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歌を読む 2 _BEGIN 「誓い」(ホントはおもしろい現代文・番外編)


 ☆BEGIN 「誓い」をお聞きになってから、本稿をお読みください☆
                
憧れ。光に満ちた栄光の姿は、めまいを起こすほど魅惑的で、人を惹きつけてやまない。
いつしかそれに、自分を重ねて、人は夢を抱く。
夢が大きくなるほど、「日常」は味気ないものとなり、それに耐えきれなくなったとき、人は夢に向かって走り出す。

だが、往々にして困難が立ちはだかり、「挫折」の二文字が迫る。
以前はたやすく思えた夢の実現も、現実的な困難がひしひしと迫り、遥か遠く、手の届かないものに思えてくる。

疲れ切った心に浮かび上がる諦めの気持ち。しかし、ここで投げ出せば、挫折は挫折のまま、動かしようのない過去となり、
それにもかかわらず、「思い出」の、淡く甘いイメージに塗り固められてしまう。
「もう、どうにもならない。精一杯やった」。だから、夢を追うことをやめて、日常に帰っても罪はない。
だが、このままでは終われない。

批判、中傷、嘲笑…冷たく吹き荒れる世間の風。かつての漠然とした自信も砕け散って、焦燥や不安が渦巻く。さらに、年老いた親が病に倒れたりすれば、家族への思いも募る。
「このまま夢を追っていて、いいのか」。葛藤。湧き上がる思いに、胸は張り裂ける。
しだいに、夢を追う心は、導くものもない未知の世界で、夜の闇へと沈んでいく。

だが、たとえ、夢は遠のいて、色褪せ、霞んでしまっても、このままでは終われない理由がある。帰れない理由がある。

日常を離れ、夢に突き進むその前に、大きな別れがあったとしたら。
仲間。一緒に、夢を抱き、励まし合い、理解し合った仲間。その仲間が、倒れたとしたら。

夢は、彼と一緒に創り上げるはずだった。夢の実現のためには、どんなに彼が大切であったか。
そして、誰よりも自分を理解していた彼が、自分にとってどんなに大切であったか。彼を失って初めて理解した。
それに気づいたことは重要だが、それでも、代償はあまりに大きい。彼と一緒に実現するはずの夢、分かち合う喜び、彼とのこの上ない友情…すべて、消えてしまった。

本当の悲しみは、声にならない。心の底から湧き上がる熱い思いは、彼を求め、彼を愛おしむ。
だから、彼に誓った。

夢を追う限り、人生の夏は終わらない。未知の荒野を恐れず進む心のある限り、永遠に青年であり続ける。その扉を開けて、夢への果てしない旅を歩き出す。

悲しみは、ときに歩みを遅らせるが、むしろ、僕らを奮い立たせる。それは彼との「約束」があるから。僕らは、悲しみの中、彼に、そして自分に誓った、
「僕らは明日へ歩みを止めない」と。

僕らは歩き続ける。嵐がやみ、輝く星空を見上げる日まで。その時にはきっと、夢見た栄光が動き始めるに違いない。
僕らは歩き続ける。新しい世界に向かって。

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