見出し画像

近年のコラボレーションツールはデザイナーの役割をどう変えているのか

本記事は北欧のデザインメディア「DeMagSign」の公式翻訳記事です。
元記事はこちら:How New Collaboration Tools Are Changing the Role of the Designer

Rahul Lindberg Sen氏はVolvo Cars LabsのUX & Research部門の責任者です。Rahul氏は彼のチームと共に未来のイノベーションに焦点を当て、まだ存在しない望ましい製品を創造するために組織の外で考えています。Design Matters 17で彼は失敗を受け入れることがいかに極めて建設的であるかを説明しました。それ以来、彼は世界中のマネージャーやデザイナーに講演でひらめきを与えてきました。

私たちは再びRahul氏と会い、コラボレーションのための新しいツールが組織に継続的に導入される中で、デザイナーの役割がどのように進化しているかについて議論しました。またチームの全員が同じページにいることを確認する方法も学ぶことができました。

──コラボレーションと実践に関連して、デザイナーの将来の役割をどう見ていますか?

デザイナー、ビジネス開発者、エンジニアなど、さまざまな分野の人々が同じファイルで共同作業を行っています。現在、デザイナーの役割の1つは、より協調的で参加型のプロセスを可能にするためのガイドライン、ツール、構造を作成することです。私たちはまた、デザイナーが古来から持つ「シンセサイザー(=統合する人)」という役割がいかにますます明らかになっているのを感じています。

デザイナーの仕事は、皆がさまざまな楽器を演奏するオーケストラの指揮者のようになりつつあります。デザイナーたちは、さまざまな視点を調和のとれた方法で組み合わせようとしています。

画像2
引用:Giphy.com

──全員が同じファイルで作業する中で、作成するものの一貫性を維持するにはどのようにすれば良いでしょうか?

Labsでは、「プロセスプレイブック」というものを利用しようとしています。これは、世界の未来を探求し、まだ存在しないサービスや概念について考える際に役立つ一般的な方法です。そのために、さまざまなスキルを持った人々が集まり、私たちが存在すら知らない将来の問題を解決しようとしています。

MiroやFigmaのようなオンラインのコラボレーションツールを使って作業する場合、構造がなければ、基本的には無限のコラボレーティブデジタルホワイトボードになります。デザイナーの仕事は、誰もが持っているアイデアを、その創造性からある種の一貫性と感覚を生みだすことです。

近年ではデザイナーの仕事は更に進化しており、アイデアやモデルを他の人と共有し、他人が理解できる方法で取り込み、理解し、コミュニケーションすることまでを含みます。あなたの頭の中にあるものを、他の人に伝えられるように表現するにはどうすればいいでしょうか? これがデザイナーの共同作業の役割です。Volvoでは、プレイブックをテンプレートに変換し、誰もが同じ種類のツールを使って同じ言語を話せるようにしました。

画像3

──多くの異なる分野出身のメンバー間で作業するとき、デザイナーにとって最大の課題は何ですか?

先ほど述べた通り、デザイナーの役割は急速に変化しています。かつては、デザイナーがデザインを行い、そして数週間後に戻ってきて、ステークホルダーに作品を発表していました。彼らはフィードバックを受け取り、戻って修正をする時間を得ます。現在、私たちが直面している課題はデザイナー、エンジニア、プロダクトオーナー、ステークホルダーの間の境界線がぼやけていることです。

リアルタイムでデザインを作成する場合、コンテンツは常に編集、共有、コメント、プレゼンテーションが可能です。作業内容はリアルタイムで編集および議論されるため、議論の目的を考え、意図しないものではなく議論の設計を開始することが非常に重要です。

──デザイナーは、デザイン以外にも対話自体を管理する必要があるということでしょうか?

そうです。私たちデザイナーは今日(こんにち)遊びのように使える道具がたくさんある故に、物事が複雑化されていく傾向があります。明確な意思決定のポイントがなく、プロセスに参加するすべての人がすべてを一度に見てしまうため、議論はますます希薄になりがちです。

このため、議論自体をどのように展開するかについて、より段階的に近づけることを検討するようチームに依頼しています。私たちは、すべての体験を一度にデザインしようとしているのではなく、アイデアの核心にすばやく到達し、それを議論の焦点にしたいのです。基本的な合意とそれに対する批判が得られれば、私たちさらにより良いアイデアを広げ始めることができます。

私は、デザイナーたちがツールに振り回されないように微妙なバランスを取る必要があると思っています。実際に、ツールを使うのは私たちであるべきです。

画像4

──気に入っているコラボレーションツールはありますか?

SketchとInvisionには本当に魅了されていますが、私が一番古くから気に入っているのはGoogle Docsです。単純なWordファイルであれば、誰もが単語を書いて参加し始めることができるため、戸惑う人も少ないでしょう。そうすることで、ピクセルや線の高さなどに夢中になる前に会話を管理できるようになります。頭をすっきりさせたいときは、単純なメモ帳やGoogleドキュメントを開いて、ソフトウェアに夢中になる前に何かを書き始めるだけです。言葉は私の最大のデザインツールです。

──コラボレーションの設計に関して、デザイナーが考える最も重要なことは何だと思いますか?

かつてはデザインが舞台の主役だと思われていましたが、UIとUXの言葉で言えば、コラボレーションが舞台になりつつあります。デザイナーの仕事は、適切なステージとセットを設計することです。デザイナーは美しく、便利で、楽しい経験をすることに長けている必要があると思いますが、私たちの仕事はますます、適切な人たちを適切なタイミングで集め、協力して行動することです。

デザインは今、誰もが対話できる空間を作っていますが、私たちはそのような場でのトレーニングを受けていませんので進みながら試行錯誤していくしかありません。私の仕事の一部は、会社が早期に失敗をして、そこから学ぶのを助けることです。現代では、作成したものはすべて即座に公開され、このようなコラボレーションツールのおかげなのですが、反面、以前のような密な対話ができなくなっているという危機感もあります。

誰もが自分のスキルセットを活かし、誰もがエンパワーメントされ、適切な人が適切なストーリーを紡げるようにすることが私たちの挑戦です。それには個々人の貢献よりも、「シンセサイザー(統合する人)」であることが大事なのです。

画像5
引用:Volvo Cars

──同じ画面で作業してすぐにフィードバックを得ることができるようになったので、私たちだけがアーティストではなくなりました。この変更についてどう思いますか?

専門家がベストを尽くすための時間と空間を与えることに一定の価値があった過去のある側面について、少し懐かしく思います。製品の品質は、本当に深く考えたり、自分の技巧に集中したりできるようになると、いつも違ったレベルになります。

同じ目標に向かって、同じレベルの技術で仕事をするために、コーヒー、キャンディ、マーカーを持って、同じ趣味を持つ人たちと同じ部屋にいることの喜びは、かけがえのないものです。私たちが作っているものは拡張性のある世界や、デジタル化、高速化、民主化された世界を支援するためにそのかけがえのないものを再現しようとしますが、それには大きな代償があります。私が心配しているのは、私たちが作っている技巧の質が変わるかもしれないということです。うまくいくことを願っていますが、テンプレートや標準化のためにすべてを単純化しすぎてしまうのではないかと心配しています。

──Design Matters 19でのあなたのテーマ「メンバー間で共通認識を持てているか?」について少し教えてください。

4万人の従業員を抱えるわれわれのような大企業で、今すぐ取り上げるべき非常に関連性の高いトピックだと思っています。最終的な成果物よりも、コラボレーションと対話が重要です。ほとんどの大規模な組織では、「誰がこれに取り組んでいるのか?」「何故私たちではないのか?」「協力しあうべきなのではないか?」「私たちは別の方向に向かっているのではないか?」などと尋ねることがよくあります。

ここ数年私が関わってきたほとんどの企業は、常に同じ課題に直面していました。全員がお互いに何を求めあっているのか理解しているのでしょうか? 全員がそれを念頭に不確実性に向かって進むことができるでしょうか? 全員にSlackやFigmaを使わせることが、まさに私たちがVolvo Carsで試していることです。半年も対話せずにいた結果、複数のチームがまったく同じアイデアを持っていたことをあとで知る、なんてことはごめんですからね。

Written by Giorgia Lombardo (Design Matters)
Translated brought to you by Flying Penguins Inc. 🐧

・・・

画像1

Design Matters Tokyo 2022が来年5月に開催

Design Matters Tokyoは世界のデザイントレンドが学べる、コペンハーゲン発のデザインカンファレンスです。次回は2022年5月14日-15日に開催予定です。GoogleやTwitter、LEGOなどのグローバル企業はもちろん、今年はWhatever、みんなの銀行など国内のデザイナーも登壇予定です。イベントに関する情報はSNSを中心に発信していきますので是非フォローください(カンファレンス参加しない方も大歓迎です)。

👇Design Matters Tokyo 22の情報はこちらから
Twitter / Facebook / Newsletter

・・・

※本記事は当note開設の際に、以前UX MILK様に掲載していたものを再編集・移行したものになります

いいなと思ったら応援しよう!