突然パンフレット作りを任された医療従事者に捧ぐ、患者さん説明パンフレットデザインの基礎完全版!【作例ダウンロード有】
こんにちは、むん(@designlab_sou)です。
今回は病院などで役立つ、高齢者の身体的特徴にもとづくデザインについてお話します。
しっかりと作りこんだため、なかなかのボリュームになってしまいました。
解説、実践ともに充実しているため、休日や時間がある時などに実際にパワーポイントを開きながらゆっくり取り組んでみてください。
0. まえおき
「病院でパンフレット作りを任されたけど、デザインなんてやったことがないのに、どう作ればいいかわからない!」
「この制度、複雑すぎて説明しても理解してもらえない。わかりやすくするにはどんな資料を作ればいいの?」
医療機関に勤めていると、こんな悩みをもつ外来看護師さんや、医事課スタッフさんの声をよく聞きます。
病院のスタッフは基本的にみな業務独占のある専門職で、パンフレットデザインの専門家を抱えている医療機関など、ごくわずかです。
そこで今回は、デザイン初心者の方でも患者説明用パンフレットの基本形が作れるよう、PowerPointを使用したデザインの”いろは”について解説していきます。
ひな型になるオリジナルテンプレートもダウンロードできますので、ぜひ活用して時短してください!
本記事のターゲットはこのような方です。
上記のような方は、本記事を読んでいただくことで、さっそく明日の業務から実践できるようなデザインの”いろは”を習得していただけると思います!
ですがデザイン初心者にとっては
「いきなりデザインのやり方から説明されても、まず用語の意味もわからない」
「デザインができるような高いソフトは持ってないよ!」
という方もいらっしゃるかとおもいます。
なのでこの記事では、
ツールは大半の医療機関にあるMicrosoft PowerPointを使用。
基本的なソフトの使い方や用語も詳しく解説。
の2点を守って説明していこうと思います。
自己紹介
ちなみにこれを書いている私「むん」はこんな人です。デザインについて知りたい方にとっては不要かと思いますので、画面を1スクロールして読み飛ばしてください。
急性期病院の看護師として周術期関連で7年勤務。
現在は病院のインハウスデザイナーとしてブランディングや採用広報、映像、写真、画像、冊子、WEBなど、コンテンツを問わず幅広いデザイン全般を担当しています。
臨床よりも業務改善活動が好きすぎて、現場で頑張る人たちをサポートする仕事に就きたいと思っていました。
それでは本題です!
長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。
1. デザイン初心者が陥りやすい罠
まず初めに、はじめてパンフレット作りを任された初心者さんがよくやってしまう失敗例をいくつかご紹介します。
このNGポイントを注意していくだけで、まず最低限の見やすさは保たれますので、一つずつ確認していきましょう!
1-1. 内容を詰め込みすぎてしまう
これは我々医療専門職の方にありがちな傾向なんですが、こういった職種の方は患者さんに
「より良い治療を提供したい」
「後悔されないように、できるだけ詳しく説明してあげたい」
といった思いで仕事をされている方がほとんどです。
それ自体はとてもいい心がけなのですが、行き過ぎるとパンフレットやチラシデザイン時に陥りやすい罠の一つになってしまいます!
なぜなら、
デザインは引き算が原則。
基本的には「シンプルに」を追求することで、わかりやすく簡略化されていきます。
ここでまず「究極の説明資料は、究極にシンプルである」と頭に叩き込んでください。
また、この失敗は相手に実施してほしい事が明確になっていないことで起こりやすいです。
自分たちが伝えたい情報は、患者さんにとってマストで知らなければならない情報なのか、それとも次のステップまでに分かっていればよいのかなど、情報が押し付けになっていないかを常に考えながら盛り込みましょう。
(ただし、十分な説明がされないというのとイコールにはならないように注意しましょう。)
パンフレットやチラシはいつでも見返してもらえる導入編として位置づけ、個々の状況に配慮した詳細な資料とは区別するべきです。
1-2. 専門用語を嚙み砕ききれていない
医療従事者にとっての医療用語は、日本人が日本語を話すがごとく日常的なものです。そしてそれほど使い慣れた用語は、得てして無意識に使用してしまいます。
たとえば医療従事者のみなさんは「クリニカルパス」という言葉の意味を考えたことがあるでしょうか?
治療の進捗を医療者と患者さんの間で共有したり、管理するうえで欠かせない機能で、今どきの急性期病院では必ずといってよいほど存在する「パス」ですが、患者さんにお渡しする資料として使うのであれば「入院の計画書」や「治療の目標共有シート」といった具合に、一般的でなおかつ簡単な日本語に言い換えなければなりません。
医療従事者にとっては息をするように出てくる言葉であっても、一般の方にとってはあいまいな状態で使われていたり、よく意味を理解されないまま疑問をスルーしてしまっていることは頻繁にあります。
また、私たちが伝えなければならない対象が義務教育を受けているとは限りませんし、そもそも日本語をあまり知らない方かもしれません。
さまざまなパターンを想定し、誰もが直感的に理解できるデザインを作るにはどのようにすれば良いのでしょうか?
後ほど詳しく解説します。
1-3. 良かれと思い、色を他用してしまう
上の二つは内容に関するNG例でしたが、ここからはデザインに関しての例をいくつかご紹介します。
失敗例としてもっとも多く、かつ、学んですぐに実行できるのは「色づかい」です。
私たちが暮らす日常生活にはさまざまな色があり、その色には意味が込められています。
「意味が込められている」というとスピリチュアル感がありますし、中には実際そういったものもありますが、商業目的でデザインされている媒体の多くは科学的根拠に基づいた色の選択をされています。
たとえば「医療機関の雰囲気に合わせたクリーンな雰囲気を感じさせる色」というのは何となく想像がつくと思いますが、他にも「買い物をしやすくなる色」や「YesとNoの二択でYesを押しやすくする色」などがあり、巧妙に配色されています。
これを意識して使えるのと、そうでないのでは伝わりやすさや、達成率が大きく変わってきます。
また、医療機関では商業的な配色だけではなく、目の不自由な人に向けた配色にも注意しなければなりません。
これらを考えず、思いつくままに(もしくは上司・先生に言われるままに)色を入れていくと、見た目も悪く、患者さんの理解を妨げることになりかねません。
印刷機の使用についても考慮が必要かもしれません。
サービスの料金設定が自由にできない医療機関では、あらゆるところで節約志向です。カラーで自由に印刷できるプリンターは限られているという施設も多いですよね。
はたしてそのデザインは、モノクロ印刷に耐えられるでしょうか?
1-4. 写真や図形の形が縦や横に変形している
続いても、あまりパソコンに詳しくない方がよくやってしまう失敗を紹介します。
写真や図形の縦と横の比率のことを「アスペクト比(アス比)」といいますが、このアスペクト比は意図した場合を除いて、基本的に変更してはなりません。
たとえば患者さんに対して、橈骨遠位端骨折に対するプレーティング(手首の骨折に対する金属板を使用した補強手術)を説明するとして、このような図を使用して良いでしょうか。
もしくは、眼瞼下垂症に対する手術前後のイメージを伝えたいのに、以下のようなゆがんだ図の使用は適切でしょうか。
このような図を使用してしまうと、患者さんに医療者側の説明意図が正しく伝わらない可能性があるだけでなく、顔面などの露出部にかかわるような治療では、術後容姿を患者に誤認させたとして医療訴訟のリスクもあります。
1-5. 使用権(ライセンス)を持っていない素材をつかう
最も注意しておかなくてはならないのが素材の使用権です。
一般企業と違い医療機関ではあまり意識していないかもしれませんが、医業も商用利用に該当します。
ネットで調べるといろんなイラストや写真といった素材が出てきますが、これらにはすべて権利者が存在します。
たとえばイラストであれば「著作権」、写真であれば「肖像権」があり、これらは権利者が申告することで効果を発揮する権利です。
もし無断で素材を使用した場合、権利者に権利を行使されることで民法や刑法によって裁かれ、罪に問われる可能性があります。
そうならないためにも、素材は素材配布サイトから選び、かつ各サイトが定める利用規約を守って使用しましょう。
後ほど医療者が使いやすい、おすすめの素材配布サイトをいくつか紹介します。
以上、4つの基本的な注意点を並べました。
それではここからは実際に、上記の4点に注意しながらChatGPTに準備してもらったサンプル事例のパンフレットを作成してみようと思います。
サンプルのパワポデータを添付していますので、ダウンロードして自由に改変してご利用ください!
病院ではほかにもいろんな資料のバリエーションがあるかと思いますので、今後も少しずつ増やしていきます!
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