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荒木哲郎監督トークセッション JBN×エル
1月19日。長野を拠点とする制作会社、JBNさんと弊社での合同イベント『荒木哲郎監督とのトークセッション』が開催されました。
荒木哲郎監督について
日本を代表するアニメーション演出家、監督。
代表作は、『DEATH NOTE』『学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD』『ギルティクラウン』『進撃の巨人(~season3)』『甲鉄城のカバネリ』など。 監督最新作は『バブル』。
開催のきっかけは、さかのぼること約5年前。当時から、『進撃の巨人』の大ファンだったハラさん。その話をJBN坂田さんにしたところ、坂田さんと荒木監督は、大学時代からの友人関係だったことが判明。すごい繋がり…!
そこから開催に至るまでの経路は、こちらの記事でご覧ください。
本当は昨年の11月に開催予定だったのですが、コロナの影響で延期に…年をまたいでついに、開催が実現しました。
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実は私も、10年にわたる進撃好き。大好きな作品を手がけた監督とお会いできる…!ずっと前から、わくわくが止まりませんでした。
トークセッションでは、荒木監督のこれまでのキャリアや、作品をつくるときのエピソードや思い、これからの展望など…。2時間かけて、じっくりと聞かせていただきました。その時間を振り返り、心に残ったことをまとめました。
荒木監督のお話から学んだこと
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やりたい仕事ができるように、自分から動くこと
荒木監督がアニメ制作会社に入って最初に任されたのは、車の運転でした。制作の仕事をもらうにはどうするべきか考え、自分に与えられた仕事のなかで、すこしずつ「描ける」というアピールをしていたそうです。
作成を依頼されたお知らせの紙に、イラストを挿絵として入れていたところ上司の目に止まり、それをきっかけに、描く仕事をもらえるようになっていったとのことでした。
「やりたい仕事を得るために、どうすればいいかを考えて、行動に移す」
この話は、すべての仕事に言える、大切な姿勢だと思いました。
「やりたい」と言うことは簡単ですが、それだけでは、やりたい仕事は回ってきません。やりたいこととできることが重なっていなければならないし、やりたいことだけをやることが仕事でもありません。
今自分にできることと誠実に向き合いながら、どうすればやりたい仕事ができるか考え、そのための行動を起こすこと。その積み重ねが、「やりたい仕事」「在りたい姿」につながっていくのだと感じました。
意図を、伝わることばで説明する
監督の仕事の一つに、「絵コンテの意図を、制作陣に伝える」という作業があります。
どういうことを伝えたくて、そのためにどういうシーンをつくりたくて、どういう演出をしてほしいか。絵コンテを持って現場を周り、丁寧にことばで説明するそうです。
印象的だったのは、作画班、音響班、演者、それぞれの認識や使用言語が違うことを理解し、それぞれに伝わることばで伝える姿勢。
どんなに素晴らしい絵コンテでも、それをかたちにする人たちに意図が伝わらなければ、伝えたいことを表現することはできません。荒木監督の話からは、「伝えるためのコミュニケーション」への真摯な姿勢を感じました。
そしてこれは、自分たちの仕事にも当てはまるなあ…と。デザイナーやエンジニアに、制作意図を説明するとき。クライアントに、立案したキャッチコピーを共有するとき。ときと場合によって、どんな伝え方が適しているかは異なります。誰かと一緒に一つのものをつくるときは、伝えたいことを、伝えるべき人に伝わるよう言語化することが大切だと、日々実感しています。
目指す方向を揃え、個々の能力を最大限発揮するために、「相手の立場に立ったことばで、コミュニケーションをとる」姿勢は忘れずにいよう、と思いました。
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「みんなでつくる」という責任感
アニメづくりには、多くの人が関わります。それゆえ、一人でクオリティにこだわりすぎると、全体のスケジュールが逼迫してしまいます。予算も人の時間も体力も、無限ではありません。こだわり抜くことで生み出せるクオリティもありますが、それにより現場の負担が大きくなれば、今後同じメンバーでものづくりをすることは厳しくなってしまいます。
自分ひとりで作っているわけではないということをしっかり理解し、それを見越して、現在の作業進捗を確認したり、優先順位をつけて作業したり、時間をかけたいところを事前に共有したり。こだわることを諦めるのではなく、「どうすれば、こだわりを残しながらチームでスムーズに作業ができるか」を考え、調整する。みんなでつくることに対する責任を、強く感じました。
この姿勢は、日々のディレクション業務の際、しっかり意識しようと思います。
ゴールを、「今日も面白かった」にしたい
監督は、制作陣に対してフィードバックをする立場です。
「大切にしているのは、ご機嫌でいること。
フィードバックの時間を、楽しく話せたにもっていくこと。
一緒に仕事をしたい人たちに、ここに居たいと思わせたい」
現場の空気づくりを大切にしているというお話からは、監督としての高い意識と、制作陣への思いやりを感じました。こんな考えでいてくれる人となら、「一緒にいいものをつくりたい」と思えるはずです。
エルで受けるフィードバックが、自分を前向きにさせてくれるのは、先輩方がいつもご機嫌でいてくれて、「一緒にいいものをつくろう」という空気をつくってくれるからかもしれない、と思いました。
「やりきること」の積み重ねが、信頼につながる
荒木監督は、自分が監督として評価されてきたのは「真面目にやりきる」ところだったといいます。
「作品のおもしろさは測定できないけれど、つくる速さやつくった量は測定できる。つくりきって納品した分が、自分の実績になる」
名が知られるほど、周りから「すごい人だ」と評価されることが多くなるかもしれません。しかし、監督が今の立ち位置に来るまでには、ひとつひとつ真面目に取り組む姿勢と、地道な日々の努力の努力があったのだと実感。表面的な評価だけではわからない、監督が積み重ねてきたものの厚みを感じました。かっこいい。
すぐに成果が出なくても、つくったものが評価されなくても、まずは「やりきる」こと。一つ一つのことを、真面目に取り組むこと。文字にすると当たり前のことですが、この継続が、何より大切なのだと思います。
傷つき、落ち込み、悩みながらも進み続ける
「今でも、”どうしてあの人みたいにできないんだろう”と、苛まれる日は多い。10日中9日はそうです」
このお話が、とても印象的でした。
私は刺激に弱く、落ち込みやすいタイプです。そのため、どうすれば落ち込まずにいられるようになるのだろう、訓練を積むしかないのだろうか…と考えることがよくありました。
監督のように、多くの人に名が知られている人は、特殊な訓練によって強靭なメンタルを得て、何を言われても受け流すことができるのだろうか、その秘訣があればぜひ聞きたい…と、思っていましたが、そんなことはありませんでした。
「マイナスな評価や、心ない声を耳にすれば、普通に傷つくし、落ち込む。
でもそれは、特性的なものだから。自分との付き合い方、感情の慣らし方を覚えるしかない」
荒木監督でも、傷ついたり、落ち込んだり、悩んだりしている。それでもいいものをつくるために、進み続けている。今、第一線で活躍する人が、そんなふうに生きていてくれることが、私にとっては救いでした。ちゃんと悩んでいいのだと思えたし、それを乗り越えていいものをつくっている人がいるということは、希望だと思います。
受けた評価も、抱いた感情もすべて受け入れて、進み続けることが大切なのだと心に刻みました。
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人生の代表作を、今でも探し続けている
『進撃の巨人』について監督は、「人の夢を叶えた仕事だと思う。とても楽しかった」と述べていました。
たくさんの人気作を生み出している監督ですが、まだまだ、止まる気はないといいます。
「作品をつくることは、海に網を投げる感覚。
理想としているものがひっかかるか、いつも試している。ときどき、今、すこし引っかかったなと感じる。けれど、完全にひっかかった、とはなかなか感じられない。
人生で、あと何回、網を投げられるだろう。
自分の夢を、自分で叶えることが理想だけど、自分ひとりだけが喜んでも虚しい。みんなが喜んでくれるものをつくりたい」
ひっかかるまで、網を投げ続ける。人生の代表作ができるまで、つくり続ける。その話をしている監督のまっすぐな眼差しはとても眩しかったです。監督がこれからつくるものを、私も見ていたい、と強く思いました。そう思わせてくれるところが、監督の魅力なのかもしれません。
オフショット
荒木監督と長野を歩く
初めての長野だった荒木監督。トークセッション前に、ハラさん、坂田さんと三人で、善光寺周辺を観光しました。
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荒木さん、坂田さんと善光寺周辺観光。荒木さんも気になる城山のあの建物。 pic.twitter.com/O0fsoN1qkm
— ハラヒロシ / デザインスタジオ・エル (@harahiroshi) January 19, 2023
JBN×デザインスタジオ・エル
トークセッションのあと、エルとJBNのみなさんで交流会を行いました。
時勢的に、なかなか交流する機会がありませんでしたが、この日は会社の枠を超え、たくさんの方とお話することができました。
仕事のこと、趣味のこと、これまでのことや、これからのこと。共感しあえるところがあったり、新しい気づきがあったり、がんばるぞスイッチが入ったり。いい刺激をいただきました。
私は初めてお話する方ばかりでしたが、とても居心地がよかったです。あたたかい会社なのだということを、肌で感じました。
長野の制作会社同士、これからも一緒に切磋琢磨していきたいです。
今度はエルにも、ぜひいらしてくださいね!
おわりに
トークセッションの日を振り返ると、「伏線回収みたいな日だったなあ」と思います。
ひたすら、アニメ制作に携わり続けた荒木監督。監督の作品を、好きだと周りに伝えたハラさん。それを知り、荒木監督と自分の接点を話すきっかけができた坂田さん。そして私を含め、今「つくる」仕事に関わっている人たち。
自分の好きなことや、大切にしたいことに向かって動いていると、思わぬところで縁はつながるのだと実感しました。自分がこの空間にいられることを、とても幸せだと感じた日でした。
荒木監督、JBNのみなさん、本当にありがとうございました。
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またいつか、素敵な伏線回収ができるように。いい伏線を散りばめながら、日々を重ねていきたいと思います。
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