ミトコンドリアDNA

doi:10.1038/s43018-023-00721-w

Mahmood, M. et al.による論文「Mitochondrial DNA mutations drive aerobic glycolysis to enhance checkpoint blockade response in melanoma」は、Nature Cancer誌に2024年に掲載されました。この研究では、メラノーマ(黒色腫)のモデルにおいて、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異ががんの代謝および免疫応答に与える影響について調査されています。

概要

  • Population (対象): メラノーマのマウスモデルと人間の患者

  • Intervention (介入): mtDNAの複合体I遺伝子、Mt-Nd5に対するトランケーティング(切断)変異の導入

  • Comparison (比較): 変異を導入しない野生型のmtDNAとの比較

  • Outcome (結果): mtDNA変異を持つ腫瘍では、エアロビックグリコリシス(好気的糖分解)が促進され、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答が約2.5倍に向上しました。

Introduction (背景)

ミトコンドリアDNAの変異は、がんゲノム中で最も頻繁に突然変異が生じる領域の一つですが、これらの変異が腫瘍生物学にどのような影響を与えるかは議論されています。この研究は、mtDNA変異ががんの代謝と腫瘍生物学を機能的に調節し、治療の機会と治療の分類に役立つ可能性があることを示唆しています​​​​。

Method (方法)

著者らは、いくつかのメラノーマモデルにおいてMt-Nd5にトランケーティング変異を導入しました。これらの変異はWarburg効果に似た代謝シフトを促進し、マウスと人間の両方の腫瘍微小環境を再構築しました​​。

Result (結果)

mtDNA変異を持つ腫瘍は、好中球依存的な方法で免疫チェックポイント阻害に対して感受性を示しました。さらに、mtDNA野生型の腫瘍でも、酸化還元不均衡の誘導によって同様の効果が引き起こされることが示されました。mtDNA変異の異質性が50%以上の患者の病変は、mtDNA野生型のがんと比較して、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答率が約2.5倍に改善されました​​​​。

Discussion (考察)

この研究は、mtDNA変異ががん代謝と腫瘍生物学に重要な役割を果たし、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答を高めることができることを示しています。これは、がん治療における新たな治療戦略の開発に貢献する可能性があります。また、mtDNA変異のスクリーニングは、治療応答の予測因子としての利用や、患者の治療計画における重要な要素となる可能性があります​​​​。

この研究は、がんの代謝と免疫応答の理解を深め、メラノーマ治療における個別化医療の展望を広げるものです。

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