雑記1119「相手の立場には立てない」

SHOWROOM社長の前田裕二氏は自分より若い男なのに珍しくかなりお慕いしておるほうなんだけど、さっき久々に回ってきたポスト見たら珍しく反対意見になった。

「何を」するかは勝率に関わってくるからだいじで、どれだけデキる人でもそもそも登る山が間違ってると山頂に着いてもなんともならん、みたいな事はある。
が、それでも自分は「誰と」するかが何よりだいじで、「何を」するかなんて1%ほどしか大切じゃない。

って言うんだね。
彼はホントオレ的にはバランス良い意見の持ち主だし、ホント尊敬してるんだけど、こうも違うこと（オレと）をこうもハッキリ言われるとポカーンとしかできなかった。
あぁ、ディスってるように感じるかもだけど、そうじゃなくてね。実際ポカーンしかできないじゃんか。昔は「絶っっっ対お前が間違ってるわ」なんて思ったもんけど、この人は間違えてもいないしウソもついてないだろうから、どうあっても平行線っていうことがらは有るんだなぁと思った。
オレはまったく真逆だ。何かする人なんか別に誰だっていい。嫁以外は。

前田氏を良く、オレを悪く言うなら、彼が優しい人でオレが本当に冷たい人なんだろう。自分の冷たさは自覚あるし、彼がただの優男じゃなく真に愛の深い人であることもオレは知っている。そういうエピソードがようさんあるしね。
彼は人間を非常に愛している。SHOWROOMって会社を作った原動力もそこにある。真っ当な努力をしてるのに、生まれた環境のせいで光の当たらない表現者がいることがイヤだ…。そんな思いからバーチャル空間にライブハウスを作った。

彼を悪く…いや、悪くはまったくないんだけど、違う視点で言うなら、たとえ小6の時に弾き語りで街頭で何万も稼いでいても、どれだけ音楽に触れることが好きであっても、「あぁ、この人は表現者ではないんだなぁ」と思った。

もちろん、表現者でなくてもいいんだけどね。だけど、「登る山が違う」「勝率」なんて言い方は、まるで正解があるかのような、多くの経営者とサラリーマンが指標とするような生き方だなぁと思ったんだな。
いや、いつもは（多くの）経営者と（これも多くの）サラリーマンを同列にすることなんてないんだけどね。ここでは一緒にした。つまり、「何が当たりなのか、ひと儲けできるのか」っていう思想においてだ。

だけど、真の作り手は（自分をそこに入れることになるのが恥ずかしいが）、「誰と」なんてことはどうでもいい。
「誰」っていうのは言うまでもなく、この世の、今生の「誰」であって、それは、たまたま生まれついた場所の、その校区の学校の、その中のクラスの、誰とたまたま仲良くなるかということと同じだ。

これは正直言うのも恥ずかしいが、オレはオレの歌が世に出なくても、もう一度自分の歌を来世でも聞きたい。
つまりオレのやることは決まっていて、これ以上の山が無いことは感覚…いや、それより深いところでわかる。
その山がたとえ世間から見たら大した山でなくても、だ。だから勝率なんて発想の湧くべくもない。冗談じゃない、と思う。

いや、ひょっとするとオレの中では、山が変わる可能性はある。
絵のほうに魂を吸い寄せられるかもしれないし、嫁に生涯をかけて美味いものを食わすことに心血を注ぐかもしれない。
後者のほうでは「誰」はだいじな要素に見えるけど、これは別に嫁の嫁性がだいじなわけじゃなくて（もちろん嫁の嫁性は何よりだいじなんだが（ややこしいなオマエ））、それは「たまたま隣に来てくれた人」という意味でだいじなのだ。
つまりだいじにすると決めているから（決めたわけでもないんだが（ややこしいなオマエ））、だいじなわけだ。

が、それにしても、山がなんでもいいとはまったく思わないんだよ。
ここでいう「山」とは、ある意味「自分」なんだろう。オレは来世でオレに会いたい。オレの残した何かをオレは、オレでない別の誰かになって、しかし強烈に、「あぁ、そういやぁこんなの作ったなぁ」と思い出してみたいのだ。あぁ、嗤わば嗤え。

長渕が以前、「最後には自分の名はどうでもいい。だけど歌だけは、作者不詳でも残ってくれ」と言っていた。あの我の塊のような男がそう言ったことに驚いたんだけど、この「歌よ、残れ」っていう感覚が、オレの言う来世の世迷い言と同じ源泉であるとオレは思う。長渕に聞いたわけでもないけどね。

前田氏は分析好きで、オレも彼のそのレベルはかなりのものだと思うけど、計算などではない、思いからくることがらに関しては、自分を通した考えまでにしか至ることができないんだなぁと思った。

だからこそ、反対意見に「ウッ」となる必要などないって話。

オレも半分はわかるんだけどね。登る山の良し悪し。
投資にハマってる時のオレが特にそうだった。

だけど、サッポロ一番の酒井美穂子さんを知った時に確信したんだよ。
登る山に間違いなど絶対にない、って。

――――――――――――――――――――

【今週の過去分オリジナルソング】