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収録スタートガイド【第2章:編集は魔法、音をデザインする】ポッドキャストの教科書1

第2章:編集は魔法、音をデザインする


カットは決断、迷いはノイズ

ポッドキャストの編集は、録音された素材を磨き上げ、リスナーにとって聴きやすい形に整える、まさに「魔法」のような作業です。その中でも、「カット(切り取り編集)」は、最も基本的でありながら、最も重要な編集テクニックの一つと言えるでしょう。

録音された音声には、必ずと言っていいほど、不要な部分が含まれています。例えば、言い淀み、沈黙、咳、または、本筋から逸れた余談などです。これらの不要な部分を「カット」によって取り除くことで、テンポの良い、聴きやすいポッドキャストを作り上げることができます。

しかし、「カットは決断、迷いはノイズ」という言葉が示すように、編集の際に最も大切なのは、「決断力」です。あれもこれもと残そうと迷っていると、結果として、ダラダラとした、間延びした印象のポッドキャストになってしまいます。編集者は、時には「鬼」となって、不要な部分は思い切ってカットする必要があります。

例えば、話が途切れてしまったり、無言の時間が長く続いたりする箇所は、リスナーの集中力を途切れさせてしまう要因となります。また、「えー」や「あのー」などの言葉も、多すぎると会話の流れを不自然にしてしまいます。このような箇所は、思い切ってカットすることで、テンポがよくなり、より聞きやすい音声にすることができます。

もちろん、すべての不要部分を機械的にカットすれば良いというわけではありません。カットする際には、話の流れや、会話のテンポを意識しながら、どの部分をカットするかを判断する必要があります。時には、間を意図的に残すことで、リスナーに考える時間を与えたり、会話に深みを与えることもできます。

編集で迷うことは、誰にでもあります。しかし、迷ったまま、不要な部分を残してしまうことは、結果として、ポッドキャスト全体の質を下げてしまいます。「迷いはノイズ」と心得て、思い切ってカットする決断力こそが、編集において最も重要な要素なのです。

また、カット編集は、単に不要な部分を削除するだけでなく、会話のテンポを調整したり、話の流れをスムーズにする効果もあります。例えば、テンポが遅い箇所を短くカットしたり、会話の流れを不自然にする箇所をカットすることで、より聴きやすく、引き込まれるようなポッドキャストにすることができます。

編集は、録音した素材を、さらに魅力的な形に作り変えることができる魔法のような作業です。「カット」というシンプルな技術を極めることで、リスナーを魅了するポッドキャストを生み出すことができるでしょう。迷いを捨て、思い切った決断で、最高のポッドキャストを作り上げてください。

フェードは余韻、感情を操作

ポッドキャストの編集において、カット編集が基本中の基本であるとすれば、「フェードイン」と「フェードアウト」は、より高度な演出を可能にするテクニックと言えるでしょう。これらのテクニックは、単に音量を徐々に変化させるだけでなく、リスナーの感情に働きかけ、ポッドキャストの印象を大きく変える力を持っています。

「フェードイン」は、音声を徐々に大きくしていく効果があります。これは、ポッドキャストの冒頭、BGMの開始、または、効果音の導入などに用いられます。フェードインを使うことで、唐突な音の立ち上がりを避け、より自然で心地よい印象を与えることができます。

例えば、番組の開始時に、静かなBGMをフェードインさせることで、リスナーを穏やかに番組の世界へと誘うことができます。また、効果音をフェードインさせることで、よりドラマチックな演出を加えることができます。

一方、「フェードアウト」は、音声を徐々に小さくしていく効果があります。これは、ポッドキャストの終わりに、BGMや効果音を消していく際に用いられます。フェードアウトを使うことで、唐突な音の終わりを避け、より自然な余韻を残すことができます。

例えば、番組の終わりに、BGMをフェードアウトさせることで、リスナーに静かな余韻を残し、番組の満足度を高めることができます。

「フェードは余韻、感情を操作」という言葉が示すように、フェードインとフェードアウトは、単に音量を調整するだけでなく、リスナーの感情を操作する力を持っています。

例えば、感動的なシーンでは、BGMをゆっくりとフェードアウトさせることで、より感情的な余韻を残すことができます。また、不気味なシーンでは、効果音をゆっくりとフェードアウトさせることで、リスナーの不安感を高めることができます。

さらに、フェードインとフェードアウトを組み合わせることで、より複雑な演出を加えることができます。

例えば、番組の区切りで、BGMをフェードアウトさせ、次のシーンでは、新しいBGMをフェードインさせることで、場面転換をより明確にすることができます。また、会話と会話の間で、効果音をフェードインさせ、フェードアウトさせることで、よりドラマチックな演出を加えることができます。

フェードインとフェードアウトは、編集ソフトを使えば、非常に簡単に実行することができます。これらのテクニックを使いこなすことで、単調なポッドキャストに、感情やドラマ性を加えることができます。「フェードは余韻、感情を操作」という言葉を意識して、フェードインとフェードアウトを積極的に使い、リスナーを魅了するポッドキャストを制作しましょう。

ノイズは悪魔、根絶こそ正義

ポッドキャスト制作において、ノイズは、まさに悪魔のような存在です。どんなに素晴らしい内容のポッドキャストでも、ノイズが多いとリスナーの集中力を削ぎ、聴取体験を著しく損なわせてしまいます。そのため、「ノイズは悪魔、根絶こそ正義」という言葉が示すように、ポッドキャストの編集において、ノイズ除去は最優先で行うべき重要な作業なのです。

ノイズとは、録音時に意図せずに入り込んでしまう、不要な音の総称です。具体的には、空調の音、車の走行音、キーボードの打鍵音、パソコンのファンの音、マイクの接触音、そして、会話中の「サー」というホワイトノイズなど、様々な種類があります。これらのノイズは、どれもがポッドキャストの音質を劣化させ、リスナーを不快にさせる要因となります。

ノイズ除去は、編集ソフトに搭載されているノイズリダクション機能を使うのが一般的です。ノイズリダクション機能は、録音された音声の中から、ノイズの周波数パターンを特定し、それを除去する機能です。しかし、ノイズリダクションは万能ではありません。

過剰にノイズを除去しようとすると、音声が不自然になったり、音域が失われたりする可能性があります。そのため、ノイズの種類や程度に応じて、適切なパラメータを設定する必要があります。

ノイズ除去を行う上で最も重要なことは、まず「ノイズの原因を特定し、可能な限り録音時にノイズを減らす」ことです。例えば、空調の音が気になる場合は、録音時に空調をオフにしたり、車の走行音が気になる場合は、できるだけ静かな時間帯や場所を選んで録音するなど、録音環境を整えることが最も効果的なノイズ対策です。

編集ソフトのノイズリダクション機能を使う際には、必ずテストを繰り返しながら、最適な設定を見つけるようにしましょう。また、ノイズ除去の他にも、特定の周波数を調整したり、イコライザーを使って音質を調整することで、よりクリアで聴きやすい音声にすることができます。

さらに、ノイズの種類によっては、別の編集テクニックで対応する必要がある場合もあります。例えば、マイクの接触音は、カット編集で取り除くのが効果的です。また、会話中の「サー」というホワイトノイズは、ノイズリダクション機能で除去すると共に、イコライザーで高音域を調整することで、目立たなくすることができます。

ノイズはポッドキャストの質を落とすだけでなく、リスナーの集中力を奪う、まさに悪魔のような存在です。ノイズ除去を徹底的に行い、クリアで聞きやすい、質の高いポッドキャストを制作しましょう。

第2章のまとめ:実践編

第2章では、ポッドキャストの音を磨き上げる編集のテクニックを学びました。これらの教訓を具体的な行動に移し、あなたのポッドキャストをより魅力的なものにしましょう。

1. 不要な部分を迷わずカットする

  • カット編集の基本: まずは、不要な部分(言い淀み、沈黙、咳など)をカットする練習をしましょう。

  • 迷いはノイズ: カットに迷うと、結果として間延びした音声になってしまいます。思い切ってカットする決断力を養いましょう。

  • 短くカット: 不要な部分は短くカットし、テンポの良い音声を目指しましょう。

  • 会話の流れを意識: カットする際は、会話の流れを不自然にしないように注意しましょう。

  • 練習あるのみ: カット編集は、数をこなすことで上達します。積極的に編集に取り組みましょう。

2. フェードで感情を操る

  • フェードインの活用: 音楽や効果音を徐々に大きくするフェードインは、場面転換や導入に効果的です。

  • フェードアウトの活用: 音楽や効果音を徐々に小さくするフェードアウトは、余韻を残したり、次の展開への準備に効果的です。

  • 適切な長さを調整: フェードの長さは、場面の雰囲気に合わせて調整しましょう。

  • フェードを重ねる: フェードインとフェードアウトを組み合わせることで、より複雑な演出ができます。

  • 実験と発見: 様々なフェードの長さを試して、自分の表現に合った方法を見つけましょう。

3. ノイズを徹底的に除去する

  • ノイズリダクション: 編集ソフトのノイズリダクション機能を活用し、ノイズを除去しましょう。

  • 適切な設定: ノイズの種類によって、ノイズリダクションの設定を調整しましょう。

  • 過度な除去は避ける: ノイズを除去しすぎると、音声が不自然になることがあります。程よいバランスを見つけましょう。

  • 別の編集テクニック: カット編集やイコライザーなど、ノイズの種類に合わせて別の編集テクニックも使いましょう。

  • 録音段階での対策: そもそもノイズを録音しないための工夫をしましょう。(録音環境の改善など)

実践のポイント

  • 「編集は料理」: 編集は、録音した素材を調理して、より美味しく仕上げる料理のようなものです。

  • 「試行錯誤が成長の鍵」: 様々な編集を試して、自分の表現に合った編集方法を見つけていきましょう。

  • 「リスナーの立場に立つ」: 編集する際は、常にリスナーの立場に立ち、聴きやすい音声を目指しましょう。


著者紹介

でんすけ@ポッドキャスト先生

大阪出身、30代後半。テレビ局やレコーディングスタジオで経験を積み、公務員を経て、ラジオ局に就職し、番組制作や音声編集を担当する。1人で企画制作、収録編集を担当していた番組が、近畿コミュニティ放送番組賞とパーソナリティー賞をW受賞。業界歴15年以上の経験から、素人の方を交えた番組制作サポートは、のべ100名以上を超える経験あり。

現在は、OfficeScene8を立ち上げ、ポッドキャスト番組の個別サポート&コンサルティングを展開中。担当した番組は、ApplePodcast子育てランキング4位の実績や、10万人超フォロワーのいるファイナンス系Voicyチャンネル、某大学病院の医学専門番組など実績多数。

音声配信をやってみたい初心者も優しく丁寧にサポートを提供しています。メンタルコーチ&メンタルトレーナー、コーチングの資格所持。


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