即席で買った口紅(最近の短歌まとめ)


探せども君は居ないと解るからうつむき歩く雑踏の中

椋鳥がわっと飛び立つ足音が夢だと分かってしんと泣きだす

温度差に眼から結露が流れてくアイシャドウのきらめきみたい

押さないで押しボタン式信号機ねえ私まだ帰りたくない

猫がするあいしているよの真似をして君はゆっくりまばたきをする

死んじゃったもう帰らない君だけに聞いてほしいの本当のこと

着ける日と着けない日があるペアリングどんな意味があるっていうの

悲しみにぐらつかないで永久歯トパーズみたいな道端の石

乗り過ごし脚突っ立てて停留所ぼくの明日だけ停留してる

しわくちゃのあれはきっと雪雲だねと言ったあなたが靡いて見えない

同じ色見つけて呑気にはしゃいでる霜焼けの指カミナリの雲

暖冬のぐちゃぐちゃ雪が潰れてくツラみの種だけぐんぐん育つ

わたしたち手を繋いだね流れ星君の睫毛が生え変わるまで

不信感ふくりふくりと膨らんでささくれた指口でふやかす

入眠剤猛スピードで夜が明ける蝶の羽音で世界が霞む

(踏み外せ)外看板に急かされる新患急患「飛び込みOK」

即席で買った口紅消えないの夜の木漏れ日晴れの日の傘

嫌ってたピンクを受け入れられたなら君と春まで居られたのかな

ざりざりとざらめく夜を抱きしめる甘い余韻よもう消えないで

真夜中に靴底汚す融雪剤罪悪感も融かしてほしい

ひやっこい空気に耳が裂けそうで目を閉じるまだ雪国は冬

溶けかけのツララを刺して目くらましつらい明日はもっと冷ややか

ーーー以下駄文ーーー

2024年12月に文芸用のTwitter(頑なにXとは呼ばない勢)アカウントを作った。人間を辞めたりした時期もあったのでブランクはあるけれど、2024年は文章創作を始めて20年目だと気付いたからだ。

覚えている限りでは、私は2020年頃からほとんど創作をしていない。幼い頃からあんなに好きだったイラストも、生涯趣味として続けていくと決めた詩も、自分から産み出すことが出来なくなった。ブランクとかではなく、私の選択により日常や人生がぐちゃぐちゃになって、見失うことはないと信じていた自分の根幹を根こそぎ腐らせてしまったのだ。

それでも人生が続いてしまい、なんだかんだあって、行き着いたゲイバー(正しくはミックスバー、観光バーという所)に通い詰め、そのお店の鏡月のキープボトルに川柳を書いた。
「舐めすぎた ちんぽの先に 白い液」
ひどい句だ。しかしこの句は店員さんや他のお客さんにたくさん読まれ、笑っていただけた。そして仲良くなった常連さん達に頼まれて、その方たちのキープボトルにも下ネタ川柳を詠むようになった(詠んだ句は、いつかこのnoteにまとめたい)。

そんなことで、私はまた言葉選びをするようになる。そして20年という節目を迎えたことにも背中を押されて、私はまた文章創作を始めたいと思ったのだ。

私には何年間も書き溜めたメモがあった。短歌と俳句と、それらになりそうな語句のメモだ。Twitterアカウントにはメモにあった既存の短歌や、メモを頼りに新しく作った短歌を載せている。これで感覚を取り戻して、もう一度自分の創作をきちんとやっていくつもりである。
こうやって長めの文章も書きたいと思い、わざとだらだらと文字を打ってみた。

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