III期メラノーマにおける術前全身療法:リンパ節郭清術への影響は?

III期メラノーマにおける術前全身療法:リンパ節郭清術への影響は?

皆さん、こんにちは。 今回は、進行期メラノーマにおける新たな治療戦略である術前全身療法(NAST)が、リンパ節郭清術後の転帰にどのような影響を与えるのか、最新の研究結果を基に解説していきます。

術前全身療法(NAST)とは?

従来、ステージIIIメラノーマの治療は、まず外科的にリンパ節郭清を行い、その後、再発リスクが高い場合に術後補助療法として全身療法を行うのが一般的でした。しかし、最近では、手術前に全身療法を行うNASTが注目されています。

NASTの利点:

  • 高い病理学的奏効率(腫瘍が縮小・消失する割合)

  • 高い無再発生存率

NASTは手術に悪影響を及ぼす?

NASTは、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬など強力な薬剤を使用するため、手術への影響が懸念されていました。具体的には、

  • 組織の炎症や線維化による手術の困難性

  • 免疫関連有害事象(irAE)に対するステロイド治療による創傷治癒への影響

などが考えられます。

オーストラリアでのコホート研究

そこで、オーストラリアのMelanoma Institute Australiaで行われたコホート研究では、NASTがリンパ節郭清術後の合併症、罹患率、教科書的転帰(良好な短期術後転帰の指標)に及ぼす影響を調査しました。

研究対象:

  • 2014年から2022年の間にステージIIIメラノーマに対してリンパ節郭清術を受けた患者

    • NAST群:89人

    • upfront surgery群(術前療法なし):79人

研究結果

  • 術後合併症発生率:両群に有意差なし

  • ステロイド治療による合併症発生率への影響:なし

  • 術後合併症(血清腫、リンパ浮腫):両群に有意差なし

  • 教科書的転帰達成率:両群に有意差なし

結論

NASTは、リンパ節郭清術後の合併症、罹患率、教科書的転帰に悪影響を及ぼさないことが示されました。つまり、NAST後でも安全に手術を行うことができると言えます。

まとめ

  • NASTは、III期メラノーマ患者にとって有効な治療戦略の一つです。

  • NAST後でも安全にリンパ節郭清術を行うことができます。

  • NASTは、手術不能な症例や、より高い治癒率が期待できる症例に対して考慮する価値があります。

参考文献

Zijlker, L.P., Chen, H., Spillane, A.J. et al. The Effect of Neoadjuvant Systemic Therapy on Surgical Outcomes After Lymph Node Dissections for Stage III Melanoma; An Australian Cohort. Ann Surg Oncol (2024). https://doi.org/10.1245/s10434-024-15274-0


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