観戦記: 2024 J2 第19節 清水 vs 藤枝
J2の前半戦の最終節となったホーム藤枝戦のレビューを書いていきます。清水は前節山口に敗退。2位長崎に勝ち点1差まで詰められている状況です。前半を首位で折り返すためにも、必ず勝ち点3が必要な試合。同じ静岡県内のライバルで、去年J1昇格を逃すきっかけの黒星をついた藤枝との対戦。相手に不足はありません。
ホームの大声援に応えるウノゼロでの勝利!
お互い同じ3-4-2-1のシステムで、90分間集中力の途切れることがないしまった展開になったゲームは、今季最大の観客を迎えたホームサポーターの後押しもあり、清水が1-0で勝利しました。ハイライトはこちらです。
前半45分間、そして後半の先制点が生まれる後半22分までは、清水がゲームを支配し、何度もゴールに迫るようなゲームでした。一方で藤枝も最後のところは、GKの北村を中心に踏ん張り、0-0という痺れるゲーム展開になりました。清水の得点後は、まるで違うチームのように藤枝が攻撃的なサッカーにシフト。藤枝も、前後半の終了間際にPA枠外から強烈なシュートを放つなど、最後まで気の抜けない展開となりました。
先制点まで清水が攻め続けたこともあり、シュート数は清水18に対して藤枝が4、枠内シュートも清水7に対して藤枝が2(但しその2が矢村の決定的なシュート)と清水が圧倒しました。得点後宮本・北川が下がる後半32分までは清水が圧倒しました。ただその後は藤枝に攻め込まれ、清水にとってはクロージング面での課題が残った試合となりました。
試合のポイントを先にまとめます。
表のMVPは娘誕生を自らのゴールで祝ったキャプテン北川選手
「新」乾システムで「クラッキ」として躍動した乾貴士選手
このシステムの中で北爪・山原・宮本・原がその持ち味を存分に発揮
影のMVPは1秒の集中力で2度の決定機をとめてみせた権田選手
課題を残した最後15分間のクロージング
素晴らしかった国際審判のジャッジ
このようなポイントを交えながら、試合を振り返ってみたいと思います。
前半の展開
両チームのスタメン及びシステム
両チームのスタメンはこうなりました。
でしnoteの展望での予想通り、カルリは間に合わず、清水は3-4-2-1を採用。右WGには、予想した吉田ではなく、攻撃・スピードに優れる北爪を起用。ボランチは中村・宮本のいつものコンビに戻し、乾は左のトップ下、原が右のCBに入り、乾は偽トップ下、原は偽CBとして自由を与えるような布陣になりました。
清水のサブには、沖、吉田、矢島、白崎に加えて、CBの控えとして高木践、攻撃的なカードとして郡司(アイスタは初)、タンキが入りました。
対する藤枝もいつもの3-4-2-1。出場停止明けの西矢がスタメン復帰。左のトップ下は杉田が入りました。
4-4-2および4-2-3-1を採用したここ数試合では、最終ラインのビルドアップがCBの2枚になってしまうこと、SBとWGの立ち位置がどちらもサイドレーン(ライン際)となることで、相手の前線からのプレスを受けやすかったこと。また守備時には、相手とのシステムのズレがあったため、誰が誰に着くのかが曖昧になっていたこと、この問題点を解決するために、①ビルドアップ時が3CBの3枚になる、②CB・WG・トップ下がハーフ-サイド-ハーフという立ち位置になる、③マークすべき対面の相手が明確になる、という清水が今回採用した3-4-2-1というシステムは理に適ったものでした。
一方で、相手とのミラーゲームとなるために、相手にとっても同じことがいえるため、簡単には試合は動かないかもしれない、その中でも先制点を早い時間にとって欲しい、という願いで試合を見ていました。
前半の開始直後から清水の猛攻
開始直後から、山原が左深い位置を突破、クロスを上げます。山原が最初から高い位置を取れるのがこのシステムの良さの一つですね。
前半2分、清水は最終ラインでボールを回して住吉へ。これまでの清水はここから丁寧にビルドアップするのですが、この時は、北川はボールを受けに下がりますが、他の前線の選手は高い位置に一斉に上がります。これは、従来あまりやってこなかった形。
その動きを見て、住吉から最終ラインに走った乾にロングパス。これで前線プレスにいこうとしていた藤枝の前3枚は完全においていかれます。これは試合を通して清水の狙いの一つでした。乾はヘディングで北爪に落とし、北爪はすかさず左足でアーリークロス。ただこのセカンドボールを原、北爪で回収。藤枝のラインがロングパスで間延びしているので、セカンドボールは拾いやすくなっています。これ実は山口にやられたやり方ですね。北爪が右サイドに残っていた乾に展開し、乾からクロス。清水は最初のCKを獲得します。
前半4分、住吉の良い守備からのカウンターのシーン。西矢のアンデルソンへの縦パスを、住吉がスライディングでカット。北川がうまくタメを作って、狭い局面で宮本とのワンツーで抜けるとセンターレーン付近でフリーになっている乾へのパス。乾はこのシステムでも自由を与えられており、藤枝の選手たちが見失っていることが多かったですね。乾が受けた瞬間にブラガがスプリント。絶妙なスルーパスでしたが、藤枝10番の榎本が全速力で戻り、身体を入れて守ります。これは相手の榎本を褒めるべきプレーでした。
前半8分、中村が乾のような素晴らしいターンでボールキープ。
前半9分、藤枝の攻撃ですが、ここは清水のディフェンスの課題が、山口戦からしっかり修正されていることがわかるシーンでした。藤枝はカットしたボールを左サイドに張っている矢村にパス。CFの矢村がこの位置でボールを受けるのは、ひとつの狙いだったのでしょう。矢村が榎本にボールを落として前向きに受けると、矢村の背後をアンデルソンが回り、さらに杉田も左サイドに走り込み、藤枝は清水の右サイドで4 vs 3の数的優位の局面を作ろうとします。
ただそれに対して、走り込むアンデルソンには、榎本のマークをしていた北爪が、中村の指示を受けてスイッチして対応、榎本には中村がつき、走り込む杉田には、乾がきっちりついていくことで、榎本はバックパスを選択しました。山口戦では数的優位を作られて、何度も突破された右サイドですが、この試合は修正がなされていました。
前半10分、ファールではありませんが、北爪が西矢に接触して、西矢が顔を押さえて倒れたため、レフリーがゲームストップ。(レフリーの素晴らしい判断ですね)西矢が立ちあがったのをみて、清水ボールでゲーム再開。藤枝側が一瞬足が止まったところを見逃さなかった清水。中村から、右サイドに走った北爪にスルーパス。北爪はペナルティエリア外中央のバイタルにポジションをとる乾へ。乾は絶妙なタメを作って、PA内に走り込む北川へスルーパス。少しタッチが多くなり、北川はシュートを打てませんでしたが、乾の見事なプレーでした。こぼれ球を回収して、波状攻撃も、最後は山原が相手DFに当ててCKを獲得。清水の選手たちはなかなかシュートにいきませんでしたが、多少強引でも撃った方がいいですね。
前半14分、清水のビルドアップの場面。藤枝の良い同サイド圧縮で、山原のところで詰まったかと思いしたが、山原が体の向きによるフェイントを使って、中で受けにきた宮本に出してプレスを回避。これに反応した乾は、今度は左サイド際で、相手の背後にラン。宮本もそこにロングボールを出しますが、ここは北村が飛び出してスローインに逃げます。前半2分にもありましたが乾の背後に抜ける動きが良いのと、そこに清水の後方の選手もロングパスを供給し、陣地を回復しつつ、マイボールにするシーンが何度かありましたね。
前半18分、清水の初シュートのシーン。この時間帯から、「偽CB」の原が面白いポジションを取り、それに応じて、各選手のポジションが入れ替わり、フリーになる選手が増えてきます。丁寧にパスを繋ぎながらチャンスを伺う清水。高橋→原→ダイレクトで中村への落とし(レイオフ)、さらにダイレクトで中村→ブラガ。これが攻撃のスイッチになります。この際の清水のポジショニングが面白いです。
ブラガに入った際に、左サイドの大外には乾が入り、インサイド・ハーフレーンの位置に山原がいます。右サイドには宮本がいて、その空いたスペースに偽CBの原が位置しています。藤枝からしたら、誰につけばいいのか混乱しますよね。ブラガが得意の内側へのドリブルで時間を作った間に、各選手がスプリント。山原、乾と渡り、最後は乾が中に切れ込んでのシュート。そのこぼれ球が北川の目の前に来て、シュートは放ちますが、当たり損ねてしまい、GKがキャッチします。ただシュートを打つことでゴールが近づきました。
前半20分、乾がハーフラインから超ロングシュート。前にポジションを取る北村にプレッシャーをかけます。
前半21分、住吉がカットして縦の中村につけ、中村はまたしても見事なターンで相手のプレスを交わして、さらに縦パスで乾に通します。このように早いタイミングで縦にパスが2本繋がるとチャンスになりますね。前を向いた乾は、右サイドを爆速で駆け上がる北爪にスルーパス。北爪は完全に裏を深くとり、クロス。それに逆SBの山原がボレーシュート。左右のサイドを使った良い攻撃になります。この右サイドの北爪のオーバーラップは清水の狙いの一つでした。
前半の後半は清水がさらに押し込む展開
前半25分、藤枝の26番西矢の個人で清水のプレスを打開するという素晴らしプレー。GK北村がアンカーの位置に上がり、左に4番中川、右に16番山原で3枚で最終ラインを形成し、右CBの川島は高い位置に上がる、藤枝の得意のビルドアップの形。
北村がボールを持ちますが、西矢が平尾に手でジェスチャーして自分に近づくよう指示します。北村からの縦パスをわざとボールをさらしながら下がって受け、宮本を誘いだしたところで、あえて左足のインサイドで平尾にパス。西矢は左足を使うことでターンをスムーズにしてリターンをもらいたかったのだと思います。個人戦術のスキルの高さに敵ながら素晴らしいと思いました。ここは平尾がフリーで持って、選択肢が複数あったにも関わらず、パスミスをしてしまい、清水としては助かりましたが、藤枝のやりたい形が出たシーンでした。
前半25分、清水のビルドアップのシーン。最終ラインで権田が持ちますが、キックフェイントなどをして、藤枝の前線からのプレスを誘い出します。そこに反応したのが右WBの北爪選手。FWよりも高い最前線でサイドから中に絞りますが、そこに権田から正確なロングフィード。清水は中盤の選手は下がっていますが、左WBの山原も高い位置を取っており、これは藤枝の前と後ろを分断して、前線の4-5枚で攻め切るという戦術ですね。
北爪のヘディングは相手に引っ掛かり、中川がGKの北村に戻します。また西矢が中で受けますが、そこに対して宮本がプレス。西矢が北村に戻したところに、再び北爪がプレス。北村は苦し紛れにけり出しましが、ここは偽CBの原が宮本の上がったスペースを埋めた原が回収。二次攻撃に繋げます。
原→中村→宮本→山原と繋ぎ、最後は山原のクロスに乾が反応。相手がなんとか蹴り出し、CKになります。この権田→北爪というホットラインは、前半の45分にもありましたね。
前半32分、中断中に秋葉監督が北爪選手に、ジェスチャーでもっと中に切れ込むよう指示。
この試合、清水の前線からのプレスも非常に整理されていました。前半35分のシーン。藤枝のGKの北村は足元の技術には定評があるものの、利き足は右。左足に追い込むことを徹底していました。また北村の最初のターゲットは西矢。ここも牽制すると蹴り出すことしかできなくなる。このシーンも北川が左足に追い込み、西矢に対しては、乾と中村が挟むようにカバー。北村のキックミスを誘い、中村が中盤高い位置でカット。左サイドにいたブラガにスルーパス。ブラガがドリブルで切れ込み、得意の倒れながらの左足でのシュート。これは相手DFにあたりCKになります。
前半40分、藤枝のアンデルソンが怪我により、中川選手に交代します。
前半43分、清水の右サイドからの良い攻撃。原のヘディングのクリアを北爪が収めると、難しい体制からブラガにアウトサイドでの縦パス。ブラガはうまいターンで相手を交わし、そのままパス&ゴーで走る北爪にパス。右サイドを北爪が駆け上がります。乾がニアサイドを斜めに走ることでディフェンスをひきつけ、中央バイタルで浮いていた北川にパス。北川は、左足でシュートを撃っても良かったですが、キックフェイントで切り込もうとして相手に引っ掛かってしまいます。この時にも左WBの山原もファーでフリーになっていました。このように両サイドのWBが早いタイミングで最前線に顔を出せるのは、3-4-2-1のシステムの良さですね。実際にハーフタイムでDAZNで表示された平均ポジションは、山原が北川よりも高い位置で、最も前にいました。
チャンスの後にはピンチあり。藤枝が一瞬の隙をついてチャンスを作ります。前半44分、藤枝の司令塔、西矢から中央バイタルにいる矢村に優しい楔のパス。この時清水は高橋、住吉がお見合いするような形で、矢村に厳しくあたりにいくことができず、矢村は清水の両CBの間から、右足での豪快なシュート。藤枝の初シュートになりますが、ここは権田が高い集中力ではじき出します。昨季のアウェイ藤枝戦の先制点と同じような形で、冷や汗を流したサポーターも多かったのではないでしょうか。しかし矢村選手のシュートは強烈ですね。
逆に清水は、前半AT2分。左サイド山原の突破から、北川へのクロス。これは藤枝CBの山原がクリアしますが、バイタル中央にいた宮本にこぼれてきます。ただダイレクトでのシュートは右足の内側に当たり、枠は大きく外れ、クロスを競った後に前に残っていた北川の元へ。北川もシュートを放ちますがゴールを外れます。宮本は、まさにこのようなシーンでシュートを決めることができるようになれば、代表に呼ばれてもおかしくようなクオリティなので、更なる成長のために、シュート精度は磨いて欲しいですね。
最後に、前半終了間際のAT4分。ブラガが右サイドから強引に枠内シュート。それで獲得したCKから、高く浮いたこぼれ球を、北爪がダイレクトボレー。強烈なシュートでしたが惜しくもバーを越えます。
ここで前半の試合は終了します。
前半の総括
前半のスタッツはこなりました。
シュート数が11対1と圧倒的な差になりました。意外とボール支配率は清水が低いですが、ここはどちらかというと、清水が持たせていたという面が多かったように思います。さらに時間帯別にみたデータがこちらです。
前半の15分までにシュートが1本ということでもっと積極的に行くべきだったと思います。後半16分以降にシュート10本と、積極的なプレーが目立ちました。
ただこれだけ試合を優位に進めながらも、得点はゼロ。ゴール期待値も0.61と最後の部分でゴールに迫れていない点は課題が残りました。
後半の展開
後半序盤にさらにギアを上げる清水
ハーフタイムでの交代はなし。両チームの集中力が途切れない好ゲームとなる中で、清水が先制点を奪うのか、藤枝が我慢して守りながら一瞬の隙をつくのか、注目の後半が開始します。
後半1分、いきなり清水のチャンス。北川が50-50のゴールを拾って、乾にパス。この試合の狙いの通り、その瞬間には北爪・山原の両サイドが高い位置に走ります。北爪も秋葉監督の指示の通り、サイドレーンではなく、ハーフレーンまで内側に進入します。そこを見逃さなかった乾。絶妙な浮き球のパスで、そのまま北爪が絶妙なワントラップからシュート。これは北村が防ぎます。この山原と北爪が高い位置をとりつつ、北爪が内側に絞ってシュートを撃てるような動きをするシーンは後半何度か見られました。
後半2分から3分、セカンドボールを北爪が奪い、山原に展開。アーリークロスを上げます。GKが弾いたところを、偽SBとしていつも絶妙なポジションを取る原が回収。また右サイドに繋げて攻め込みます。ここは乾のドリブルが大きくなり奪われますが、奪い返したのちにまた左サイドに展開。山原→中村と繋ぎ、原がボランチの位置に入る代わりに、比較的真ん中で高い位置を取れている宮本に縦パス。宮本はヒールパスで北川に繋ぎ、乾とのパス交換からチャンスになりかけます。
藤枝もやはり光るのが西矢のプレー。後半4分のシーンで、清水は前線からプレスに行きますが、西矢はまずは左サイドでセカンドを拾って、ブラガ、宮本のプレスを交わしてボールを展開すると、今度は右サイドで受けに来て、宮本をターンで簡単に交わしてドリブルで前進。さらには、中央高い位置で受け直して、15番杉谷スルーパス。クロースかなと思うくらいの、素晴らしい個人戦術で、一人で局面を打開します。この西矢選手、ずっと顔を振って周りを見ていて、あらゆる方面に指示も出していて、本当にすごい。しかも左利き。(清水にいつか来ないかな、、、)
後半7分、CKからの流れで、今度は北爪がサイドレーンに出て、右サイドペナルティエリア内のニアゾーンを、北川が走り込む形。
北川のクロスはわずかにブラガに合いませんでしたが、さらにファーで乾がフォロー。波状攻撃に繋げます。またも右サイドで北爪と北川の「北北」コンビがラインを突破。今度は北爪がパス&ゴーで裏をとります。グラウンダーのボールをニアでブラガ絶妙なスルーをして、乾がPA中央でトラップして相手を外してフリー。ただ藤枝14番の中川が決死のタックル、これを気にしたのか乾のシュートはバーを越えてしまいます。しかし素晴らしい攻撃でした。北爪を中心とする右サイドの攻撃、素晴らしいですね。
この時間帯、清水が攻め続けて、藤枝の選手をゴール前にくぎ付けにします。ただ後半13分のオフサイドで一旦攻撃が終了します。(このあたりの線審の判断も見事ですね、、、)
後半14分。次は左サイドの攻撃。右サイドの宮本のロングボールに北爪が走り込みキープ。宮本→乾→中村→山原と繋ぎ、山原が乾と大きなワンツーで抜け出します。乾のスルーパスは勢いがあったため、山原は左足ではなく右足のアウトでニアにクロス。技術の高いクロスでしたし、北川も反応していましたが惜しくも合わず、北村がセーブします。
タンキの投入と待望の先制点
清水の波状攻撃は続きますが、清水はゴールを割れず、後半18分が経過。ここで秋葉監督が動きます。少し疲れの見えるブラガに代えて、タンキを投入。システムは代えずに北川がトップ下という新しい形にします。後半戦に向けてタンキの覚醒は一つのキーだと思っており、タンキ、北川、乾が共存できるこのシステムは一つのオプションになりそうですね。
そしてこのシステムの良さが活きる形で、待望の先制点が生まれます。
後半22分、相手のロングボールを高橋がヘディングで競り勝ち、山原の足元へ。サッカーには不思議なもので、何故か左サイドの前線でドフリーになっている乾。そして、山原は間接視野でそれを捉えたのだと思いますが、身体の向きは中央を向きながら、その乾に縦パスをつけます。この時点で清水は3 vs 2の状況。藤枝2番川島選手の一瞬の油断が命取りになってしまいます。
タンキが基本に忠実にニアサイドにダイアゴナルランをして、4番中川創をひきつけ、ファーでフリーになった北川が落ち着いてトラップから左サイドに流し込み、ゴール。北川はこれで今季9点目となり、清水にとっての待望の先制点を生み出しました。北川選手は第2子となる長女が生まれたことをお祝いするゆりかごダンス。最高のプレゼントになりました。
先制点を奪われた藤枝の反撃
さて、こうなると攻めに出ていかなければいけない藤枝。選手たちは攻撃に比重をかけます。前に出てくる相手の逆手をとって、追加点を奪いたい清水と、ゲームは異なる展開になります。
後半26分には、山原がペナ角からシュート。GKの前でワンバウンドする難しいボールでしたが、北村がうまくセーブ。
後半27分は、再び西矢。乾にプレッシャーをかけて縦にボールを供給。本当に良い選手。その流れから、2番川島、26番西矢とシュートのチャンスを得ますが、パスを選択しシュートを撃てず。
後半28分、藤枝は2枚替えをしてさらに攻撃に比重を高めます。小川創に替えてウエンデル、13番大曽根に代えて、27番前田を投入します。
一方で清水も、後半32分に2枚替え。宮本→矢島、北川→白崎の交代をします。矢島がボランチ、白崎がトップ下に入ります。
この交代で、豊富な運動量で聞いていた、ユースコンビの北川・宮本がいなくなることで、清水は少し引き気味となり、藤枝にペースを掴まれます。後半35分に、藤枝はさらに2枚替え。15番杉田に代えて、20番の大学生、閑田がJリーグデビュー。またボランチ平尾に代えて、6番新井が入ります。
後半36分に、さっそく閑田が起点になり、榎本のシュート。清水側の守備は、相手のドリブルに対して、引いてしまう形が目立ちます。
後半38分、清水の反撃。山原のペナ角のシュートから、DFに当たってリフレクションしたボールが矢島の目の前に。ただこれは触れれずにゴールを割れません。
後半41分、清水は最後のカードを切ります。山原→吉田、乾→郡司。郡司はアイスタでは初出場になります。
ただこの交代の直後に、藤枝に決定機。後半42分、吉田の中途半端なクリアに、西矢がタンキに競り勝ってヘディングで前に送ります。このバウンドにうまく合わせた矢村が、左足で豪快なボレーシュート。不意打ちのようなタイミングでしたし、遠目でも入ったと思いましたが、権田が超スーパーセーブ。90分の中で、1秒1瞬集中していないとこのセーブはできないと思います。これは権田じゃなければ止められないというようなシーンでした。
こういうときにガッツポーズで他の選手から祝福されるような形ではなくて、マークの甘くなったDFに一喝するあたりが権田選手だし、それは清水の弱い面を補強してくれていると思います。権田選手、まさに影のMVPといっていいほどの働きでした。
AT1分には、北村のロングボールに競り合った吉田が倒されてしまい、決定的なピンチ。ただこれはクロスの部分をおそらく高橋が決死のタックルでクリア。ピンチをしのぎます。
最後のCKのピンチの場面、クリアしたボールを郡司が見事にボールキープをして、ドリブルで持ち上がり、最前線まで行って自分のボールに。このキープは非常にありがたかったですね。
後半の終盤で少し攻め込まれてしまったことは課題ですが、このまま清水は守り切って、1-0とウノゼロの勝利になりました。
後半の総括
後半のスタッツはこうなりました。
後半はシュート数こそ減りましたが、ボール支配率は高く、清水が試合をさらに支配したことがあわかります。
やはり、得点後の76-90分の時間帯では、藤枝が優勢であったことがシュート数からもわかりますね。この辺りの試合の締め方は課題が残ったと思います。
試合全体の総括
この勝利で長崎の結果を待たずに、首位での折り返しが決まりました。勝ち点としても19試合で43と、優勝ペースの1試合2点と比較しても5点の貯金ができたということで、上出来、これ以上ない結果だと思います。
そして、横浜FC以降、相手が対策をしてくる嫌な流れの中で、相手の対策を上回る、清水の戦術を示せたことは大きな収穫だと思います。この3-4-2-1の可変システムは、これまでのビルドアップや、攻撃時の前線の人数不足を解消する上でも非常に有効なシステムのように思います。今後さらに熟成をしてほしいですね。
もちろん貴重なゴールを奪った北川選手は文句なしのMVPだと思いますが、他に何名か印象に残った選手(と審判)をピックアップします。
影のMVP権田選手
前半及び後半終了間際の矢村選手の強烈なシュートを2本スーパーセーブ。藤枝の枠内シュートはこの2本だけだったわけですが、だからこそこの少ないチャンスに決定的なシュートを撃ってきた矢村選手は脅威ですし、このシュートをとめた権田選手は本当に素晴らしいと思います。押し込む展開の中で、どうしても集中は切れてしまうと思うのですが、一秒一秒集中を切らしていないからこそのセーブ。本当に素晴らしいですね。
新システムで輝いた乾選手
次に乾選手。乾選手が復帰してから1勝2敗という成績には、本人が最も悔しさと責任を感じていたでしょう。これだけの実績、W杯でも、リーガでバルセロナ相手にも複数ゴールを挙げているが選手が、こうした反省をして、100%ファイトしてくれる。これほど素晴らしいことはないと思います。乾がこれだけ走ってくれたことが、今回の勝利に繋がりました。
右サイドの職人北爪選手
この試合90分走り続けた北爪選手。おそらく走行距離のデータがあったらすごいことになっていたと思います。北爪にとってもこの3-4-2-1は最も嵌るシステムで、今後活躍の機会が増えそうです。やはりスピードはサッカーにおける最大の武器の一つ。素晴らしかったです。
クロス9本の山原選手
なんとこの試合一人でクロスを9本上げたようです。北爪同様このシステムだと山原が通常より高い位置でボールを受けられるので、彼の攻撃的な良さが際立ちますね。得点に繋がる乾へのパスもそうですが、誕生日に相応しい最高の活躍をしてくれたと思います。
おまけ①:藤枝の西矢選手
いやー、まだ24歳、下部リーグからのし上がってきた西矢選手。左利きのボランチ。まさに清水が必要とするタイプの運動量が豊富で、攻守にさぼらない素晴らしい選手だと感じました。今後も注目していきたいと思います。
おまけ②:ポーランドの審判団
こんなにストレスのないジャッジは初めてというほど、素晴らしいジャッジでした。笛を吹く判断が早いし、判定の難しいジャッジにはきちんと選手として対話する。実際に接触して怪我が懸念されるようなシーンでは、ファールの有無に限らずしっかり試合を止める。本当に素晴らしかったですね。
次節からは後半戦。一度戦った相手との再選になります。特に夏の移籍シーズン前の数試合は、基本選手も変わっていないのでこれまで以上にお互いの対策や戦術が鍵になりますね。
特に清水にとっては、課題となっているアウェイ2連戦となります。愛媛は天皇杯も大勝しているし、ホームでも決して楽には勝たせてくれませんでした。続く秋田も同様で、このアウェイ2連戦が優勝を占う上でも非常に重要な一戦となりそうです。是非勝ちたいですね。
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