ホン雑記926「ハッピーリセッティング」
トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』を観た。ベタすぎるかもしれんが、やっぱトムさんはええわ。
おそらく人様よりは封切り映画に興味を持ってこなかった人生だったと思うんだけど、少ない鑑賞歴の中でも「おーっ」と思わせられるのがトムさんですわ。ってか、少なくて他に知らないからかもしれんが。
いやいや、でもやっぱり中1ぐらいの時に観た『ビッグ』の夢のような世界と彼の純真さに(中身は知らんが)惹きつけられた数少ない俳優なのだ。
もうなんとなく長くなりそうなんで、だいぶはしょってくか。
乗ってた飛行機がなんかしらんけど海に落ちて、無人島で4年間暮らすっていうお話なんだけどね。
あの物流サービス世界最大手「FedEx」の社員である(内容はフィクションだが)トムさんは遭難してはじめのほうで、無人島に一緒に流れ着いた自社の荷物を掻き集めた。飲まず食わずがしばらく続いてからだったかな。
が、ビデオテープやドレスやバレーボールなど、役に立ちそうなものはどの段ボールからも出てこない(結果的には全部役に立つが)。
それから火を起こすことを課題にする。何度やってもうまくいかない。ここはかなり時間をかけて映してたな。
最初はそのへんの木の枝を両手でぐるぐると回して火を起こそうとするんだけど、皮も剥いでない枝なもんだからそのうち血だらけになる。ここまでが結構長い。観客もイライラするような時間が必要なのだ。
それで「い゙ーーーっ!」ってなって暴れる。そのへんにあったバレーボールも取り出して岩に投げつけちゃう。
落ち着きを取り戻した彼は、ボールについた血の手形の一部を拭き取って顔を描く。
このバレーボール「ウィルソン」が4年の間、心の相棒となる。無人島暮らしでの判断に葛藤が生じた時にはウィルソンに考えの片側を引き受けさせるのだ。
後半では島にあった樹木の類と漂流物を使って、なんとも心もとないイカダのようなヨットを作る。ついに脱出することを決意したのだ。ウィルソンも一緒だ。舳先あたりにくくりつけられている。
ある時、当然ながら大嵐が来てくっちゃくっちゃになって、静かな海のヨットの上で目覚める。墜落時同様、またまた奇跡すぎるほど奇跡的に助かる。
が、ウィルソンがいない。視聴者からは海上を捜すトムの向こう側に首だけの(元々だが)ウィルソンがプカプカしているのが見えている。「志村~! うしろ~!」を思い出した。
一度はウィルソンのほうにダイブするんだけど、波に連れられて離れていくウィルソンを取るかヨットを取るかみたいな感じになって、泣く泣くヨットに戻ることになる。たしか次の日あたりも「ウィルソン~、ごめんよ~」って言って泣いてたと思う。
「長っ」って思ったんだけど、オレも泣いてるぐらいだから当事者は当然泣き崩れ続けるわな。
せつない大好き魔人のオレは最後の複雑な恋模様もかなり好きだったけど、やっぱりこの映画はウィルソンとの友情に、そして人類の苦悩と英知にひれ伏したね。
「あぁ! ケンシロウが聖塔に触れて創始者を含めた北斗神拳伝承者たちの生涯を追体験して涙する感覚はこれかーっ!」
って思った。いや、合ってるかどうかはしらんけど。違う作品だし。
でもねー、ホントそんな感じを体験させてくれるのよ。人類の最初のほうの人は、こうやって圧倒的な恐怖とかすかな希望のマーブル模様の合間を縫って大海に出たり、猛獣と闘ったり、飢えを凌いだり、天災に打ちひしがれてきたんだなぁって。
生還セレモニーの宴の終わりの場面で、食べ残された寿司やカニやチャッカマンが無造作に置かれてるんだけど、そこは無言なんだけど、(あの日々はいったい…)なんていうトムの思いが見えるようなんだな。誰もありがたがってないという悲しさ。
最近もツレがなんか人間疲れを儚んでたから(いつもだが)、「感謝が足らんすぎだわ」言うといた。
上とたまたまカブるけど、「オレは北斗の拳の世界で生きてると思い込んでるで」言うといたった。
そもそも人はみんな疲れてるし、なんかしらの愛の類に触れたらラッキーでハッピーだと思うようにしてると。そしたらなんかしらんけどそう思うような状況が増えて来るでーと。
またちょっと刺さって帰ってった。
そう思えるような訓練は要るけど、それは筋トレとか習熟度なんかと同じ。感謝するのに向いてない人なんていないのだ。
不幸病(幸福病)に罹って文句マンになっちゃってる人には超オススメの映画だったでー。
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