21世紀 アメリカ発世界恐慌は起きるか
元総務省顧問であり、元ゴールドマン・サックス投信株式会社代表取締役社長の山崎養世(やまざきやすよ)さんの著書『21世紀型大恐慌』を拝読したので簡単にまとめさせていただきます。未来予測や資産運用における判断材料の一つとしていただけると幸いです。
今、マーケットの大半を占める意見
「FRBの資金供給が景気を支えているのだから逆らわない方がいい」
「アメリカの経済は強く、景気のいい状況は今後も続き、株価はまだまだ上がる」
財政赤字、国債大量発行という事態を理解しているものの、アメリカの信用は揺らがないという意見が大半です。
リーマンショックは世界大恐慌にならなかったけど、今回は危ない理由
次に、これに反して筆者が恐慌になると予測する要因を 4つ挙げています。
①リーマンショック時は株価の暴落が、短期間で収束したが(約3日間)、今回のコロナのパンデミックは長期化する可能性がある。その間財政赤字が続くためツケが回ってくる。
②下記グラフの通り、株価が下がると同時に金融緩和を行うことでマーケットを刺激することができたが、今回はすでに最低金利のため、これ以上金利での市場操作ができない。
③リーマンショック時は中国が57兆円の景気対策を行うなど、国債協調という安全装置が働いたが、トランプ政権でのアメリカ・ファーストの姿勢では協調体制を取りずらい。
→こちらはバイデン政権になったことと、そもそも連鎖的な自国の被害を最小限に抑えようという意図の方が大きかったと考えられることから、それほど懸念にはならないと思います。
④MMT(modern monetary theory)=『"禁じ手"であるFRB(日本では日本銀行)が国債を買い支えるファイナンス財政』はドル需要が世界中にあること、日本は最大の債権国であることで概ね正しかったが、コロナ禍での財政悪化後ではアメリカの信用が失われ、この理論は通じないと考えられる。
恐慌はどう起こるか
国債の信用が揺らぎ、マーケット理論によって国債の価格が下がり、これに連動してドルの信用が下がり、金利が上昇し、国債・ドル・株のトリプル暴落が起こると筆者は予測しています。借金まみれの個人や企業が破産・破綻が起きると、連動して金融機関の破綻も起きるでしょう。筆者は株価が1/5まで下がると予測しています。
考えられる結論
・FRBの金利引き上げが2022年にも行われるとの予測が出ている。
↓
・株価の低下とともに加熱ぎみのアメリカIT関係株が暴落
・借金の金利上昇に伴う個人ローンの負担増と景気の大幅冷え込み
・不動産投資などの大幅抑制
↓
・アメリカの影響をもろに受けて日本も同じ状況に
コロナ禍前から最低だった金利で多くのお金が市場に出回っていた中で、コロナによる大量の国債発行による資金調達で、財政赤字がとんでもなく増えました。国債とはつまるところ「未来からの借入」になりますが、果たしてこの赤字を返せるのか?と思わずにはいられません。この不安が信用を揺るがし、世論がいつか傾いたとき、恐慌はやってきてしまいそうです。"禁じ手"を使い続けても問題ないのか?リスクゼロの国債発行は永劫続くのか?少なくとも持続可能な金融ではないので、いつか終わりは来るでしょう。
未来への希望
太陽光パネルには半導体が使われているため、ムーアの法則「半導体の集積度は18カ月ごとに倍増していく」が適応されます。すでにUAEでは1kw4円程度で発電ができており、今後大量生産にあたりさらに生産価格は下がり、それに伴い電気代に反映される単価も下がるでしょう。
筆者は電気代がほとんど無料に近づいていくと話しており、さらに自電車(自動運転の電気自動車)の普及に伴い、移動に制限がなくなると話しています。世界中が電気網で繋がることで、世界中の人々が電気を不自由なく使える未来を語っています。
無料にはならないまでも、火力発電より割りが良くなれば、当然太陽光発電が主流となりCO2の抑制に繋がります。
今日からできるアクション
将来の不安から、資本主義下での魅力的な投資案件は多くありますが、よくよく考えて投資するべきでしょう。特に不動産投資には金利上昇は大きな痛手となりますから注意が必要です。
東京都23区内では世帯数増加は2030年まで続きます、これはほとんど確実な未来です。これは地方からの人口流入と核家族化による世帯数増加によりもたらされます。確からしい情報から推測すれば、地方での不動産投資にはあまり手を出さない方がいいでしょう。
さらに、今後の太陽光発電の価格低下(パネルの性能上昇)は逆に投資のチャンスと捉えられると思います。そこにぜひ、短期的なキャピタルゲイン目的ではなく、長期的な地球環境への配慮(パネルが再利用できるか、メガソーラーが地域の環境を破壊していないか)を入れて、善意ある投資の姿勢が広く浸透すると良いと思います。