さようなら。はじまりの場所「伝所鳩 墨田店」。
伝所鳩は、兵庫県豊岡市にあるお店ですが、もともとは東京都墨田区にある「鳩の街通り商店街」から始まりました。
お店の名前は、この商店街に由来していて、今もまだお店の場所は残したままです。(※現店舗(豊岡店)と区別しやすいよう墨田区にある店舗のことは墨田店と呼びます。)
墨田店は、現在休業中ですが、体制が整い次第改めて再開を目指していました。しかし、2023年夏に建物の取り壊しが決まりました。始まりの場所でもある墨田店は、この夏に無くなってしまうので、これまでの経緯を少しここに綴らせていただきます。
じてんしゃ雑貨店と一緒に始まった伝所鳩
伝所鳩が最初にできたのは、東京都墨田区にある大正時代から続いてきた古い長屋の2階でした。そのままでは使える状態ではなかったのですが、クラウドファンディングを利用し、100名以上の方からのご支援と、自分たちでお金を出しあって建物を改修したことで、見違える空間に蘇らせることができました。
そして、1階には、じてんしゃ雑貨店「千輪」、2階に「伝所鳩」が入る2店舗共同運営というスタイルで始まりました。
伝所鳩 墨田店は、2階にあるという立地上、少し分かりづらく、上り下りする階段も狭くアクセスが悪かったのですが、改修工事の際に天井を高く上げてもらったことで狭いながらも開放感があり、屋根裏部屋に上がってきたかのようなちょっとした秘密基地のような落ち着く場所でした。
この建物を使うことになったきっかけや、そもそも伝所鳩を始めることになったのは、以前から公私ともに交流のあった1階のお店「千輪」さんから誘ってもらったことが始まりでした。
千輪さんは、もともとこの鳩の街通り商店街の別の場所でお店を営んでいました。その場所が手狭になってしまい、引っ越しを考えている中で出会ったのがこの物件。一人では持て余してしまう2階建ての建物だったので、一緒に何かおもしろいことをやりませんか?と声をかけてもらいました。そして既にうなぎの寝床のもんぺや、宮田織物のはんてんなどの販売を始めていた僕らと一緒に、全国各地の作り手さんを紹介する伝所鳩を作ることになったのでした。
そういった経緯もあって、1階の千輪さんも、当初は伝所鳩のメンバーの1人として一緒に活動してくれ、墨田店の店主というポジションで店舗の運営を担ってくれました。僕らが各地で出会った作り手さんの商品をお客さまに説明し、販売してくれていたので、この時代の伝所鳩を訪れてくれたことがある方は、伝所鳩=千輪という印象をお持ちかもしれません。
何もできなかった墨田店
クラウドファンディングは目標額を達成し、改修工事も無事に終えオープンした伝所鳩 墨田店。オープンまでは、まずまず順調な滑り出しにはなったものの、僕らは小売りの難しさや大変さを知る以前に、すぐにやってきたのが新型コロナウイルスでした。
伝所鳩の肝として考えていた、企画展やワークショップといった人を集めるイベントは行うことができず、さらに緊急事態宣言で商店街を歩く人の姿もほとんど見られなくなりました。自粛警察による取り締まりがあったりと、お店をあけることへの抵抗感だったり、新しい商品を仕入れに移動することもできず、始まったばかりのお店は本当に何もできないまま、わずか1年ほどで「休業」という形を取ることになります。
新たな希望、豊岡店のはじまり
そんな中で、現伝所鳩である豊岡店のプロジェクトは始まります。僕らが豊岡と東京の二拠点生活を始めたのは、コロナが始まる1年ほど前でした。豊岡店の建物は、空き家になっていた古民家で、最初は事務所を作る予定で改修工事をスタートしたのですが、コロナが始まり徐々に東京との行き来が容易ではなくなったこともあり、墨田店に代わって豊岡店を本格的に始める方向で舵を切ることにしました。
そして、ようやく豊岡店がオープンした後もコロナは続いており、東京に行くことがなかなかできなかったのですが、仕入れや墨田店に残っている在庫を豊岡へ送ってくれたりと、僕らがいない墨田店で奔走してくれたのが千輪さんでした。商品を集めてまとめて送ってくれたり、実際に豊岡まで何度か足を運んで様子を見に来てくれたり。その甲斐もあって、豊岡でも自転車のプロジェクトを始めるなど、現在進行形で一緒に活動を続けてきました。初期の頃の豊岡店を支えてくれた一人でもあります。
こうして僕らと千輪さんによる、新しい伝所鳩、豊岡店を軌道に乗せるための奮闘が始まり、オープンから2年。おかげさまで墨田店から引き継いだバトンを絶やすことなく続けられています。
しかしながら、まだまだ売り上げ的には続けていくので精いっぱい。でも、いつか売上が安定し、コロナも落ち着けば、「墨田店を再開したい」。これは、僕らと千輪さんの変わらぬ想いで、そこを目指して必死に頑張ってきました。
終わりは突然に
しかし、その目標が叶うことはなく、2023年夏、建物の老朽化による取り壊しが決まりました。
たくさんの方に協力してもらってできた大切な場所ですが、実際使っていた自分たちも建物の老朽化はヒシヒシと感じ、耐震性や防火性などを考えると仕方のないことのようにも思います。
残念ではありますが、唯一の救いなのは、やはり2年前に思い切って伝所鳩を豊岡に移したこと。建物が無くなることで、伝所鳩も無くなってしまうということは避けられたのは不幸中の幸いだったのかもしれません。
鳩の街通り商店街で始まった伝所鳩。応援くださったたくさんの皆さま、ありがとうございました。今は別の場所に変わり、墨田で復活する夢は無くなってしまいましたが、この名前はそのままに。墨田の意思を引き継ぎ、絶やさないようにこれからも続けていきたいと思います。応援よろしくお願いいたします!