雑記1039「めでたいおつむ」

人生も半ばごろを過ぎて、最も多感な時期に入ってきた感がある。思春期のそれをこの思秋期は割と超えてると思う。
それまでも徐々になってたんだろうけど、最初にハッキリ感じたのは、2022年11月の皆既月食・天王星食が同時にやってきたあのイベントだ。

ウチのクソちっこいベランダからそれを見てて、狼男が狼に変身するかのようにオレはイカれちまった。なんだか表現が古臭いな。

あれはなんて言えばいいのかな、ま、言えるようだったら苦労もしないんだけど、同じ太陽の光が月にも天王星にも当たってて、それを地球から見てるってのがもうアホみたいに神秘的に思えたんだ…っていうこの口頭弁論の8倍ぐらい強い感覚だと思っていただきたぁい。
その光り方は、地球なら日本の裏側も同じようになってるわけで、その光り方を他の星を通して見られる、みたいな感覚？
いや、そんなもんじゃない。説明できんわ。

その日から、夜空のお月さんがオレの中で少年の頃のどんぐりやガラス玉になった。おわかりだろうか、この想像を絶するお得感が。他の人は大金はたいてダイヤの指輪とか買って喜んでんだろうけど、オレはタダだぜ？

いやいや、得とか言いたくないんだよ。じゃー言うなよ。
とにかく、あんなデッカいモンが勝手に浮いてて、同じ太陽の光で照らされてることが意味わからんほどスゲーって思うようになった。奇跡、でも、美しい、でも、神々しい、でもちょっと遠い。感情の属性はわからんけど、とにかく圧倒的にスゲーーーんだよ。

さて、そんな脳ミソを授かったオレは、目に映る何もかもが美しく見えてくるようになった。あれ、美しいって言っちゃってるわ。ま、スゲーし美しいんだよ。
で、いい大人のオレは徐々に徐々にその感覚が増大するように暮らしてきました。丹精込めて脳を育てて来ました。だってだいぶ得じゃんそれって。いやいや、得とか言いたくないんだけどね。

そこまで脳がやられてくると、今度はその感覚が体内にまで侵食しはじめる。
右手動けって「思ったら」右手が動くの、ヤバくね？　とか、脳内のニューロン同士をつなぐのにシナプスのはしっこは実際は離れてて、その間を神経伝達物質が飛んで行って、相手ニューロンの受容体がそれをキャッチして情報が伝達されるわけだけど、「え、受容体？　え、なんでそんなものがそもそもあるの？　なんかがどっかから飛んで来るってわかってたの？　それとも飛んで来たから受容体が『あ、俺が要るな』と思って具現化したの？」とか、ま～ぁ数えたらキリがないほどのフシギが出てくるんだよ。出てくるってか、あったものなんだけど。

で、そんな頭だよ。そんな頭を持ってしてやっと、さんま師匠の言わはる「生きてるだけで丸儲け」が実感としてわかるようになってきた。
それまでも、その言葉を聞いただけで「はーっ！！！」って超絶納得したし、何度も金言と受け止めてきたんだけど、それでもちょっと実感とは違ってた。

んで、その実感が湧いたのが、嫁にまたフシギをいろいろ説明してる（聞いていただいてる）時のことだったんだ。

「（以前省略）だから白血球とか赤血球とかさ、血小板でもいいんだけどさ、完全にタダ働きじゃん。そいつらなんの見返りもないじゃんか。オレが生きてるってこと以外は…」

「！！！！！」

「すげーっ！！！　ってことは生きてるだけで祝福されてるんじゃんか！」
ってなったわけさ。言いながら泣いた。病気だ。
で、そこで初めて「いまる」の実感が沸いたんだよ。タダ働きって言葉がたまたまこの口から出なければ、幸多かれ～ではなく、生きてるだけですでに祝福されてる、ってことに気づかなかった。

そしたら嫁が、
「そんなの当たり前じゃんかー」
って言ったんだよ。

耳を疑ったよ。おい、先客かよと。
ウチでは百ゼロでイニシアチブをオレに明け渡してる嫁が、普段なーんも考えてない（ように見える）嫁が、ネット診断する限りではどうやら軽めのADHDっぽい嫁のほうが、先にいたの、かよ…。

「生きてるだけで祝福されている」。
これは聞かない言葉ではなさそうだし、言葉で聞いただけではかなり綺麗ごとに聞こえる。たぶんオレも知らん人から聞いたら、いつもわかった風なヤツから聞いたなら、「は？」ってなってただろう。
だから嫁が「そんなの当たり前」って言った時に、狭量なオレは「後乗せサクサクすなーっ！」って怒る可能性だってあった。
が、狭量なオレでもまったくそうはならなくて、「コイツ、スゲー」って思ったんだよ。あぁ、コイツは過去に実感としてこの感覚を握ったことがたしかにある…そう感じたんだ。狭量なこのオレが妬心のカケラも湧かんかったわ。さすがはワシが嫁じゃの、と感心した。

あ、申しわけない。意図せずしてまーたノロケてしもた。おとといもノロケたばかりだったの忘れてた。他に趣味ないの。ごめ～んね。

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【今週の過去分オリジナルソング】