観戦記: 2024 J2 第9節 甲府 vs 清水
アウェイ甲府戦についてレビューを書きたいと思います。暑すぎるくらいでしたが、天気にも恵まれ、桜が満開の小瀬スポーツ公園にあるJIT リサイクルスタジアムでの、J1昇格争いライバルによる富士山ダービー。本当に素晴らしい試合、そして清水サポにとっては素晴らしい結果になりました。
終了間際の劇的ゴールによるウノゼロ勝利
この前の2試合、共に現地観戦したのですが、アウェイ山形戦は追加点、ホーム徳島戦は同点ゴールと、後半終了間際に失点をして勝ち点を失う展開だっただけに、アウェイ甲府戦の終了間際での決勝ゴールは本当に嬉しかった。さらに去年一度もゴールを奪えずに勝てなかった甲府相手のゴール、これ以上のものはないですよね。この瞬間があるからまたスタジアムに足を運ぼうと思うんです。
それではハイライトを見てみましょう。
前半は両チームの守備が素晴らしく、非常に引き締まったゲーム。後半の中盤までは、セットプレーと交代選手の勢いで甲府が決定的なチャンスをいくつか作ります。それでも権田選手を中心に固い守備でゴールを守り切ります。後半の終盤は、後半16分に北爪・北川、後半22分に乾・松崎、さらに後半35分に西原と攻撃的な選手のカードを効果的に切った清水が試合を優勢に進め、勝利の女神は清水に微笑みました。
0-1という最小スコアながら、サッカーの面白さが凝縮された素晴らしいゲームだったと思います。
前半清水が流れを引き戻したシーンとは?
前半立ち上がりは清水ペースで始まります。前半7分に清水の良い攻撃があります。中村が相手CBの今津までアプローチ、矢島が右SB関口にプレス、慌てた関口のボランチ26番佐藤へのパスがずれたところを、宮本のパスカット、ダイレクトで中村→ブラガ→カルリ→矢島と繋がってシュート。前半においてはこれが清水にとっては最も形になったシーンになりました。
清水はボランチの白崎がクロースロールで最終ラインに落ちることで、この試合もビルドアップはうまくできていました。
以降は、徐々に甲府ペースになります。意図的かわかりませんが、甲府は、前線からのプレスはやめて、リトリートしてボランチ・SBに入った際にプレスの強度を高めるようなやり方をしてきます。特に、甲府は清水の右サイド、甲府の左サイドで数的優位を作って、人数をかけて効果的なプレスを始めます。
前半9分、ブラガから吉田→宮本→吉田のパスに対して、甲府は三平と宮崎でプレス、吉田のトラップミスを三平がカットし、宮崎→小林→三平→木村と渡り、木村がフリーで清水の右サイドを突破。木村のクロスを懸命に戻った白崎がCKに逃れますが、決定的なピンチを招く寸前でした。
続いて前半22分の甲府の攻撃。清水のプレスをかいくぐり、甲府の左SBの小林が効き足の左足で、素晴らしいタイミングで吉田の裏に走り出していた宮崎へのスルーパス。センタリングからファビアンのシュートに繋がりました。どちらも清水の右サイドを破った形ですね。
前半26分時点で、清水のボール支配率は66%と実に2/3の時間ボールを支配していましたが、それでも清水側が有利とは感じないような締まった展開でした。
後半32分にも、甲府は左サイドでのチャンス。山原のブラガへの斜めのパスを甲府ボランチ佐藤がカット。宮崎に繋いで小林にバックパス。三平に縦パスをいれて再び佐藤に。インナーラップで前線に抜け出した小林にスルーパス、クロスは白崎がカットしましたが、これも甲府が、ブラガの帰陣が遅くなることを狙って、戦術的に左サイドで数的優位を作った形でした。
このころから現地で見ていたでしも右サイドの守備の修正が必要だなと感じていました。
ここで清水にとっては、予期せぬ形で中断タイムが訪れます。前半35分にカルリと接触した、甲府CBの井上が、転倒時に膝を打って負傷。一度はピッチに戻りますが、その後のプレーでピッチに座り込んでしまい怪我の治療を行います。これによって2-3分ほど中断期間になります。
DAZNには映っていませんでしたが、この間に山原がベンチと会話。その後山原がセンターサークル付近で権田含むて選手たちを集めて話し合いが行われます。こういうところが昨季にはなかった今季の清水の良さだと思います。
ここでおそらく監督・コーチの指示だと思いますが、上記の右サイドでの数的不利の問題を解消する、素晴らしい修正が行われたのに気づいたでしょうか。それは中村と矢島のポジションチェンジです。中村が左サイドに、矢島がトップ下に変わります。そして矢島が中央から右寄りにポジションをとることで、ブラガと山原の守備を助け、数的不利の状況を解消します。でしも現地で思わずつぶやていました。
前半44分に、三平のドリブルでのカウンターのピンチを住吉が素晴らしいタックルで阻止。また前半AT+2分には、中村の素晴らしいプレスから、カルリ→山原とカウンター。山原の深い位置からのクロスは惜しくもカットされます。それにしてもこの山原のプレーは素晴らしすぎました。この暑さの中で47分経過して疲れが必ずあるこの時間帯に、チャンスと見るや、後方から全力疾走をしてゴールラインまで走ってカルリのパスを受け、カットされた後も、そのスピードを止めずにすぐに相手SBに全力でプレスにいってファールで止めています。普通はクロスの後に足が止まってしまうと思います。この時間にこれだけ走れるとは、、、。本当に山原はすごい選手ですね。是非見返してみてくださいね。
前半最後は清水ペースとなり前半を終了します。
前半の総括
前半のスタッツは以下の通りでした。チームの特徴がきれいに出た形ですね。
清水が甲府のほぼ倍のボール支配率、パス数であるにも関わらず、シュート数、ゴール期待値は甲府が上回りました。清水の前半でゴール期待値0.19というのは過去最低だったと思います。
また徳島戦と同じ課題として、清水は、アタッキングサイドの進入数が、右サイド57%、中央16%、左サイド27%と、右サイド偏重となりました。甲府が数的優位を作って、清水の右サイドをよく押さえていたことで、清水はほとんど決定機を作れませんでした。
ボール奪取位置は甲府31.4m、清水も34.6mと両チームともに低い位置でした。
同じ4-2-3-1のシステムを採用するチームなのですが、ボールを保持しながら多くのパスを繋ぐサッカーの清水と、リトリートしてしっかりとブロックをコンパクトに作って、奪ってから手数をかけずに速く攻める甲府と、全く異なるサッカーを志向するチームの対戦、両チームの特徴が良く出て見ごたえがある前半でした。
後半の中盤までは清水は耐え抜く展開
後半開始は両チーム選手交代なし。清水は、前半の終盤から引き続き、矢島トップ下、中村左で、ブラガも含めて3選手が流動的なポジションをとります。前半と同じような展開が続きますが、後半開始早々から後半20分頃までは、甲府がセットプレーからチャンスを作り、清水は耐え続ける展開になります。
まず後半3分の左CK。ファビアンの打点の高いヘディングを三平が振り向きざまにシュートするものの、権田のナイスセーブ。ファビアンの前にこぼれるかと思ったボールを、白崎が身体を投げ出す形のスライディングでクリア。
続いても後半10分の右CK。ニアで合わせた三平のヘディングシュートでしたが、これも権田がスーパーセーブでゴールを割らせません。
その後甲府は切り札の一人アダイウトンを宮崎に代えて投入します。早速FKからアダイウトンのクロス。さらに後半16分には、アダイウトンが北爪を吹っ飛ばしてPA内に強引に進入。清水ゴールを脅かします。さらに後半18分にもアダイウトン、ファビアン、鳥海と次々にPA内への侵入を許し、ピンチを招きます。
ファビアン、アダイウトンの超重量級の選手は清水に脅威を与えていました。
後半清水は的確な選手交代で流れを引き戻す
この試合、徳島戦とは異なり、秋葉監督の采配が素晴らしかったと思います。でし自身も、試合前に以下のような投稿をしていました。
まさに後半15分過ぎからの選手交代で最終的には勝利を手にすることができましたね。すべての交代のタイミング及び交代させる選手、投入する選手が理に適っていました。
後半16分 白崎→北川、吉田→北爪
後半14分に甲府がアダイウトンを投入した直後に、秋葉監督は最初の交代カードとして、北川と北爪を投入します。
北川はおそらくコンディション的に後半15分からの投入をもともと決めていたように思います。白崎との交代になりましたが、左サイドにいた中村を本来のボランチ、トップにいたカルリを本来の左サイドにポジションチェンジします。前線からのプレスの強度を高めつつ、カルリ・中村を本職のポジションにシフトするという「一石三鳥」の交代でした。ちなみに白崎もこの2試合、ボランチとして、宮本・中村にも劣らない、良いプレーをしてくれていますね。この3人でボランチを回せれば安泰だと思います。これに成岡あたりが絡んでくると更にいいですね。
また面白かったのは北爪の交代です。これは明らかに甲府がアダイウトンを投入したのを見ての対応でした。連戦で疲れのある吉田に宮崎とタイプの違うアダイウトンを対応するには厳しいという判断があったのでしょう。北爪も決してアダイウトンは得意なタイプではないと思いますが、スピードで対抗する、またアダイウトンが上がった裏を狙っていくという考えがあったように思います。しょっぱなで吹き飛ばされましたが、その後は上手く対応していたように思います。そしてカウンター時には爆速の駆け上がりで松崎と良い連携をみせてくれました。
後半22分 矢島→乾、ブラガ→松崎
矢島が足がつって倒れたタイミングで、秋葉監督は次のカードを切ります。同ポジションでの交代になりますが矢島→乾、ブラガ→松崎の交代です。
このタイミングで満を持して乾選手の投入です。矢島は本当にギリギリまで良いプレーをしてくれていました。でしはもともとトップ下が、中央でもボールを受けてターンでき、左右どちらにも展開ができる矢島の適性ポジションだと考えていました。前半の終盤のポジションチェンジから生き生きとプレーしていたように思います。そして乾。正直待っていました。特にこの残り25分というタイミングでの乾の投入は相手にとっては相当嫌だったと思います。
さらに松崎快選手。松崎も相手が疲れていて強く当たり来られないタイミングで投入された場合には、高いドリブル技術で局面を一人で打開できます。特に乾との相性もばっちりで、松崎がキープしている間に、乾がポジションを取り直してボールを受けに行く、というシーンがたくさんありましたね。課題であったSBとの連携も、1回だけ何故出さないのというシーンはありましたが、北爪のオーバーラップに対してスルーパスを出すなど改善がみられていました。
その後、乾を起点に数多くのチャンスを演出します。後半22分には山原からパスを受けた乾が北川に縦パス。ディフェンスに引っ掛かりますが北川が見事なゲーゲンプレスからボールをすぐ奪い返し、右サイドに展開。松崎に渡り、それを追い越した北爪にスルーパス、クロスが引っかかり決定機にはなりませんでしたが、まさに交代した4名による良い形の攻撃でした。
これを受けて、乾や松崎を警戒して、ボランチやサイドバックの選手を入れられたら嫌だなと思っていましたが、甲府の篠田監督が切ったのは、三平→ウタカ、井上→山本というカードでした。これで清水の勝率が高まったと思っています。
後半25分にもこれぞ乾というプレー。左サイドで山原からボールを受けて、軽くドリブル。それを追い越した山原が相手右SBの裏をとった瞬間に、ふわりとした柔らかいパスを足元にピタリと通して見せます。
後半26分には、スローインから、松崎→北爪→中村→宮本→ジェラ→カルリと左サイドに展開し、カルリから中で良いポジションをとった乾に横パス、ここをダイレクトでPA内にいる北川に絶妙なスルーパス。北川の落としが山原に繋がれば決定的なチャンスになるところでした。
さらに後半27分、高橋の素晴らしい守備から、中村、松崎、北爪、高橋、住吉、中村と繋ぎ、下がった乾が受けます。乾は宮本に渡してパスアンドゴー。宮本から山原に展開、山原が持ち上がりながら乾の動きをよく見て、パス。乾は最終ラインに抜けると見せかけて、途中でスピードダウンして、狭いスペースではありますが、ボールを受けることに成功します。そこから見事のターンでためを作り、それを信じて走っていた山原にスルーパス。サイドを抉った山原から、マイナスでバイタルエリアで待っていたフリーのカルリにパス。カルリはドリブルでディフェンスの集中しているエリアに突っ込んでしまったのでフィニッシュにはなりませんでしたが、ここでカルリがフリーの乾にヒールパスでも出せていたら、決定機でした。
オンザボールでのスキルの高いプレーが目立つ乾ですが、このシーンをみると以下にオフザボールでパスアンドゴーをしたり、細かく動きなおしたりしているのかがわかりますよね。うまいだけではなく、走れる選手なんです。
後半30分、清水左サイドのカルリ、中村の同サイド圧縮からボールを奪取し、山原から乾に縦パス。受けた乾はまた見事なボールタッチでフリーの松崎へ。松崎はドリブルで駆け上がりますが、アダイウトンが見事なプレースバックで阻止されます。
そのすぐ後にも乾がダイレクトで右アウトサイドでのフライスルーパスをカルリに通します。その後奪われても乾がゲーゲンプレスですぐにボールを奪取。乾が攻守に躍動します。ちなみにこのプレーでカルリの疲労に気付いた乾はベンチに対して西原と交代するよう指示をします。
後半35分 カルリ→西原
甲府が最後の選手交代をした直後の後半35分にカルリに交代して西原を投入します。
カルリはこの試合後半途中まではトップで孤軍奮闘。ボールの受け手としても前線のプレスのスイッチとしても走り回りました。よく頑張ってくれたと思います。
西原を投入してからの終盤の時間も清水ペースで試合は進みます。特に素晴らしかったのは後半38分のシーン。きっかけは住吉の右サイドにいた松崎への素晴らしいサイドチェンジ。その後、北爪のクロス。さらには乾のスルーパスから山原のクロスと。両SBが高い位置を取り、クロスで攻勢をかけます。
この後、今度は甲府に決定機が生まれます。後半40分、交代で入った三沢がウタカに楔のパス、清水のクリアがちょうど絶妙な落としになり、三沢がダイレクトでシュート。入ったかに思えましたが、左のポストに当たり、ゴールならず。ここで入っていたら結果は逆になっていたかもしれません。
ポストの跳ね返りのウタカのシュートを松崎が身体をはってブロック。こぼれた球を宮本→北川のユースコンビで縦に繋ぎ、北川が素晴らしいターン。それを信じて左サイドで走っていた乾に展開。清水はカウンターのチャンスから最大の決定機を迎えます。乾からのパスは北川とものすごいスピードで駆け上がってきた北爪が重なってしまいますが、北川→松崎→乾→北爪→乾と繋がり、乾が緩急のあるドリブルでPA内を突破。甲府4番山本が乾の進行方向に身体を入れてブロック。でしからはファールつまりPKに見えましたが、審判は笛を吹かず。でしもゴール裏で思わず切れてしまいましたが、乾も同様審判に詰め寄りイエローカードをもらってしまいます。その前のアダイウトンの松崎に対するブロックしかり、この手のファールに対して基準が甘かったように思います。
それでも清水の選手たちはあきらめませんでした。
後半42分、住吉が身体を入れて鳥海からボールをカット。住吉→山原→西原→中村→山原→西原と繋ぎ、西原が巧みなドリブルで相手を外し、宮本へ。宮本はダイレクトで、この試合偽SB的なインサイドのポジション取りが目立った北爪が真ん中ドフリーでボールを受けます。北爪から松崎に展開。松崎は得意のドリブルからインサイドに切り込み、デルピエロゾーンの逆側、右斜め45度の「快ゾーン」から、左足でインサイドにカットインしてそのまま抜けきらずに、左足でファーを巻いたシュート。入ったかと思いましたが、ここは甲府GK渋谷がスーパーセーブでしのぎます。
そして0-0で終了かと思われた後半45分。ドラマが待っていました。
徳島戦では、裏目にでた交代策も、この甲府戦は見事だったと思います。アダイウトン対策としての北爪もそうですし、おそらくプレイタイムに制限があった、北川・乾の投入タイミング。両WGで疲れた相手に脅威を与えられる松崎と西原の起用など、すべて効果的な交代でした。
後半45分 住吉の劇的決勝ゴール
もうこの記事を書くまでに10回以上見ていますが、後半終了間際のゴールシーン、動画で見てみましょう。
この試合でも守備そしてビルドアップなどで好プレーを連発していた住吉ですが、試合終了直前、値千金の決勝ゴール。広島から今季レンタル加入した住吉の清水での初ゴールになりました。
そしてアシストは乾選手。山原のCKのクリアが高く上がった落下点にいた乾は、ダイレクトインサイドキックで、どうしたら蹴れるんだというふわっとした優しいクロスをピンポイントで住吉に合わせます。現地で比較的近い位置でこのプレーを見ていたのですが、この瞬間は乾の周りだけが何か時間が止まっているかのように感じました。そもそもあのボールをきちんとミートすること自体が難しいのに、それをピンポイントで合わせるとは、、、。
Xで投稿もしましたが、これは乾選手の日々の練習の成果ですね。
試合後のコメントも乾らしいですね。
ATにて、今津選手が退場するアクシデントはありましたが、清水が甲府相手に勝利を収めました。
後半の総括
後半戦は、前半はセットプレーを中心とした甲府のペース。後半22分に乾選手を投入してからは、清水ペースになりました。後半のスタッツはこちらです。
ポゼッションを握り、パスで崩そうとする清水と、守備でコンパクトにブロックを作って、ボールを奪ってからの速攻を狙う甲府の対照的なチームの特徴がスタッツにも出ていますね。
また課題であった右サイドの偏重についても後半は解消しました。これは乾選手の影響が大きかったと思います。
これで9試合6勝1分2敗の勝ち点19で首位に浮上。J2としては史上初の暫定ではなく首位に立ちました。まだ序盤とはいえ嬉しいですね。負けていたら勝ち点16、甲府にも抜かれて4位でしたので、本当に大きな勝利でした。
但し、まだ序盤戦。長崎と岡山は勝ち点1差ですぐ後ろにいます。特に長崎は第3節清水戦に勝利してからは負けなしの5勝2分。間違いなく優勝争いの最大のライバルですね。
乾の何がすごいのか?
この試合のMVPはもちろん90分間フル出場して、守ってはクリーンシートに貢献し、攻めては決勝点を奪った住吉選手でしょう。
しかし、やはり流れを変えたのは、秋田戦で途中交代してからの復帰となった乾選手でした。
乾選手のこの試合の面白いスタッツが見つかりましたので共有します。
乾は後半23分出場ながら、実にアタッキングサード(ピッチを3分割した際の最も敵陣ゴール側のエリア)でのパス数は全体の3位。プレイタイム当たりのアタッキングサードでのパス数は0.61と圧倒的に高い数値になりました。また別のデータで前方パス数や前方パス割合も前線の選手の中では抜けていました。
これは乾がいかに相手のゴール前でボールを受け、前向きのパスを送り続けていたかがわかります。
細かく動き直してパスの出し手がパスを出せる位置にポジションする
受ける際に可能であれば前向きにトラップする(ターンする、ボールを流して受けるなど)あるいはダイレクトでパスを出す
コースがあるのであればリスクをとって前方のパスを最優先で選択する
パスを出した後にパス&ゴーで再度もらえる位置に走る
仮に奪われた場合も、素早くネガティブトランジションをして前からプレスに行く
これがこの試合で乾選手を注目したときに気付いたでした。二つ目については乾選手の技術の高さがないと難しいという部分ではありますが、それ以外の点はどんな選手でもできると思うんです。「戦術乾」と揶揄されたりしていますが、私は他の選手に、この35歳の乾が当たり前に地道にやり続けていることを本当に学んでほしいと思います。
特に3点目について、他の清水の選手たちは、前にパスを出して奪われることに対して、少し臆病になっていると思います。横向きや後ろ向きのパスを奪われるのはカウンターに直結しますが、前方のパスの場合は、(入違われるなどはありますが)、仮にカットされる/相手に引っ掛かったとしても、再度ゲーゲンプレスをかければ、奪い返すこともでき、そうすれば相手のカウンターの出鼻をくじいて、ショートカウンターのチャンスにもなります。
このことを乾選手はよく理解しているのではないでしょうか。実際この試合でも何度か前方へのパスをひっかけていましたが、必ずプレスにいっていましたし、半分程度は奪い返すことに成功していました。
乾選手は試合後にこうコメントしています。
最後に
1分1敗で迎えた3連戦の最後の試合、昇格ライバル相手にアウェイで貴重な勝ち点3を奪うことができました。また離脱していた主力選手が戻ってきたことも好材料ですね。そしてこの時点で首位に立つことにも成功しました。
次節はアウェイいわき戦。これまたフィジカルが強く堅守速攻が持ち味で、3勝4分2敗と勝ち越して現在10位。去年のいわきは2戦とも大勝しましたが、今季のいわきはそこまで簡単にはいかないと思います。
是非油断せずに、チャレンジャー精神でアウェイ2連勝を目指しましょう!
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