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人生100年時代?

「人生100年時代」というキャッチフレーズがありますね。私は100年生きられるという可能性や目的が示されるよりも、日々の生き甲斐を求めたいと思う方なので、このフレーズは今ひとつピンと来ません。

国がこれを持ち出すのはGDP成長を高めるために労働人口を減らすわけにはいかないからでしょう。無策にいきなり生産年齢を引き上げると、老体に鞭打って働かせる構図になり、いかにも不健全な政策に見えてしまいます。故に、「人生100年時代」というフレーズが必要になったのだと思います。

確かに、この気持ちは一定理解出来ますし、一理有ると思うのですが、「人生100年時代」というフレーズが一人歩きし、全く違った方向性の話が展開されることが懸念されます。冒頭に示したように、100年生きることだけが目的化されると話がややこしくなります。ひとまず、国の思惑を探る話を続けたいと思います。

GDP成長率とは別に「潜在成長率」というのがあります。これは、全ての生産資源が使われた時に中長期的にどれくらいのGDP成長が可能かを示したものです。潜在成長率は、設備などの資本、労働力、生産性の3要素から算定される指標です。詳しくは内閣府ホームページなどに実際の数字が公開されていますので、ご確認をお願いします。

私からすれば、潜在成長率は低成長な先進国を慰める数字です。低成長だけど、まだまだ伸び代がある、と言いたいのです。しかし、本当の経済成長に繋げる為には、その使い方が重要で、無邪気に労働投入を増やすことで、数字を上げるだけでは意味がありません。労働量を増やす事で確かに数字は作れるのですが、実体として生産性が下がってしまうのが見え見えです。

従って、私は稼働資本量と生産性を高めることが本質的な対策だと考えております。これは魔法のように労働量が増えた場合、さらに生産量を増やす事になります。生産性を高めるには資本投資が必要です。資本とは利潤を生み出す機械設備やソフトウェアの事です。そして、この資本が労働生産性を向上させるように使われる事(稼働率を上げる)が重要です。

ではどのようにアプローチすれば良いのでしょうか?

使える資本と生産性を増やすには、合理性と創造性の双方が重要となります。つまり右脳と左脳の両方を使う事が重要です。経済成長が問題なので、ここでいう合理性は資本の論理に沿ったものを言います。そして創造性は、時として資本の論理さえも超越し、結果的に生産性を上げるあらゆる要素を言います。創造性を高めるには「遊び心」が大きな役割を果たすと思います。

「遊び」とは何か。これを定義しておかねば「遊び心」を定義できません。その前に「生産」と「仕事」「趣味」の関係も整理しておく必要があります。「生産」は、国がGDPとして参入するアウトプットです。「仕事」は依頼人に対するモノやサービスの提供、「趣味」は依頼人なき活動全般です。「遊び」とはシステムがフルに機能を発揮する為に設けられた適切な余裕シロの事です。遊びがないシステムは疲労しやすく機能が長持ちしません。遊びは生産性を維持するために必要なものです。

遊び心は、この遊びを維持するためのマインドセットで、健全なシステムには予め埋め込まれる必要があります。遊びをどのように構成するか、これは各々のシステムや組織によって変わります。そして、遊び心の育み方も同じです。しかし、理想的には個々の構成要素の中にもフラクタル構造のように遊びがあり、遊び心が育まれるべきであると私は考えます。

組織やシステムには設立の目的と役割があり、刻々と変わる環境に合わせて破壊と創造が行われるものです。単に長く続くことが目的となってはいけません。長く続いた事はあくまで結果論であり、その過程が長続きに値するようなものでなければ意味がないと思います。俯瞰的に見ると分解と合成が絶えず行われているのが健全なシステムです。その観点ではシステムの範囲の捉え方が重要です。

国にしてみれば、システムの範囲は国境ということになります。この国境の中にいる一人ひとりに遊びと遊び心が備わっていて、時に結びつき組織化したり、時に一人で様々な組織と結びついたりしながら生産性の高い経済を回す事が重要です。人生100年時代と言ってみても、生産年齢を引き上げてみても、結局は、生産が伸びなければ意味がありません。

人生設計における遊びと遊び心という視点も大事だと思います。生産に関わる時期、関わらない時期を自在に組み立てて、生き生きとした人生を主体的にデザイン出来れば、長生きしなくとも充実した人生が送れると思いますし、結果的に長生きが出来るかもしれません。

「人生100年時代」をキャッチフレーズとするのが、この目的に沿うのかどうか分かりませんが、
遊び抜きの人生100年は、息が詰まってしまいます。遊び心で、システムを回して、人の流れやお金の流れをよくして、新陳代謝を促進する事が生産性を上げることに繋がる筈です。乱暴な話ですが、システムが健全に回っていれば、自然と生産性は上がる筈です。結果として創造性が高まった状態を実感する事が出来るでしょう。

その鍵が遊びであり、遊び心なのです。遊びは合理性の枠外にあるので、安易に評価や報酬と結び付けてはいけないものではないかと思っています。どんなに組織が立派になっても遊び心を失わない事に注意を払う創意工夫が創造性の実体かもしれません。

取り止めのない話となってしまいましたが、ご一読ありがとうございました。

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