唾液腺腫瘍の病理診断の進め方
1)唾液腺腫瘍の概要の知識と臨床情報の解釈
病理診断に際しては,患者の年齢,性別,病変の部位,画像所見,触診所見,手術所見などの臨床情報を把握まずしておく。
唾液腺腫瘍の特徴
① 部位別頻度
耳下腺,小唾液腺,顎下腺,舌下腺の順で,耳下腺が6割以上。
悪性腫瘍の割合:発生頻度とは異なり,舌下腺がもっとも多く,小唾液腺,顎下腺がこれに次ぎ,耳下腺は最も低い.
② 組織型
多形腺腫が最も多く(60%),ワルチン腫瘍がこれに次ぐ.悪性腫瘍で最も頻度が高いのは粘表皮癌.
③ 年齢分布
多形腺腫と粘表皮癌,腺房細胞癌は20~30歳代にピークがある.その他の組織型では50代にピークがある。 小児にも唾液腺腫瘍は発生し,組織型としてはやはり多形腺腫が最も多く, 粘表皮癌がこれに次ぎ,腺房細胞癌も少なくない.
④ 性別
多くの組織型で女性に多い。だが、ワルチン腫瘍、唾液腺導管癌は男性に多い。
⑤ 部位と組織型の関係
腺様嚢胞癌は小唾液腺や顎下腺に多い.多型低悪性度腺癌は耳下腺には見られない.ワルチン腫瘍は耳下腺とその周辺に 限られている.
⑥形態的モデル
タイプA.腺上皮細胞のみからなるもので、単相性の導管、腺房構造を持っている。
A.良性腫瘍・・・ワルチン腫瘍
悪性腫瘍・・・粘表皮癌、腺房細胞癌、腺癌 NOS、唾液腺導管癌
タイプB.外側の細胞のみからなる(筋上皮細胞)束状、充実性配列となっている。
B.良性腫瘍・・・筋上皮腫
悪性腫瘍・・・筋上皮癌
タイプC.腺上皮と外側の細胞が増殖(A,B両方)、細胞外基質形成を伴わないと充実性/シート状+腺管の構造を示す。基質形成を伴うと、筋上皮細胞の間にそれが分泌した基質が貯留し、網目状の篩状パターンを示す。
C.良性腫瘍・・・多形腺腫
悪性腫瘍・・・腺様嚢胞癌