外字のメリットとデメリット
フォントざっくり解説⑯
フォントに興味はあるけれど細かい事が不安で何となく購入に至ってない方、仕事で入手する必要ができてしまったけどイマイチ選び方に自信がない方のための、ざっくり解説。
厳密すぎる説明で途方に暮れてしまわないよう、選ぶ・買うのに必要な知識を、ほどほどに端折りながら解説します。
※2017年4月時点の情報です。
JISやUnicodeなど公の規格に定義されておらず、各メーカーが独自に搭載した文字のことを「外字」と呼びます。
日本語フォントの場合は特に、苗字に使われる珍しい漢字を表現するために外字が重宝されていた時期が長く続きました。ここでは、その便利さと注意点についてご紹介します。
印刷ニーズに応えるために重宝された外字フォント
コンピュータによる日本語処理が盛んになった1990年代、文字の規格のよりどころといえばJIS規格でしたが、この規格では「小さなデザイン違いと見なされた文字 (例:はしご高・立ち崎)」「複数の文字を組み合わせれば何とかなる文字 (例:丸囲み数字、ローマ数字、単位記号)」などの多くは省略され、規格から漏れていました。
また、漢字についても、伝統的な字形の漢字よりも略字風の漢字が多く採用され、従来の金属活字との違いが目立っていました。
金属活字では便利に使えていたこれらの文字に対するニーズは大きく、いくつかのフォントメーカーは独自にこれらの文字を「外字」として追加収録したり、「外字」だけのフォントを発売することになりました。
※はしご高・立ち崎などWindowsで「漢字3」と区分されている漢字や丸囲み数字なども元々は「IBMが決めた外字」に過ぎず、Windows以外の環境では文字化けするのが当たり前でした。(ただし現在ではその多くがUnicode規格として取り入れられ、Macなどでも安全に使用できる環境が増えています)
公の規格にとらわれずメーカーがいわば勝手に選定し独自の並び順で収録したものですので、当然、他社フォントなどとの互換性は期待できません。便利な反面、そのフォントを搭載していない環境で使うと表示されなかったり、違う文字で表示されたりしてしまいます。
「外字ってギザギザしてるやつでしょ?」と思った方へ
Windowsをお使いの人であれば、「外字エディタ」を使い、自社ロゴなどを外字として作成した経験のある方もいらっしゃると思います。
市販の外字フォントが、このように自作した外字と同じものなのかというと、そんなことはありません。
外字エディタで自作した外字が「点の集まり」であるのに対し、市販の外字フォントは一般的なかなや漢字と同じく「アウトライン」と呼ばれる輪郭線により文字が形作られており、両者の表現力には大きな差があります。
名前こそ同じ「外字」ですが、ギザギザする自作の外字とは技術的に全く異なり、拡大してもその輪郭は滑らかなままに保たれるようになっています。
現在の外字フォント製品は、人名漢字に特化したものが主流
苗字に関しては極めて珍しい字形の漢字が多く、今でも人名に特化した人名専用の外字フォント製品が何種類も発売されています。
現在広く普及しつつあるUnicodeでは、当初のJIS規格に含まれなかった多くの漢字・飾り文字が取り入れられ、外字フォントでなければ表現できない文字は以前よりも少なくなっていますが、残念ながら「あの人名漢字を使うためにはどのフォントを買えばいいのか」の分類は単純でなく、なかなか分かりづらいものがあります。
共有文書やメールには不向き、自分で印刷するなら問題なし
これまで紹介したように、外字フォントはその同じフォントを使っている環境以外では意図通りに利用できません。
メール内の文章に使ったり、共有または第三者に配布するような文書ファイルに使う場合は相手側で文字化けしている可能性が高く、注意が必要です。
一方「自分のパソコンで作成して紙に印刷する」という目的であれば問題なく利用できます。パーソナルな年賀状・賞状など、受け取る相手に礼を尽くしたい場合には魅力的な商品と言えるでしょう。