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ホン雑記 Vol.202「なるようになってる」

昨日はドリアン助川氏率いるトリオバンドのライブに行ってきた。


ま、内容はババーっとはしょる。
いや、良かったんだけどもね。こそっと2回ほど泣いたりしたし。でもいろーんな感情が押し寄せたライブだったなぁ。プラスのこともマイナスのことも。

マイナスのうちのひとつは、自分のこと。
あぁ、オレは演者にも客にも向いていないのかと痛切に感じてしまった。感受性が枯れてきたのだろうか。うーん、それともちょっと違う気がする。やる側と聴く側のどっちにも向いてないと思ったのに、枯れてきたわけでもない気がするってのはどういうことなのか。


なんかみんなあれだな。演者と一瞬で感情がシンクロするんだな。
寸劇仕立てで飽きさせない構成だったんだけど、演劇部分ではちょっと笑いを誘ったりする箇所もあるんだよね。
んで、即座に客席が反応するんだ。中には2秒ぐらいあと引いて笑ってる人もいる。演劇チックな笑いって、話し始めた瞬間に予定調和臭がして笑いとしてはそんなに面白いもんでもないんだけど(ディスってないです。客席をほぐす意味は十分にあると思っております)、2秒ぐらいあと引くって結構な時間なんだよね。これがちょっと気になって(笑)「そんなおもしれーこと言ってるか?」って。

これすんげーおこがましいこと言うんだけど、YAZAWAが「矢沢には才能がない。部下になるって才能」って言うのをとにかくすんげー思い出してたんだよね。

かといって、みなさんお愛想で笑ってあげてる感じでもなく。うーん、なんか自分の異物感を結構感じたなぁ。


だったらオレは演者向きなのか? というとそういう感じでもないんでちょっとまた凹んだりして。
なんだろう、自作の歌はどこに出しても通用する自負(自負ですらない)はあるんだけど、世間のライブマンのように届けたいという感情とエネルギーが少ないのだな。ネグレクトなんだね。

別日にリハーサルまでやってるっていうんだよね。あーゆーのって。ウソでしょ? もうそこで飽きちゃうわ。
オレは地元の閑古鳥ガンガン鳴いてるショッピングモールで8年間弾き語りライブしてたことあったんだけど、テキトーに行ってテキトーに30分ぐらいやるってのが一番性に合ってたなぁ。

いやいや、どっから来るんだあのエネルギーは。
いかん、これ以上書き連ねてるとなんか黒いこと言いだしそうだ。


一番の収穫は、家に帰ってからだった。嫁に、
「いやね。客でさえいちいち電車乗って、高いライブ代と飲食代払って、はじまる1時間前に入って、ケツの痛い椅子に座ってじっと聞いてるんだよ。しかも追っかけてる人までいる。オレはオリジナルソングあるくせに、ほとんどの客よりエネルギーないんだ。なんなんだこれは」
とオレの深い悲しみを吐露してみた。

そしたら、
「ん? 追っかけやってる人は努力してやってると思ってない?」
と返ってきた。
「えっ!?」
精神的には3度見した。
「自分は絵を描く側も、東京までコミケ行ってマンガ買うだけの時もあるから両方分かるけど、作る側のほうがしんどいよ?」

目からウロコとエラと背ビレが落ちた。
追っかける側は、乗っかってるだけところもあると言うのだ。自分がやるのがメンドくさいから、自分がやってその分野に時間も労力も費やすならお金出して追っかけてちょっと気分を頂くのはわけのないことだ、と。頑張って追っかけてる人もいるだろうけど、と付け足して。

ビックリすんのもたいがいにせなアカンほどビックリした。
鍵盤弾いたり曲作るのにどれだけの時間とお金を費やしているのかがやっと分かった。そして、なんの努力もしていないことにやっと気づいた。
「あぁ、1日1分でもいいから鍵盤触らんとなぁ」と考えてる時は、なんにもしてないくせにかなり努力感あるけど、弾き語りはじめたら数時間やってることも少なくない。そこはまったく努力してないじゃないか。


いままでのオレは自分が演者向きでないことを思い知ると、そのたびに落ち込んでいた。落ち込むよりもうちょっと深い感じのやつ。何かが捥がれて未来に闇が差す感じ。

でもいまは違う。これはなんかあるのだ。やる側聴く側どっちも異様にメンドくさがるオレのやり方がなーーーんかあるのだ。たぶん。

こないだ観に行った『竜とそばかすの姫』も、昨日のライブの寸劇部も、奇しくも歌を諦めていた人間が歌うことの素晴らしさに立ち返るという内容だった。正直昨日はそこに一番鳥肌が立った。

オレは単純なのだ。ふたつも重なったらそりゃ、背中を押されているのだと思い込むし、なんならそれで泣いてたとこある。自分のことしか考えてないのかよ。おぉ、そりゃそーだよ。

すぐ飽きるってことは「それは違う」ってことだと受け取ることにした。既存の方法に我慢なんかする必要もない。



密かにオリジナルの歌唱法、鍵盤奏法をジワジワと育てている。自分が認める及第点まで数年はかかるかもしれない。
昨日のライブに行ったことで、そのやる気だけは確かに育った。

あぁ、仲間が要るなぁ。




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