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展望: 2025 J1 第3節 清水 vs 広島
J1第3節で、優勝候補のサンフレッチェ広島をホームに迎えての戦い。共にJ1開幕2連勝。J1以外の戦いにおいても、清水は昨季のJ2での栃木戦から無失点で5連勝中、広島はACL・スーパーカップ含めて6連勝中と好調同士のチームの戦いとなります。さらに現在J1での1位・2位での首位対決。これ以上ない舞台が整いました。展望を書いていきます。
清水 vs 広島の過去の対戦成績は?
オリジナル10同士の清水と広島は過去に天皇杯など一部を除いて69戦もの対戦があり、清水が30勝12分27敗と勝ち越しています。さらにホーム日本平に限れば19勝5分11敗と大きく勝ち越しています。
一番直近の対戦は、2022年の清水がJ2に降格したJ1時代。この年は4/29のホームでは2-2の同点、9/3のアウェイでは0-2の敗戦となりました。
こちらが9/3の試合のハイライトになります。
後半30分にDOGSOで塩谷が退場したのですが、清水が一人多い状態から川村選手のスーパーロングシュート含む2得点を奪われ、敗戦するという非常に苦い結果の試合となりました。ちなみにこの試合でベンチ入りしていたジェラ選手は後半21分から出場していますね。
清水に関しては、スタメンの選手11人のうち、現在チームに残っているのは乾選手のみ。一方の広島は大迫・佐々木・荒木・塩谷という守備陣は現在と変わりません。それだけこの4人の連携は深まっているといえますね。
今季の広島はどんなチームか?
昨季は、優勝候補の一角かつ新スタジアムオープンという節目ということで広島サポ以外からも優勝を期待する声が多かったシーズンでした。こうした後押しを受けて33節では首位だったものの、そこからまさかの3連敗で首位陥落。札幌には大勝したものの最終節にG大阪に敗れて、最後5試合を1勝4敗となり、優勝を逃してしまいました。
こうして迎えたオフシーズン、サンフレッチェ広島はチームを更にアップグレードします。
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今季の広島の移籍情報は上記の通りです。青山選手の引退やジェラ選手、海外籍選手の完全移籍含めて、OUTの人数の多さに比べて、INは数こそ少ないものの、湘南から田中聡選手、磐田からジャーメイン良選手、札幌から菅選手、横浜FCから井上潮音選手、明治大学から中村草太選手と超即戦力を獲得。悲願の優勝に向けて、質の面では非常に充実したシーズンオフとなりました。
スキッベ監督は4シーズン目を迎え、このオフではトルコや宮崎でキャンプを行い、ACLおよびJリーグ制覇に向けた充実した準備を行いました。
広島のこれまでの成績は?
良い形でシーズンインした広島は、今年に入ってから、スーパーカップ・ACL含めて5連勝。まだ負けも引き分けもありません。
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失点も町田に取られた1点のみ、得点は5試合で12点と攻守ともに素晴らしい結果を残しています。ホームのナムディン戦では少しだけ選手の入れ替えはしましたが、基本的にはこの5試合、過密日程のなかで主力メンバーを固定して戦っています。
前節の広島ホームで行われた横浜FM戦は、ACL組同士の対戦ということもあり、非常にインテンシティの高い緊迫したゲームになりました。こちらがハイライトです。
後半開始早々に、田中聡の素晴らしいボール奪取から、田中聡→加藤→ジャーメインとつなぎ、ジャーメインのシュートが相手DFに当たりPK。おそらく手に当たらなければそのままゴールインだったと思うのでPKは妥当な判断でしょう。これをジャーメインが自ら決めて1-0で勝利しました。
ただこの試合、疲労の蓄積もあるのか、終盤にジャーメイン選手は足を攣って担架に運ばれて交代。ワントップ役のできる選手が他にいない中で、次節出場ができるのかにも注目です。清水戦は中2日の中でアウェイ移動をして迎えるということもあり、広島としては、主力選手がどれだけコンディションが回復しているかも、重要なポイントになると思います。
広島の基本システム・戦術は?
サンフレッチェ広島は、昨シーズンも1年を通して、ずっと同じシステム「3-4-2-1」を採用しています。もうこのシステムは広島にとっては伝統になりつつありますね。
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GKの大迫、3CBの佐々木・荒木・塩谷はもはや鉄板。空中戦に絶対的な強さを誇る荒木が真ん中にそびえたち、攻守で高次元のプレーができる佐々木・塩谷のベテラン二人が脇を固める形。佐々木・塩谷は足元の技術もしっかりしており、ビルドアップ時に中心的な役割をします。さらに両ワイドには左に東、右に中野。東は左足のキック精度に優れ、鋭いクロスを供給し、中野は豊富な運動量から上下動を繰り返し、ダブルボランチの川辺と田中はどちらもCMF的な役割でパスの供給源になり、2シャドーのトルガイと加藤はキープ力と得点能力が高く、1トップのジャーメインがポストプレイと前線のターゲット役をこなす。他サポであっても、かなり解像度高くそれぞれの選手の特徴がわかるくらい、完成されたチームです。
昨季は、攻撃回数・シュート数・ゴール数共にリーグ1位。一方でボール支配率は49.5%で10位、パス数も9位と中位であり、手数をかけずに最短ルートで効果的・効率的にゴール前まで迫ってくるようなそんなチームです。
新加入選手も、ジャーメインと田中聡はスタメンのポジションを既に掴み、中村草太と菅は交代メンバーとして貴重な戦力になっています。
広島の予想スタメン・注目選手
さて広島の予想スタメンですが、ジャーメイン選手が出場できるか否かで大きく変わってくると思います。出場できる場合には、基本的には横浜FM戦と同じメンバーで来る可能性が高いです。
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ジャーメイン選手が欠場の場合、広島はFW登録が5名しかいないのですが、満田は海外移籍交渉中、井上愛簾はU-20代表で不在であるため、おそらく加藤選手をトップに、中村草太選手をシャドーにするしか選択肢がないものと思われます。
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それ以外では、疲労を考慮して、東→菅、中野→新井の入れ替えはあるかもしれません。ベンチスタートになるとは思いますが、横浜FC時代に清水が苦しめられた井上潮音選手の広島初出場があるかも注目ですね。
さて注目選手としては以下の3名を上げたいと思います。
注目選手①荒木隼人選手
佐々木翔選手および塩谷司選手はもちろん強烈なのですが、あえてCBの中央を守る荒木隼人選手をピックアップしたいと思います。186cm/78kgと体格に恵まれ、それでいて足元も上手い選手です。
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第2節の横浜FM戦では、エースのアンデルソン・ロペス選手をマンマークし、ほとんど仕事をさせませんでした。スーパーカップではCKから、打点の高いヘッドで追加点を奪っており、セットプレー時のターゲットとして非常に脅威です。
ジェラ選手が、インタビューにて最も対戦を楽しみにしていると挙げたのが荒木選手。同じプレイスタイルのジェラにとっては、本当に超えることのできなかったライバルといえる存在なのでしょう。
当日も高い壁として立ちはだかるのか、ジェラ選手が上回るのか本当に注目です。
注目選手②田中聡選手
今季の広島の新加入選手の中で、最も輝きを放っているのが湘南から完全移籍で加入した田中聡選手ではないでしょうか。
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昨年湘南で33試合5ゴールと活躍、パリ五輪の最終メンバーからは落ちてしまいましたが、U-23でも活躍をし、今季意を決して広島に完全移籍。開幕からスタメンの定位置を確保すると、ボランチとして攻守に非常に「効いて」います。175cm/73kgと決して体格に恵まれているわけではありませんが、デュエルも負けないし、何より足元の技術がしっかりしており、時折裏抜けからゴールを脅かすなど、広島の新たなダイナモとして存在感を示しています。
注目選手③中村草太選手
最後に挙げたいのは、大卒ルーキーの中村草太選手。前橋育英から明治大学に進学し、大学3年時・4年時には、関東大学リーグで、2年連続の得点王かつアシスト王に輝いたという逸材です。
神戸とのスーパーカップで途中出場して公式戦デビューを飾ると、続くACLのアウェイナムディン戦で先制点、続くJ1開幕戦の町田戦で決勝ゴール、さらにはホームナムディン戦で2ゴールと3試合連続4ゴールを獲得しました。正直、三苫や久保クラスのポテンシャルを持った選手の可能性があり、将来かなりの確率で、海外クラブに移籍する選手だと思います。清水としても警戒が必要だと思います。
清水の予想スタメン・サブは?
さて続いては、清水エスパルスの予想スタメン・サブです。中3日と連戦にはなるものの、まだ第3節であり、広島と比較すると疲労の蓄積はそれほどでもないと思われます。したがって、基本的にはこれまでの先発メンバーが軸になると考えます。
一方で、前節後半頭から出場し、貴重な追加点を奪った松崎快選手に関しては、秋葉さんの性格的にはスタメンに選ぶ可能性が高いと思います。結果を出した選手を使わないと、サブや出場機会が限られている選手のモチベーションにも影響すると考えられるからです。前節からの練習中にケガなどがない前提で、スタメン・サブ予想はこうなりました。
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もうひとつ鹿児島キャンプではレギュラーの座を掴んでいた矢島選手がコンディションが回復していればベンチ入りする可能性もあるとは思います。ただここで無理させるよりは、岡山戦に照準を合わせて不測の事態に備えるほうが賢明かと思いますので、広島戦はベンチ外にしています。
このメンバーにて、鹿児島キャンプから積み上げてきたことを、優勝候補の広島相手に包み隠さずぶつけて欲しいですね。
清水はどう戦うか?
両チームの予想スタメンはこうなります。
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広島が3-4-2-1、清水が4-2-3-1とうことで、システム上ズレが生じることになります。広島からすると、J1では4バックのチームとの初対戦ということになります。一方で清水からすれば、システム上は開幕戦の東京Vと同じということになりますね。
システムの噛み合わせはこうなります。
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この図では、清水側が3トップのような形で配置していますが、非保持の局面では、4-4-2で良い距離間でブロックを組む形になると思います。東京V戦は同じやり方でうまく守れていたので、同様のやり方をするのではないでしょうか。
保持の局面では、いかにして3CBの脇を狙えるか。東京V戦のように左起点でゲームを作りながら、高木践選手が一気に裏を取るという形も狙えるかもしれないですし、カピシャーバ選手があえてサイドライン際でポジションすることで中野選手を押し下げて山原選手がハーフレーンから攻めるとか、塩谷選手が外に出てくるなら、その間を乾選手が狙うとか、そういった揺さぶりをかけられるとよいと思います。
また町田の前半や横浜FM相手に苦しんだように、相手のプレスがかかる場合には無理せずに最終ラインにロングボールを出して、セカンドを狙うような形も割り切ってやってもいいと思います。
守備時にとても厄介なのはトルガイ選手や加藤選手のボールを引き出す動きです。彼らが自由にボールを触れるようだとピンチを招きやすいので、マークの受け渡しを含めてケアが必要でしょう。
もうひとつが相手のセットプレーの脅威です。特にCKでは、最初はファーサイドに選手を集めて、一気にニアに走りこんで、ブロックしながら、ファーでフリーになった選手に合わせるということもやってきます。
今シーズンの清水はCKはゾーンで守るため、あまりこうした動きに惑わされることはないですが、逆に走りこんだ状態での荒木選手や佐々木選手の打点は非常に高いため、必ず最後まで身体を寄せるなど集中を切らさないことが重要になると思います。
理想的には清水は先制点を奪った上で、同じメンバーで可能な3-4-2-1へのシステム変更を早い時間で行ってミラーゲームにして試合を締めに行くような展開になると勝率がさらに高まると思います。清水が先制した場合、あるいは同点でもリズムが悪くなった時に、いつのまにか山原選手が右サイドにいないか、是非注目してみてください。
最後に
既に観られたと思いますが、このジェラ選手のインタビュー動画は胸にグッとくるものがあります。
また、こちらが完全移籍を決めた時のジェラの広島サポに向けたメッセージです。
広島に移籍してきた時はこのチームで成功したいと思っていました。
ですが、叶わなかったのが事実です。
しかし、はじめて目標にしたい選手に出会えました。
塩谷選手から色々なものを学びました。
塩谷選手との出会いがぼくのサッカー人生のターニングポイントだと思います。
それも含めて、広島にいた2年半は、僕を一回りも二回りも成長させてくれました。
サンフレッチェ広島を愛する全ての皆さま、ぼくは負けません。
清水エスパルスというチームで必ずサンフレッチェ広島に勝ちます。
それが僕のできる最大の恩返しだと思っています。
それでは、J1の舞台で会いましょう。
いってきます。
ジェラ選手の決意に答えるためにも、選手・スタッフ・サポーターが一丸となって、必ずジェラに勝たせましょう。そして割れんばかりの「ジェラ」コールで、彼をたたえましょう。
私は残念ながら現地には行けませんが、遠く異国の地から、DAZN越しに声を張り上げる予定です。絶対に勝たせましょう!!
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