わが街の伝統産業 群馬県・前橋市
第85回 群馬県前橋市 〜全国一の生産量を誇り海外から支持を受けている自由な発想の「創作こけし」の街
群馬県前橋市。県庁所在地であり人口は約32万人。群馬県といえば養蚕業。その陰には楫取素彦氏の存在があります。楫取氏は明治9年に群馬県令に就任。その後、殖産興業に尽力して養蚕・製糸業の育成に力を注ぎ、日本屈指の養蚕県に群馬県を発展させた人物です。あの幕末の志士・吉田松陰の妹が妻であったことも知られています。(2015年NHK大河ドラマ・花燃ゆで放送されました)
その群馬県を代表する前橋市の伝統産業が「こけし」。全国一の生産量を誇っています。宮城県の鳴子温泉に代表される東北のこけしも有名ですが、前橋市のこけしは、その東北のこけしに対抗するように「近代こけし」といわれる「創作こけし」の名で知られています。
「こけし」と言うと円筒形の胴体に丸い頭がついた細目の木人形がイメージされますが、これらは「伝統こけし」とされ、前橋市で作られる「こけし」は一線を画しています。
前橋市で作られる「こけし」は「創作こけし」に分類されており、明治時代末期に東京でロクロ技術を学んだ関口専司氏が工場を開いたのが始まりです。東北のこけしのイメージはなく、形状にとらわれず自由な発想で、常に新しい形や図柄、表情が生み出される点が特徴です。
「こけし」には一般的に使われる水木(ミズキ)という原木が使われていますが、前橋市の「創作こけし」では、水木のほかにも桜や欅(けやき)栗といった原木も使われているようです。中でも栗の木は木目が美しく、その木目を活かした作品が「創作こけし」の特徴となっており、群馬県のふるさと伝統工芸品に指定されています。
戦後、観光に訪れた人たちがお土産として買い求め、前橋市のこけし産業は発展していきました。ただ、近年は工房の数が激減して、現在では20ほどしかないようです。そのため職人の数も減少。しかし、日本的な美を感じることができ、表情がかわいいという声が多く、これらが強みとなって海外からの支持が高く、前橋市のこけし産業の存続のためには職人の育成が欠かせないようです。
最後に前橋市は知る人ぞ知るグルメの街でもあります。中でも、豚肉王国ともいわれており、全国有数の生産量を誇っています。ソースかつ丼や豚丼などメニューが豊富です。また、群馬名物の「焼きまんじゅう」や「上州御用鳥めし」もあり、グルメの街でもあります。
提供:伝統産業ドットコム