ビジネス出身者がデザイン思考でプロダクトづくりをして感じた、ビジネスとデザインの違いや共通点
この記事は、2019年1月18日に執筆されたものです
みなさんこんにちは。クラウドワークス社が運営するプロダクト「フィークル」の事業責任者をしている増田です。
ビジネス出身者である僕がデザイン思考でプロダクト作りをした体験を通して学んだことをお話したいと思います。
デザイン思考によるプロダクト作りを体験する前までは、同じ部署にいたとしてもビジネスの人からは、プロダクト開発のことはわかりにくくブラックボックスになっていました。(そもそもデザインと言う単語にもたどり着かない可能性もある)そして、デザイナーの人からも同様にビジネスの人の頭の中はよくわからないんではないでしょうか。
そこで今回は、僕がたまたまビジネス出身からプロダクトづくりにハマり、デザイン思考までたどり着く事ができたので、その体験の内容と感じたビジネスとデザインの考え方の違いや共通点について書いていきます。
ビジネス出身者がデザイン思考を習得するときや、ビジネス文化が強い会社でデザイン思考の良さを広めたいというシーンがあるのであれば、少しでも参考になれば嬉しいです。
まず軽く自己紹介を
ITコンサルの企業に新卒で入社し、その後クラウドワークス社に転職して5年目になります。その中で3年間、企業の業務課題をクラウドソーシングによって解決する事業部におりました。そこでは、営業と業務コンサルとしてお客様に向き合ってきました。
やってきたことは、業務設計が得意だったので実業務に加えて業務コンサルタントが業務設計する際の型化、同事業部の費用最適化に関する企画と実行が中心になります。
そのため身についたスキルとしては、論理的思考、定量的思考、プロジェクトマネジメントみたいなものになり、それを武器として戦ってきた感じです。
なぜデザイン思考に出会ったか
非プロダクト系の事業にどっぷりだったのですが、ある日突然新規事業の構想に事業責任者としてジョインすることになったことが事の発端です。このとき会社からの期待は、ビジネススキームの構築や事業戦略、業績責任が中心でしたが、なんとなくプロダクトの作り方を理解して自分の手で作ることがしたいなと思っていました。逆にそうしないと愛着が湧かないので、絶対にいいものが生まれないとも思っていました。作るプロダクトは「フィークル」という、フリーランスの人を対象として支払い保証のサービスです。
業務委託契約の報酬を受取る権利(売掛債権)を弊社が買い取り、報酬相当分を弊社から先にお支払する。その後クライアントに向けて弊社から請求を行う。といった仕組みのもので日本ではまだ個人を対象にしたサービスはありませんでした。
そのため、プロダクト全体の設計をベンチマークできるような別サービスがなく、またフリーランスの人たちに何と言って紹介していいかわからないところからのスタートでした。まさに自分たちで提供価値を定義してプロダクトを作っていく、デザイン思考が必要な状況でした。
何をやったか
まずは本を3冊読みました。
1. デザイン思考が世界を変える
2. デザイン思考と経営戦略
3. 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
個人的には、「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」が始めはしっくり理解しやすかったです。ビジネス書のように体系化されていて、また事例や説明の仕方もビジネスと共通点があり、すらすら読むことができました。
ここでの僕の理解では、デザイン思考とは、
・課題仮説をユーザーの行動分析で絞り込み、解決法仮説に落とす
・解決法仮説からプロトタイプを作ってユーザーに使ってもらい、フィードバックをもらう
・フィードバックからプロトタイプを改善、それをまた使ってもらう
・それを繰り返して最終プロトタイプまでブラッシュアップし続ける
ものという感じでした。
デザイン思考でプロダクトを作ることが始まった
「クラウドワークス」から卒業して自身で案件を受けているフリーランスをペルソナとした
※サービスとしての「クラウドワークス」:仕事と働き手のマッチングプラットフォームです
「クラウドワークス」上ではエスクローやクイック出金の仕組みがあるが、個別で契約している場合は支払期日の交渉や請求業務を自分で行う必要があります。そこにフリーランスにとって、キャッシュフローや不払いに対する心配事があると仮説しました。
仮説をユーザーインタビューで検証した
お話を聞くユーザーの属性や置かれた環境を聞いた上で、自分たちが考えた仮説どおりにユーザーも考え、感じて行動しているかを検証するところ。
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ビジネスに置き換えると営業の商談のようなものと感じた。その場では売り込まないが、ヒアリングして仮説を検証してからマーケをかけるので、営業でいうと提案前の初期ヒアリングに近いなと思った。
サービスブループリントを作成した
一定の検証ができた課題仮説を持ったユーザーがプロダクトに入ってきたときに、どんな期待を持ってプロダクトを触り、どの部分で不安や満足を感じるかを見える化しました。それとともにプロダクトがどのタイミングでユーザーに何を求め、何を提供するか、また提供物をどのように用意するかをあわせて見える化することで、ユーザーが期待してくれたことに応えられる仕様に落としていきました。この両方をひとつのシートにマッピングし、サービス全体の構造を一覧できるようにしたものをサービスブループリントと言います。
※詳しくは「フィークル」のUXデザイナー八尾さんのブログ
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これは、ビジネスで言うところの業務フロー図に似ているなと感じました。ヒト・モノ・カネの流れと次のステップに移る条件を見える化して業務を構築することがあります。また、マーケティングにおけるファネル分析にも使うことができると感じました。例えば、ユーザーが不安な感情を持つ可能性があるステップで、離脱を想定することが可能でその離脱を考慮した仮のファネルを置くことにも使えるなと。マーケ施策結果に対する原因仮説を立てる引き出しが増えるなと感じました。
最後に仕様を決めて開発スプリントに落とした
やった結果思ったこと
ビジネスでも近しいことをやっている
名前、分析対象、分析の切り口の違いはあるものの、顧客へのヒアリング、プロセス分解など似ている部分は多いなという感覚が強かった。だから、ビジネスの人でもデザイン思考を全然理解できないことはないと感じました。ビジネスの人には、言葉を変えて説明してあげると良いと思います。
定量化の要素はデザイン思考だけでは足りない
一方でビジネスの人から見ると業績の観点や定量化の要素までは、デザイン思考だけだと足りない部分があると思います。サービスブループリントにファネル分析をくっつけるように、デザイン思考の成果物にマーケティング分析手法を組み合わせると事業運営とプロダクトデザインを直結して考える事ができると感じました。
全体を通して
ビジネス的アプローチでは市場の大きさ、競合存在、そことの差分から切り込み、細かいところまで細分化していきますが、デザイン思考では方向が逆のアプローチでユーザー個人のインサイトから事業全体を定義していくイメージが強かったです。
もちろんデザイン思考で考えたプロダクトも市場性は評価していく必要はありますし、ビジネス分析で切り込んだあとはユーザーインサイトに注目してそこからプロダクトを考える必要を強く感じました。
つまり、デザイン思考とビジネス思考の両方ができないと、今後いいプロダクト(事業)は作れなくなっていくんだろうな、というのが個人的な危機感を伴った感想です。
僕個人としては、今後もデザイン思考とビジネス思考を学び実践し続けることで二刀流を目指していこうと思う体験になりました。
最後まで読んで頂きありがとうございます!クラウドワークスにはデザインとビジネスがタッグを組んでプロダクトを作れる環境があります。そんなクラウドワークスに興味がある方、またビジネス出身の僕にデザインを叩き込んでくれる方(笑)、一度お話させてください!