観戦記: 2024 J2 第10節 いわき vs 清水
第10節アウェイいわき戦のレビューを書いていこうと思います。写真は試合の前に立ち寄った三春の滝桜です。満開を迎えて、周りの菜の花と合わせて息を呑む美しさでした。
はじめに
まずはハイライトを見てください。
結果は非常に苦しい試合でしたが、2-3で清水の勝利。勝ち点3を獲得し、首位をキープすることができました。
一方で、昨季の9-1や7-1の勝利とは異なり、1点差で僅差で逃げ切る形。昨季からのいわきFCの成長を強く感じるような試合展開となりました。
試合のスタッツを見てください。
シュート数・枠内シュート数・パス成功数・CKの数・ボール支配率で上回れるという結果に。清水が常に先行する形で、ある程度ブロックを組んで守備的に戦ったこともありますが、それでもここまで清水が相手にボールを支配されるゲームは今季初めてでした。
ちなみに昨季のアウェイいわき戦は、1-7で清水は勝利しましたが、そのスタッツは以下の通りです。
パス成功数やボール支配率こそ互角ですが、シュート数は清水が大きく上回っていましたので、いわきFCが今季は善戦したことがよくわかりますね。
この試合は時間帯によって流れが明確にありました。①前半開始から清水の2得点、②いわきFCの反撃から1点返し、③前半終盤のいわきの猛攻、④後半苦しい中での清水の追加点、④いわきFCの粘りと後半最後の清水の5バックというイメージです。それぞれごとに書いていきたいと思います。
清水の狙い通りの2得点
前半のマッチアップは以下の通りでした。清水の4-2-3-1に対して、いわきは3-4-2-1。このシステムの違いが、試合の流れの変化を生み出していました。
前半7分と9分にどちらも北川選手の裏抜け出しからのアシストで、清水にゴールが生まれます。この2得点は、清水がいわき対策として狙った形でした。この辺り、清水の戦術班が良い仕事をしていることの証左ですね。
ゴールシーンを見てみましょう。
まず1点目、山原が深い位置から、いわきの右サイドのライン際に浮き球でのロングパス。ライン際にポジショニングしていた北川選手が、「テクい」トラップでボールを浮かして反転します。これでマークについていたいわきCBの照山選手を置き去りにして、左ニアゾーンに進入。落ち着いて中を見て、ブラガに左足でピンポイントのセンタリング。ブラガもニアからファーに進路を変えていわき大迫選手の死角に入って、フリーでニアサイドに押し込みます。このシーンでカルリがニアに走り込んで相手のCB2枚を引き連れている点も、ゴールに貢献していますね。すごくデザインされたゴールに見えました。
続いて2点目。中盤でセカンドボールを拾った宮本が、今度は右サイドで裏に抜けた北川に、浮き球のスルーパス。右ニアゾーンに進入した北川選手が、キックフェイントからの見事な切り返しで照山選手を滑らせて、ファーでフリーで待ち構えていた乾に優しいセンタリング。乾選手は押し込むだけでした。このシーンではカルリもPAマーク付近で待ち構えており、ここでも北川のクロスに対して2枚が待ち構える構造でした。1点目のゴールシーンと左右は違いますが、左右対称といっていいくらい似ていませんか?
北川選手の試合後のコメントを抜粋します。
試合前のスカウティングから、相手が前に仕掛けること、3バックの脇、ウイングバックの裏にスペースがあること、相手を食いつかせてからそこを狙えばチャンスがあることを、選手たちが共通理解をもっていたことがわかります。図でいうと以下のスペースを狙っていました。
この2得点は、その共通理解が生んだゴールだったんです。他にもいわきはマンマークであり、1枚剥がせば必ずフリーになる選手が生まれるという理解もあったように思います。
北川選手の1点目。これまでの試合で北川選手があそこまでライン際でボールを受けることはあまりなかったように思います。明らかにこの試合の対策として、「意図的に」あのポジションをとったことになります。その動きを見逃さなかった山原選手。そしてボールが来た際に、トラップが素晴らしかったのはそうなんですが、あれも、北川選手の中に「ここで1枚剥がして、裏に抜ければ絶対フリーになれる」という理解があったからこそ、迷いなくできたプレーだったと思うんです。そして、持ち上がった際に、冷静に中を見れたのも、「1枚剥がせたからマークにズレが出ているはず」という考えがあったのではないでしょうか。サッカー選手はこれを一瞬で考えて実行するので書いているような簡単な話ではないですが、私は、この「共通理解」を作ることこそ、サッカー戦術の醍醐味だと思っています。
実は開始早々に乾のシュートがバーに当たったシーンも、北川・乾で同じスペースを狙った攻撃でしたね。(あれなんでゴールキックになったんでしょうね、、、。)
これで昨季同様、清水が一気に流れを持っていくかに見えましたが、今季のいわきはその粘り強さで、試合を盛り返します。
いわきFCの反撃と西川選手のゴール
序盤の立て続けの失点でしたが、いわきの選手たちは誰も諦めていませんでした。いわきの選手たちに自信を与えたのが、前半14分のプレー。
清水がブラガ・北爪もオーバーラップして前掛かりになっている中で、ボランチの中村のトラップが大きくなり、中央で大西に奪われて、山口の足元に渡り、カウンターのピンチを招きました。このように中央突破をしようと前掛かりになったタイミングでボールを奪われて入れ替わってしまうと、大きなカウンターのピンチに繋がり、山形戦でも多くやられてしまった形です。ボールを受けた山口が効果的なドリブルで持ち上がり、その際にいわきの選手が、矢印を大きく前に向けて、前線にどんどん走ります(有馬、谷村、西川、加瀬がスプリント)。最終的には、山口が、右に流れた有馬にスルーパスをして、有馬がダイレクトでシュート。シュートは清水のニアゴール枠内に飛び、権田がこれをセーブします。高橋選手の寄せの甘さも気になりました。中央でボールを奪って、一気に前に出てカウンターに繋げて、バックパスをすることなく、シュートを打ち切る。この攻撃が、まさにいわきが今回清水対策として用意していた攻撃戦術の一つであり、それを出せたことでいわきの選手たちが「いける」と自信を深めたのだと思います。
その後徐々にいわきペースに移る中で、いわきが1点を返します。
正直、何でもない形での失点でもったいないですね。確かに、西川のアピアリングの動きと、シュートの精度は素晴らしいのですが、どうしてこんなに簡単にやられてしまったんでしょう。権田選手の北川選手へのロングボールが、相手CBの照山選手にクリアされ、左サイドでフリーになっていた大迫選手に渡り、大迫選手は余裕をもって、これまたフリーの谷村選手にパス。谷村選手はターンをして宮本選手を振り切り、最終ラインからステップバックしてフリーになった西川選手に落として、左足一閃。わずか3本のパスでゴールを決められてしまいました。
まず問題だったのは、権田選手から繋いでいくのか、長いボールを蹴るのかのチームとしての意思統一ができていなかったこと。次の問題は、長いボールに対して、競り合ってセカンドボールを拾うという形になっていないかったこと。3つ目が左サイドの大迫選手をフリーにしていたこと。ここは長崎戦から気になっているのですが、ブラガと北爪の距離感が重なっていたり、離れすぎたりしている点ですね。最後に人数がいたにも関わらず、ラインが下がってしまいバイタルエリアの谷村選手と西川選手に厳しくチェックにいけなかったことです。
誰か一人の問題ではなく、まさにチームとしての意思統一の問題ですね。特に、①ビルドアップの際に、ロングボールを蹴るのか、繋いでいくのかチームとして共通認識を持つ、②ロングボールを蹴る場合にはきちんと競り合うのとセカンドボールを回収できるポジションをとる、③守備時に1対1でマークにつく、④マークについてた相手は離さない、言うは易しですが、この辺りは再度徹底できると良いと思います。
前半終盤のいわきFCの「左攻め」による猛攻
いわきが1点を返せたことで、さらに自信を取り戻して攻勢をかけてきます。いわきの狙いは清水の右サイドでした。
まずは失点直後の前半23分。乾が相手ボランチの大西に中を切ってプレスをかけますが、中村の連動が遅れ、西川に縦パスを通され、西川は左サイドの北爪の裏のスペースにフリーでポジション取りをしている谷村へダイレクトで展開(北爪は清水がボール保持できるかわからない場面でも前に上がってしまう傾向があり、この隙をいわきには狙われていました)。谷村からリターンをもらった西川が前進してミドルシュート。ここは権田選手のナイスセーブで難を逃れます。高橋選手は、誰のマークにもついていない浮いている状態なので、西川選手を前に出て潰しにいってもいいのですが、突破を恐れて下がってしまい、シュートのコースを消すことができませんでした。
このような場面が前半の終盤から後半の頭まで続くことになります。いわきFCの左サイドの大迫・谷村・山口に西川も参加して4人で数的優位を作り、守備が必ずしも得意ではないブラガ・北爪の清水の右サイドを攻め続けます。
展望でも書いた通り、いわきFCはセットプレーの得点が多く、大迫という良いキッカーがいるため、清水としては避けたいはずでしたが多くのCKも与えてしまいます。
前半30分には住吉から有馬が前線でボールを奪い、左の谷村に展開してシュートからCKを与えてしまいます。後半32分、33分には清水がカルリの連続クロスなどチャンスを作りますが、後半34分、ファール気味でしたが中盤での50-50のボールを、宮本に競り勝った有馬が奪取。高い位置でまたしても左サイドに張っていた大迫に展開、大迫からのグラウンダーのクロスに、谷村がシュート。これも権田がセーブ。
前半38分には、北爪の果敢なオーバーラップから優しいクロスに、北川がダイレクトで左サイドに流すシュート。惜しくも枠外となりました。
ここでおそらくトラブルからかカルリにかえて松崎投入。松崎を右サイドに回し、ブラガが左サイドに入ります。
前半43分には、そのブラガがチャンスを作ります。右サイドでブラガ→中村→北川と繋ぎ、3番目の動きでサイドゲートを抜けようとしたブラガに浮き球のパス。ブラガはボールを先に触り斜め後ろから五十嵐に倒されたように見えましたがノーファールになりました。
いわきも反撃。前半45分には、またしても左サイドから。西川から左サイドの大迫に展開し、大迫のグラウンダーのクロスに、山口がダイレクトでシュート。危ないところでしたがこれはゴール右に外れます。この時も高いキック精度で警戒すべき大迫に松崎も北爪もチェックにいけていませんでした。
さらにATの1分、またしてもいわきは左サイドから、清水の同サイド圧縮のプレスを大森→山口→大迫のダイレクトパスで回避し、バイタルでフリーになっている谷村に展開。プレスで前に上がっていた北爪の裏のスペースで、またしても大迫がフリーで受けて早めのクロス。高橋のクリアは重心が後ろであり不十分で、それを山口がシュートしようとするものの宮本がなんとかクリアでCKに逃れます。
その後前半終了。前半だけで、大迫選手には3-4回フリーでクロスをあげさせてしまいました。
前半のスタッツは、いわきがシュート7本、枠内シュート5本、CK6本に対して、清水はシュート2本、枠内シュート2本、CK0本。得点こそ清水が2-1で勝っていたものの、試合内容としてはいわきに上回れる形でした。
また面白かったのは、アタッキングサードの侵入率でいわきは49%と半分が左サイドの攻撃(清水はほぼ均等)になりました。ボール奪取ラインもいわきが39.4mで、清水は34.5mということでこれもいわきが上回りました。
後半苦しい中での清水の追加点
後半、いわきはCBの左の大森に代えて、石田を投入します。後半のポジションは以下で開始します。
いわきは前半同様「左攻め」をしてきますが、この石田の投入でさらにその傾向が堅調になります。例えば後半3分のシーン。
このように左サイドの狭いエリアに4人が侵入。清水の3に対して、いわきの4と数的優位を作り、細かいパスを何度か回して、最後は谷村が抜け出しシュートを放ちます。
その後は清水が少しペースを取り戻します。乾が大西から足を思い切り踏まれるファールをもらい、山原のFKから高橋のヘディングシュート。後半9分には右サイド松崎の抜け出しから、クロスを北川が受けて、こぼれたところを山原がシュート。続けて、オフサイドにはなりましたが、乾のスルーパスから北川の抜け出すなど、清水がチャンスを作り始めます。
前半はいわきのビルドアップに対して、最終ラインにはいかず、北川と乾がシャドーでボランチへのパスコースを消すようなブロックをする形でしたが、後半のこの時間は、相手3CBに対して、守備時はブラガ・北川・乾が3トップのような形で1vs1でプレスにいけるようになりました。これにより、いわきのビルドアップが難しくなります。
いわきは後半12分に有馬から近藤に交代。
その後大西に対する住吉のチャージがファールを取られ、FKのピンチ。このシーンは住吉のタックルはボールに対するもので、確かに後ろ足が相手に当たっているものの、これをファールにするんだったら、前半の宮本へのチャージをとらないのは何故なんだろうと疑問に残るものではありました。このFKは大迫が直接狙いますが、権田が正面でキャッチします。
後半18分にも近藤の粘りから、西川が左サイドの大迫に展開。スルーパスは一度阻まれますがセカンドボールを拾い、大迫が精度の高いクロス、近藤のヘディングシュートは左に外れます。(大迫選手へのマークは相変わらず修正されません)
そして後半21分、いわきFCが波状攻撃。セカンドボールをことごとく拾われて、大迫の連続クロス、山口→大西でのPA内進入、五十嵐の浮き球のパス、大迫と山口のコンビから谷村→近藤。ここまでは非常に重苦しい展開でした。
が、ここで住吉が持ち前のデュエルを発揮して、ボールを奪取。中村が回収し乾へ。乾がまた素晴らしいターンから前がかりになっているいわきの状態を意識しながら、早めに左サイドに展開。これがスプリントをかけて反応していたブラガに渡ります。さらにその外から待ってましたとばかりにものすごいスピードでオーバーラップする山原。
そこにブラガがアウトサイドでスピンをかけたスルーパス。少し長くなったため、山原は一度諦めかけますが、ここで前日に見た湘南-浦和戦のシーンが蘇ったらしく、気持ちを振り絞って再度スプリント。身体をいれてゴールラインを割らせようとしている五十嵐の背後から回り込み、ゴールライン際でボールを奪取します。この時ゴール裏で見ていたのですが、一度諦めかけてから再度スプリントをかけ、またゴールライン際で相手から必死でボールを奪おうとする山原の表情は、本当に鬼気迫るものがありました。そもそも最終ラインからここまで猛スピードで駆け上がってきて。一度諦めかけたのに気持ちを入れ直し、吉田選手ばりの身体の強さを発揮してボールを奪うなんてすごすぎます。まさに山原の執念でしたね。山原がボールを奪うと「信じて」いた北川が、ニアで合わせて貴重な追加点をあげます。
この時でしは、とっさに「れおーん!!!」と泣きながらビジター芝生の坂道を駆け下りてしまいました。それくらい苦しい中での貴重な貴重な追加点でした。
ここで2点差がついたため、秋葉監督はチャージを受けて負傷気味の乾と、ここまで1得点2アシストの北川を温存の意味も含めて下げ、西澤と西原を投入します。これでブラガがトップ、西澤がトップ下、西原が左WGに回ります。
諦めないいわきの粘りと清水の5バック
いわきも23番大迫に代わり、24番山下を投入します。これによりいわきは4-4♢-2にシステム変更をしたように見えました。結果以下のようなマッチアップになります。
これにより当初ペースをつかんだのは清水でした。特にチャンスになったのは後半28分のシーン。右サイドで松崎が持ち上がりながら、内側に切り込み、西澤に横パス。西澤は裏に抜けた西原にパス。西原は切り返して、右足でシュート。GKを抜けて17歳最年少ゴールが決まったかに思われましたが、相手DFの照山選手が間一髪でクリア。西原選手のゴールはまたもお預けになりました。
ピンチを防いだいわきが逆にチャンスを迎えます。
後半30分過ぎに、秋葉監督は最後のカードとして、タンキと吉田を用意します。おそらくブラガ→タンキ、北爪→吉田と、同じシステムでの交代を検討していたと思います。
ところが、後半32分のシーン、左サイドを抜け出した石田のクロスに対して、まず高橋が中途半端なクリア。高く上がったボールに対して松崎が外側に蹴りだすのではなく、内側にアバウトなゴロでのクリア。この処理を北爪が誤り、再び相手山下のボールに。その後繋がれてセカンドボールも拾われて、谷村の左サイドのクロスから、大外のファーに走り込んだ加瀬が素晴らしいヘディングシュート。枠に飛んでこれはやられたと思いましたが、権田がスーパーセーブでなんとか弾きだします。さらにこぼれ球を押し込もうとした近藤のシュートを住吉が決死のタックルでブロック。ここ数試合で守備を牽引している二人のスーパープレーで失点は免れます。
ところが、その後の流れから獲得したCKのシーン。代わった山下のCKから、大外ファーにいた谷村が鮮やかなダイレクトボレーでゴール。実は直前のCKのシーンでも谷村はファーサイドでフリーでした。ゾーンで守る際の大外をどうするのかもセットプレーの守備の課題として残りましたね。
これで清水はタンキ・吉田の交代を取りやめて、再度交代策を練り直します。
残り10分+ATで1点差に追いついたいわきは、最後の交代カードとして、加瀬→生駒、西川→白輪地を投入してさらに前線に圧力をかけます。
ここで谷村選手のシュートを、左足つま先の素晴らしいブロックで防いだ高橋選手が、その痛みからピッチで座り込みます。故意ではないように思いましたが、結果的にここで中断できたことが、清水が落ち着いて交代策を考えられる時間になりました。逆に、ベンチがバタバタしているタイミングで、猛攻をかけられていたら、失点してしまう可能性もありました。
最終的に後半40分に、清水は最後のカードとして、北爪→吉田、ブラガ→蓮川の交代により、システムを5バックに近い、3-4-3-1に変更します。両チームのメンバーは以下になります。
西澤をワントップで起用し、吉田・山原は守備時は最終ラインまで下がって5バックを形成。これによって、清水は「守り切る」という意思統一がなされます。が、昨季のプレイオフ決勝の悪夢が蘇った方もいたのではないでしょうか。終盤までいわきに押し込まれてしまい、祈るように試合を見守ります。
ATには、清水の右サイドでの宮本の山口に対するファール、左サイドでの西原の五十嵐に対するファールと立て続けに警戒しなくてはいけないセットプレーでのピンチを招きます。
しかしCB陣を中心に辛くも清水がゴールを守り切り3-2での勝利。苦しみましたが貴重な勝ち点3を手に入れました。
円熟味を増した北川航也選手
この試合のMVPはなんといっても北川航也選手。北川についてこの機会に想いを書きます。
この試合1得点2アシストの活躍でした。今季の北川選手は、偽9番として、ワントップでありながら、フィニッシャーというよりは、チャンスメイカーとしてプレーしています。その中で、ここまで4ゴール3アシストと、昨季10ゴール10アシストの乾選手を上回るペースで成績を残しています。
北川選手は、相棒がドウグラス選手だった時から、本当に大好きな選手なんですが、そんなでしでも、今季ここまで北川選手が活躍できるとは思っていませんでした。(すみません)
おそらく北川選手のことを誰よりも信じていたのが、秋葉監督だったんだと思います。昨季及びその前のシーズンは、チアゴ・サンタナという絶対的なエースがワントップに君臨していたため、北川選手の出番はそこまで多くありませんでした。リカルド時代には、不慣れな右WGのポジションで使われ結果を出せず、また途中交代で起用する機会が多かっため、ゴール数も減ってしまいました。
中には、オーストリアの海外挑戦を得て、力が衰えてしまったのではないかという意見もあったくらいで、そういった声を聞くたびに、でし自身も悔しさを感じていました。
それでも、昨季秋葉監督になってからは、チアゴ・サンタナが出れない時や交代出場で少しずつ輝きを取り戻していました。特に乾選手と先発した場合には前線からのプレスがチアゴ・サンタナとのコンビよりも効いていましたし、ゴール数は4と伸びませんでしたが、出場時間が少なかったにも関わらず、アシストは7と、乾選手に続くチーム2位でした。
チアゴ・サンタナの退団は、秋葉監督にも痛手だったようにも思いますが、私は実は秋葉監督は、チアゴがいるときの、ある程度苦しい時には縦に蹴っておけばなんとかしてくれるというスタイルではなく、後ろからビルドアップをきちんとして、トランジションを早くして、前線からプレスをかけるようなサッカーを志向していたのではないでしょうか。それでも昨季は、シーズン途中から監督を引き継いだこと、チームとして絶対に負けられない状況が続いたことから、チアゴ・サンタナに頼らざるを得ず、また自分が選んだ選手たちではなく最終ラインあるいはボランチのビルドアップ力について課題があり、自らが追求したいスタイルができなかったのだと思います。
なので今季チアゴの退団が決まった時点で、秋葉監督は自分のやりたいサッカーを、新たに獲得した中村・住吉・蓮川といった選手たちと共に、北川選手のワントップを軸に表現することを決意したのだと思います。
北川選手をキャプテンに指名したのも、その想いがあったからだと思います。
今年の北川選手は、個人的には海外移籍前の北川選手よりも、さらに選手として凄みが増していると思います。なかなかボールタッチができない最前線のワントップという立場の中で、ボールを受けた時のプレーの質が極めて高い。特にいわき戦であったように、PAなどゴールに近い位置で、周りが非常によく見えており、パスなのか、シュートなのか、最適な選択をできているところは、以前にはなかった部分だと思います。
今後はタンキ選手とのツートップなどの新たな形もあると思いますし、その際にはまた別の輝きを見せてくれるものと信じています。2016年と同様、今季も北川航也選手が清水をJ1昇格に導いてくれることを期待しています。
おまけ: いわき遠征の想い出
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