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幼馴染み
田舎の幼馴染みが東京にいる。
彼との出会いは27年前。
仲良くなったのは中学校に入ってから。
同じ野球部。部活終わって、自分は遠回りになってでも彼と一緒にしゃべりながら帰る時間が好きだった。笑いのツボが合うという当時からしてもシンプルな理由。
大学に入ってお互いバラバラになっても広島まで遊びに何度も行った。
周りが聞いたら確実につまらないことも、何故だか笑い転げて朝を迎える。
社会人になり、自分はサラリーマンの道へ。
彼は映画監督になるといい、大学を出てから映画の専門学校の道へ。
彼は自分の好きなことで生きていくと決めたようであった。夢を語っていた。
当時の自分は自分の夢を追うことを決断できなかった側の人間。
心底羨ましかった。自分が情けないのを隠すように「これでよかったはず」と言い聞かせる日々。そうして自分は必死にサラリーマンに馴染む努力をしたんだ。
彼は東京に出て10年以上経た。33歳になった僕たち。
同じ東京にいる今、こまめに連絡があるかというと無い。
同じだけ過ごした月日がお互いを大人にさせていったのかもしれない。
もしくは、お互い大人になりきれず、子供特有の照れくささを隠しきれないからかもしれない。
先日、そんな彼からLINEがあった。
「ショートフィルム撮ったから見てくれ。」との短いメッセージ。
話を聞くと、このコロナ禍に東京都が企画したアート展へ出品したとのこと。
見ないわけがない。
見ると僕らが知っている東京を舞台にしていた。
夢見て飛び出してきた東京を舞台にし、10年経った月日を振り返るような台詞。
彼の声も出演しており、まさに彼そのものだった。
即返信した。彼は嬉しそうだった。
はにかんでいることを彼自身が実感して満足していた。
10年間続けてきて大人になったように見える僕らは、
一人は、はにかんでいる。
もう一人は、友達がはにかんでいることを聞いて、またはにかんでいる。
PEACEだ。もうそれだけでいい。
この一瞬をお互いだけに感じる空気をカラダ全体で感じる。
そしてまた次の瞬間、またそれぞれの日常に帰っていった。
近いうちに飲みに行こうとだけ約束して。