6=1878396
1978398円-1878396円 = 100002円
返納額は10万と2円になります。
再裁定基準の総額ベースは支給対象月「〇年〇月分~〇年〇月分」で計算します。当然、支分権に基づく金額で計算します。
再裁定の返納額については 【過払い年金解説その3 2章 過払い年金の返納額】参照
実際に振りこまれた額 - 本来振り込まれるべきであった額 が返納金債務となります。
振込日ベースで差額を計算する訳ではありません。あくまで、再裁定が基準でそこから直近5年の総額ベースで計算します。
振込日ベースで債権が発生、については【過払い年金解説その2 5章 なぜ、年金機構は取立するのか】 参照
理論上は「振込日ベース」と「総額ベース」、両者は同額になると思われるかもしれません。しかし、これが机上の空論である事を徹底解説した、過払い年金解説シリーズ4および5をぜひお読みください。
過払い年金解説シリーズ1~3は序章に過ぎなかった。年金行政の本質に迫る、シリーズその4、その5。
5年分を超える、過剰な額が催促される、【過払い年金解説その4 まだまだある過払い年金の違法取立】
【過払い年金解説その5 全ての過払い年金取立は間違っている】
法解釈の根本を間違えるとどうなるのか?恐ろしい現実を解説します。過払い年金解説シリーズの集大成。