第1回 「肉体を鍛えることは、自分探しの旅である」
Interview /村西とおる×デポルターレクラブ竹下雄真(全4回)
Deportare Club
2019.11.29
村西とおる プロフィール
前科7犯借金50億、米国司法当局から懲役370年を求刑された、「アダルトビデオの帝王」と呼ばれた男。 1948年9月9日生まれ。福島県出身。高校卒業後、上京し、英会話教材のセールスマン、テレビゲームリース業で成功をおさめた後、裏本制作販売に転じ、北大神田書店グループの会長に就任、「裏本の帝王」と呼ばれた。 その後、黎明期のアダルト・ビデオ業界に参入。「顔面シャワー」、「駅弁」、「ハメ撮り」と いった革新的なスタイルをAVに取り入れる。多くの人気AV女優を世に送り出し、1980年代のAV黄金期を築き上げた。これまでに3000本のAVを制作。2018年8月、『全裸監督(The naked director)』が Netflixオリジナルシリーズとしてドラマ化。全世界190カ国に配信。2019年11月、ドキュメンタリー映画 『M/村西とおる狂熱の日々 完全版』が公開。
お待たせいたしました、肉体に向き合う時代です
村西とおる(以下:村西)
今日は竹下社長とお会いできるというので、とても楽しみにしておりました。私は起業家、挑戦をする方が大好きなんです。
驚きましたのはね、この東京の最高のスペースでこういうジムを構えられて、素晴らしいお仕事をされていらっしゃるということです。
世のため、人のため、これが事業でございます。儲けはあとからついてくる。人間の健康を追求するデポルターレクラブは、まさに社会のために貢献する事業ですね。
竹下雄真(以下:竹下)
そうおっしゃっていただき、光栄です。
村西:
私もね、最初は金儲け、金儲けって、そればかり考えて、ビジネスをしていたんですよ。でもそういった時期にはあまり儲からないのですね。そのうちね、皆さんにどうしたら喜んでいただけるかということだけを考えてそこにシフトしていったら、自然にお金が入ってくるようになりました。
社長はどうしてトレーニング業界に進んだんですか?
竹下:
僕はトレーナーの学校に在学中、シアトルでトレーニングの指導を学んだんです。今から20年くらい前で、当時の日本にはまだパーソナルトレーニングという文化がありませんでした。現在もそうですが、日本はアメリカのフィットネスを数年遅れで追いかけている。だからパーソナルトレーニングという分野にはきっとチャンスがあって、おもしろいことができるんじゃないかと思ったんです。
村西:
先見の明をお持ちなんですね。
私の仕事でもね、やっぱり「肉体を鍛える」ということはとても大事なんですけど、どうしても「時間とお金を投資しているからには、最大の効果を得たい」って考えちゃうんですね。だけど、自己流のトレーニングではなかなか満足にできない。太ももだけパンパンに張ってしまったり、体つきがアンバランスになってしまったりしますからね。
だから、デポルターレクラブのようなところで合理的かつ科学的に体を鍛えるということは、体が持っている最高の可能性を引き出すことに繋がるんでしょうね。
お金じゃ買えないですからね、自分の健康と自信は。
竹下:
ありがとうございます。確かに村西監督のお仕事も、体力勝負の部分がありますよね。
村西:
男性も女性も外見というか、自分の持っている肉体は自分自身のバックグラウンドとして重要な役割を果たしていると思うんですよ。ご記憶があるかわかりませんが、昔ね、三島由紀夫さんと石原慎太郎さんの論争がありました、肉体についてのね。普段から、三島由紀夫さんと石原慎太郎さんはライバルとして知られていて、何度か火花が散るような対談をしていたんですけど、そのなかで肉体について意見の相違を見せたことがあったんですよ。
ジムなどで体を鍛えていた三島由紀夫さんは肉体の造形美といいますか、肉体の存在感やたくましさ、美しさを誇示したんです。一方の石原慎太郎さんは、肉体はマッチョであるだけじゃなくて、俊敏力や瞬発力、持続力などの機能性も必要であることを主張したんです。要するに、肉体は外見だけで規定されるものではない、ということですね。私はどちらかというと慎太郎派なんですが、社長はどう思いますか?
竹下:
我々は普段、トップアスリートのサポートをさせていただくことも多いので、慎太郎さんがおっしゃる通り、外見の美しさだけでなく、機能面もとても大切だと思っています。フィジカル的要素がなければ闘うことはできませんから。
しかし、クラブを運営するビジネスのニーズとしては、三島さんのような考えの方も大勢いらっしゃいます。一般の人だとそこまで俊敏性や持久力を求める人は少なくて、むしろ、「痩せたい」とか「鍛えたい」とか、そういうニーズが多いので。
村西:
いずれにしても、限られた時間とお金のなかで、自分の肉体の可能性を最大化するには、やはりトレーニングのエキスパートにお願いしなければなりませんね。そうでなければ、肉体の可能性が最大限となった頃には棺桶に入っていた、なんていうことになりかねませんからね。
竹下:
確かに、いかに最短で労力を少なくして、合理的に鍛えるかということはとても大事ですね。特に、ビジネスエリートとして活躍されている方たちはお時間もないですし、1回2時間や3時間トレーニングすると、たとえば怪我や病気をした時、もとの状態に戻るのがまた大変です。それで心が折れてしまうということもあります。
だから僕らは通常、90分間のトレーニングを週1回ペースで受けていただくのを基本にしています。最低でも週1回はトレーニングを受けていただかないと、僕らも責任が取れないので。
新しい自分に出会うためのプロセス
村西:
なるほどね。やっぱりそういう専門的なスペシャリストにアドバイスをもらえるというのは、とても心強いですよね。
よく、「自分探しの旅」という言葉がありますね。私の認識でいえばね、“自分が何ものか?”ということは、世界の果てまで行ったって見つけられないと思うんです。じゃあどうしたらいいかというと、まずは、誰かに褒めてもらえることをやること。
自分自身が何ものかということは自分が決めることではなく、他人が決めることなんです。
他人に「あなたはこういう人間だ」と評価されて、「ああ、俺はこういう才能があるのか」「こういう存在意義があるのか」と認識することができると思うんですよ。
だからトレーナーの方に、「こういうところは素晴らしいですね」とか「順調に進んでいますよ」などと言ってもらえると、「ああ、ちょっとくらい自分のことを褒めてあげてもいいのかな」と思えるようになりますよね。
そう考えると、体を鍛えるということは、ある意味、「自分探しの旅」ということになりますよね。自分の体を鍛え、肉体の可能性を最大化するということは、まったく新しい自分に出会うプロセスでもあります。
竹下:
まさにおっしゃる通りで、僕らトレーナーが常々心がけているのは、会員様の良いところをどんどん褒めようということ。やはり、褒められれば人間、やる気も伸びますから。
村西:
ハリウッドのメイクアップアーティストでね、90歳を過ぎた女性がいるんですよ。白髪のね、とても有名な方なんです。
彼女がなぜ、そんなに評価されているかというと、気遣いがとても素晴らしいんですよ。たとえば新人女優がメイク室にいらっしゃるでしょ。制作費数十億円の作品の主演に抜擢されたなんていうと、緊張で打ち震えているわけですよ。
すると、メイクアップアーティストの女性がそっと寄り添ってきてね、「大丈夫よ」ってさりげなく励ましてくれる。
「誰だって、ハリウッドデビューの時に緊張するのは当たり前。今、あなたは鏡の前で緊張しているけれど、今から数十年前には、あのマリリンモンローだって、同じように震えていたんですから」
こういうアドバイスだけで、新人さんはフッとクールダウンするんですよ。
竹下:
なるほど。素晴らしい気遣いですね。
村西:
やはり、そういうエキスパートの存在ってとても大事なんです。私もね、毎日、自己流でトレーニングをしているんですけど、ひとりでぶら下がり健康器にぶら下がっているだけだと、すぐに挫折しちゃうんです。
まあ、私の場合はせいぜい“駅弁”で歩く程度なんですけどね、それでも体は鍛えないといけないと思っているんです。
だから、社長のようなプロフェッショナルに指導していただきながら、悪いところを補って、良いところを伸ばすような体験は、お金に変えられないと思いますよ。
竹下:
僕も常にスタッフに言っているのは、褒めることが大事だということで、クラブが心地いい空間であることを常に心がけています。そのおかげかうちのクラブは退会率が平均に比べてずっと低く、毎月0.7%くらいに抑えられています。
村西:
それは大事なことですね。こちらの会員様は男性と女性の、どちらが多いんですか?
竹下:
6:4で、男性が若干多いくらいです。
村西:
私も、ときどき海外でロケをするんですけどね。日本人に比べて海外の男性の方が、自分の肉体を鍛えることにもっと専念していますよね。
自分を鍛えることもできないような、忍耐力や集中力のない人間には、ろくな仕事ができるわけがないって、周りからバカにされるんですよね。
やはりきちっとマッチョであることも、ビジネスマンとしての評価基準になっているんですよね。
竹下:
さきほど監督がおっしゃったように、最近のスポーツ科学では持久力や機動力など体のポテンシャルと仕事のパフォーマンスに相関関係が見られることがわかってきているんです。
ビジネスマンにとっては、体を鍛えることが、これからもっとスタンダードになっていくだろうと思います。
現在、日本人のフィットネス参加率はまだまだ少なくて、だいたい3%前後です。一方、アメリカは19%前後くらいです。
日本のフィットネスはアメリカの数年遅れと言われていますし、日本ではこれからラグビーのW杯やオリンピックなど、世界が注目するビッグイベントが相次いで開催されます。そうした点を考えれば、日本のフィットネス人口はこれからもっと伸びていくだろうと思いますね。
村西:
私も、昔はラグビーをやっていたんですよ。今は150回の腕立て伏せを朝晩2回、やるくらいですけどね。ほら、“駅弁”やらなきゃいけないから。
でもね、我流なんですよね、だから効果がいまいちわからないし、挫折もしやすい。
こういうところでトレーニングを指導してもらえたら、私の人生そのものももっと変わっていたかもしれないなと思いますね。
社長みたいにマッチョな体つきをしていると女性にモテるでしょうし、男性も「こんな体になりたい」と憧れて、クラブの会員になる方も多いでしょう。
竹下:
いやいや、そんなにモテないですし、海外だと、僕みたいな体つきの男性はゴロゴロいるんで……。
村西:
でもね、本人が生まれ持った可能性をできる限り追求し、美の最大化を発揮するのは、すなわち、もう一つの人生を手にすることと同じだと思うんです。素晴らしいですよ。
体を鍛えたり、美しさに磨きをかけたりすることで、これまでとは違った人生を手に入れることができることも多いでしょうし、貪欲にそうした自分を見つける“旅”に出ることは、自分を成長させ、新たな自分に出会う旅にもなるでしょうしね。
竹下:
確かに、体が変わると心持ちや性格なども変わりますね。
「生意気だったらお許しください」
村西:
そうやって、みなさんが変化していくお手伝いをしていらっしゃるトレーナーという仕事は、本当に素晴らしいですね。
「私はあなたにもう一つの人生をプレゼントさせていただきます。生意気だったらお許しください」という姿勢です。
「お待たせいたしました、お待たせし過ぎたかもしれません」と社長が出てきてトレーニングをすれば、「待ってました!」となるでしょう。
竹下:
そのフレーズ、使っていいんですか(笑)
村西:
もちろんでございます。
なんといってもね、社長自身がそういう体をしていて、ご自分で体現しているのですから。
「私が満足しているこの世界を、生意気なようですが、みなさまにもおすそ分けしてさしあげたい」という、謙虚なお立場でみなさまのお手伝いをする。これはね、いくらでもおすそ分けしてもらいたいですよ。
竹下:
いや……、ありがとうございます(笑)
村西:
我々はね、この世界を生きていて、持って生まれた宿命や遺伝子などではどうしたって叶わないこともたくさんあります。この過酷で生きづらい世界。でも、肉体や健康は最低限、自分の鍛錬や訓練でどうにでもなります。そうでしょ?
竹下:
確かに、世の中は自分の力でコントロールできませんが、ある程度の健康は自分で管理することができますね。
村西:
そうした人間の営みをお手伝いするトレーナーという職業は、本当に素晴らしいものだと思います。
だいたい商売というものはね、みんな自分のためにやっているんですが、社長の場合は、みなさまのためにならなければ誰もお金を持ってきてくださらない。
そうじゃなければ、商売を持続できないでしょ?
私はね、有名人やお金持ちは、単に運がいいだけのことだと思うんですよ。自分の力だけで稼いだとか、有名になったとか、そういう人はいません。必ず誰かのお世話になって、力を貸してもらっている。
だから、実力がある人や有名人やお金持ちは、世の中に何をしなければならないか、いつでも考えていなければならないんです。たとえば、自分の元気を分けてあげたり、明るい気持ちにしてあげたり、また、自分が持っているスキルでみなさんがもっと健康に活躍できるお手伝いをする。そうしたことは、世の中に対するご恩返しになりますから。
竹下:
そうした気持ちはつい忘れてしまいがちですが、とても大切なことですね。
村西:
それから、素晴らしいのは社長のお人柄とやさしい目。それが人間性を表していますよ、リーダーというのは社長みたいな方でなければなりませんね。
竹下:
いや……(笑)
あまり褒められると、監督の作品に出たくなります。
村西:
ぜひ、お願いしたいですね。
でもね、私は何といっても社長に感動しているのは、挑戦する気持ちを持たれていることですね。
いまみんな挑戦することはリスクだと思っている。何かにチャレンジをすると、そんなことをするのは大バカ者みたいに思われることが多いんですよ。
でもこんな素晴らしい一等地で、こういう素晴らしいトレーニングジムを作られることも社長ご自身の挑戦だと思いますし、私のような者を対談のパートナーに選んでいただいたということも、挑戦だと思うんですよ。
私は、これは社長のプライドだと思うんです。というのもね、私のような者でも、ありがたいことに今、少しだけ社会で話題になっていて、そういう人間を呼んで話をして、吸収できるものはなんでも貪欲に吸収してやろうという気持ち、それがプライドです。
上から目線で「あ~? AV監督だ?」というような感じで話を聞くような態度でいることがプライドであってはならないんですよ。貪欲であること、なんでも吸収できるものは吸収してやろうということ、そういう姿勢が大事なんです。
竹下:
こちらこそ、お越しいただいてうれしいです。
村西:
今回ね、社長からお招きいただき、ギャラ一千万円と聞いて、驚いたんですよ。そんなにもらっていいのかって。
竹下:
いや、出世払いでお願いします(笑)
村西:
しかしね、自分自身に必要な情報を得るためには果敢に挑戦していく、それが竹下社長のプライドであって、そうした挑戦こそ、二度ない人生を生きる醍醐味であると考えます。
(つづきます)
2019.12.6
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◆日程:2019年11月29日(金)公開記念前夜祭!!
会場:テアトル新宿
時間:20:30上映回
上映前舞台挨拶登壇者:村西とおる、西原理恵子、高須克弥、片嶋一貴監督 MC:有村崑
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/
◆日程:2019年11月30日(土)
会場:丸の内TOEI2
時間:11:00上映回
上映後舞台挨拶 登壇者:村西とおる、野田義治(サンズ会長)相沢みなみ(FANZAアダルトアワード最優秀女優賞受賞)
https://toeitheaters.com/theaters/marunouchi/