【ラーメン三部作】どこまでがラーメン?
これは、私と友人が山間でのドライブ中にした会話である。
友人「さっきのラーメンはこの人生で一番だと思う。まさかドライマンゴーがあんなにもラーメンに合うとは夢にも思わなかった。」
私「俺もそう思う。何かもう俺のラーメン像を完全に歪められたというか、もうドライマンゴーがのってないラーメンはラーメンじゃないっていうか。」
友人「もうドライマンゴーがラーメンって感じだよね。チャーシューとか要らないよね。」
私「いや麺すらも要るかどうか怪しいよね。ドライマンゴーがスープに浸ってたらラーメンだよ。」
友人「間違いない。今日からラーメンはスープにドライマンゴーが入ったものだ。」
私「ハハハ。まあそんな冗談は置いといてさ、実際ラーメンって何が入ってたらラーメンだと思う?」
有人「スープと麺さえあればラーメンって名乗ってもいいんじゃないかな。」
私「随分とラーメンに対して寛容なんだな。俺だったらチャーシューと海苔が入ってないラーメンはラーメンとは認められないな。」
友人「マジか。逆にさラーメンにどんどん具材を追加していったらラーメンじゃなくなるとかあるかな?」
私「いやスープに麺が沈んでて、そこに海苔とチャーシューがのってれば、他に何が入っててもラーメンだろ。現に俺たちはドライマンゴーが乗った『ラーメン』を体験済みなわけだからな。」
友人「やっぱりそうだよな。何かもうラーメンに接続されているものは何でもそれ含めてラーメンとして受け入れうる位だわ。」
私「なるほどね。ラーメンに接続か。でもラーメンを食べるとしてさ、割り箸を利き手で持ってラーメンのスープに突っ込むわけじゃん。お前の考えだとこの割り箸もラーメンにならないか?」
友人「勿論。割り箸もラーメンってことだからそれを持ってる利き手もラーメン。そしてラーメンを食べる俺達もラーメン。ラーメンである俺達の衣服から椅子、立ち食いなら靴を通して床までラーメンが広がり、大地はラーメンに染まる。山も、海も、ビルディングも、全部ラーメンだ。」
私「俺の家の天井の電球も?」
友人「ラーメン。全部、全部、全部、ラーメン。もうこの地球はラーメンの星なんだ。」
私「うーん、でもラーメンの星っていうのはおかしいかもしれないな。だって、ラーメンの星ってとても魅力的じゃないか。」
友人「ああ。」
私「そんなものがあると知ったら絶対に行くよな。」
友人「確かに。まあ俺達は既にそこにいるけど。」
私「宇宙人は地球に来ていない。この魅力的なラーメンの星に誰も来ない。これ、おかしくないか?地球はラーメンの星ではないんじゃないか?」
友人「可哀想に。宇宙人は誰もラーメンの星の存在を知らないんだ。ここはラーメンの星なのにそれを知らないから誰も来ないし探しもしない。」
私「何だかよく分かんなくなってきたな。」
友人「危ない!前!」
私「あっ。」
私は議論に夢中になりすぎて運転を誤った。私と友人の乗った車は道路を飛び出し。山の斜面を転がり落ちていった。
私達が目を覚ましたのは何時間後だろうか。既に辺りは真っ暗であった。大事故であったにもかかわらず、幸運にも私たちは大した怪我をせずに済んだ。私たちは大破した車を出ると、森の奥のほうから光が漏れているのを見つけた。私達はその光のほうに吸い寄せられるように向かっていった。
その光は森の奥深くにある洞窟から発せられていた。洞窟の入り口には「ラーメン」とかなり癖のある文字で彫られている。
友人「ラーメンの洞窟なんてあったんだ。」
私「ラーメンの洞窟を知らなかった俺達がラーメンの洞窟に辿り着いたみたいに…」
???「ラーメンの星の存在を知らずとも、ラーメンの星に辿り着いた者達がいる。いらっしゃいませ、空いているお席へどうぞ。」
私「あなた達は一体?」
???「我々は宇宙人です。おそらく地球人が誰も知らないような遠い遠い惑星から偶然このラーメンの星にやってきました。」
友人「すごい。宇宙人ってこんな見た目だったのか。」
宇宙人「どうぞお座り下さい。当店のメニューはまだ一つだけ。お待たせしました。我々の故郷の料理とこの星のラーメンにのせた特製ラーメンです。」
私「頂きます………….美味い……..???????????????????」
ここからの記憶はない。気付いたら自室のベッドに居た。これは夢だったのだろうか。私はこの出来事が夢か現実かを友人にLINEで聞いて確かめるためにスマホの電源を入れると、その友人からのメッセージの通知が見えた。友人「もう一度あのラーメンを食べに行ってくる。」
友人はこのメッセージを残して行方不明となった。
そして2000年後、彼の遺体が宇宙を彷徨っているのが発見された。