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カタチからはじめないデザイン
デザイナーにはデザインを作るとき、様々なアプローチ、プロセスがあると思います。また正解も不正解もないでしょう。今回は、大事にしているデザインてとての「デザイン制作の入り口」を紹介します。
依頼する側にとっても、制作する側にとっても何か参考になればと思います。
また、デザインを依頼する時の心配事として「どう頼んでいいか分からない」というのは、かなり大きな割合を占めているのではないでしょうか?
デザインを頼むのだから、明確なイメージを伝えないきゃいけない、ということは決してありません。デザイナーのアプローチから少しでもデザインを身近に感じてもらえたら嬉しいです。
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向き合う土台をつくる
様々な制作物の依頼や相談を受けますが、どんな場合でも白紙、全てゼロからはじめます。デザインを行う上で一番怖いのは先入観だと考えています。それは依頼されたデザインのみを対象としたものはなく、依頼そのものも含めてです。
化粧品は化粧品らしく、おもちゃはおもちゃらしく、お酒はお酒らしく。「らしさ」はとても大事な要素ですが、そこから入ってしまうとアイデアを広げるのはなかなか難しい。また、実績を積んだデザイナーだとそれっぽくつくることは割とできてしまいます。問題は完成したデザインに奥行きが出にくい、簡単に言えば何かを模倣した、また類似したデザインが出来やすいということです。
つくらない、からはじめる
ゼロからと言っても、なかなか難しい。おそらく完全にはできません。
大事なのはつくらないこと、ひとまず作成ツールから離れる、参考資料からも離れる。視覚からはいる情報はひとまず遮断。
デザイナーとして、どうしても手を動かしだすとそのまま作りはじめてしまったり、慣れた線をなぞってしまうのでそのきっかけをできるだけ遠ざけたいのです。参考資料も同じように、すぐにインプットしてしまうとなかなかそのイメージから離れづらい。
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アプローチは言葉から
じゃあ、何から始めるの?ということですが、デザインてとての場合、白紙とペンを用意して、制作物やクライアントの依頼・課題に対し思いつくまま「言葉」を書いていきます。短い単語でも文章でも構いません。
制作物に対してとにかく思いつくまま書く。関係なさそうなものでひとまず書く。あらいざらい書く。
連想ゲームにも似た作業ですが、言葉同士が結びつかない直感的に浮かんだものを入れていくことでよりイメージの幅を広げることにつながります。
PCやスマホのメモ機能などのアプリを使ってもいいのですが、できるだけ慣れている方法が考えたことをダイレクトにアウトプットできるのでそうしています。
机に向かって書いて行き詰まったら、散歩したり、他のことをしたり、ふと何か浮かぶたびにメモを取るようにしています。
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言葉のメリット
クライアントがイメージやデザインのみを提案された時、良い時も悪い時もデザイナーに対してどう伝えていいのか悩んでいる場面をよく見かけます。おそらく「なんかよさそう」「なんかちがう」という漠然とした気持ちではないでしょうか。おそらく判断基準の共有がないのが1つの原因です。
「デザイナーを信じてお任せします!」も嬉しいですが、あまりそういう場面に遭遇したことがありません。
共有する部分がないとお互いの思い込みだけになるので、なかなか建設的なコミュニケーションは難しい。イメージやデザインに加え、それまで浮かんだ言葉やキーワードを添えると、判断基準として共有でき、その後のコミュニケーションが円滑にすることができます。
たとえば悪い時、キーワードは制作物に沿っているけど、デザインが合ってないようにみえる。キーワードがそもそもずれている。
良い時であれば、提案したキーワードからさらに踏み込んだアイデアをクライアント自身から引き出すこともあります。
いきなりイメージやデザインで、クライアントとの意思疎通ができればもちろんでベストですが、それも少しづつ信用をつないだ結果だと思います。
また信用をつなぐ手段としても「言葉」からのアプローチは有効です。
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最後に
デザインのアプローチとして今回は「言葉」を取り上げてみました。
ただ、時間も毎回じっくりと考えるほど潤沢にあるわけでもありません。また相談いただいた時のひらめき、アイデアを信じそのまま最後まで制作することもあります。言葉から始めるとロジカルにデザインを構築していきがちですが必ずしもそれが正しいわけではありません。ただ好きという直感も大事だと思います。
正解はありませんが、デザイナーにとってもクライアントにとっても自身にあったスタイルで取り組んでもらえたらと思います。
アイデアもデザインも、魔法のように湧いてはきてくれません。湧いてくれるようにデザイナー自身が取り組んでいます。作る手前の「考える」は依頼する側と同じように必要なステップとして外せないのです。
はっきりとした制作物への取り組みももちろんですが、制作物のイメージが固まらなくても柔軟に捉え、それを一緒に考えるのもデザイナーとしての役割だと考えています。
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言葉の選び方やコンセプトの作り方などはまた別の機会に書いてみようと思います。
最後までご拝読ありがとうございます!
デザインてとて、でした。
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さいたまのデザイン制作室、デザインてとて です。
デザインを通して、ひと・もの・ことの「て」と「て」をつないでいきます。ロゴやチラシをはじめ、デザインに関するご依頼やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。