電線アンバサダーの会員社訪問 ヒエン電工 長田野工場編1
都市の血管や神経として、私たちの生活を支える電線。外を歩けば必ず目にしているはずなのに、景色に溶け込んでいるからその存在に気づかない、いわば「見えているのに見ていない」ものの代表でもあります。
2022年11月18日で5年目を迎えた「電線の日」を記念して、電線アンバサダーブログ「石山蓮華の電線ノート」を開設することとなりました。
電線アンバサダーが電線のふるさとである全国の工場や会社を訪れ、どんな仕事を通じて電線たちが生まれるのかを取材し、電線の魅力を発見します。
初回はヒエン電工株式会社さんを取材します。
主力製品の船舶用電線やその作り方、工場で働く方々のお話など、全3回の記事でお届けします。
今回の目的地・ヒエン電工長田野工場は、京都府・福知山にあります。
京都・福知山にやってきた!
京都駅から特急列車に乗っておよそ1時間20分。
今回の目的地である「ヒエン電工 長田野工場」にやって来ました。
工場のある福知山は周りを山に囲まれた盆地にあり、明智光秀が築いた「福知山城」のある城下町です。
写真左から2番目の方が、ヒエン電工の山鳥社長です。
「入社後は6年ほど、長田野工場で勤務していました。当時の社長だった父からはじめて福知山へ呼ばれたとき、なにも説明されなかったんです。誰とどこで待ち合わせるとか、普通に人と会うときの約束はせず『とにかく福知山まで来ればわかる』と。その時はちょっとドキドキしました。
長田野工場は、ヒエン電工のほかにもいくつかの会社の工場が集まる、工業団地にあるんですよ。環境保全協定があって、緑地や公園などが整備されています。」
船の中で使う電線を作る
1954年創業のヒエン電工さんでは、船の中で使う「船舶用電線」を作っています。
社名になっている「ヒエン」とは、鉛で被覆する「被鉛」が由来だそうです。現在は環境に配慮し、電線に鉛が使われることはなくなりました。
しかし、68年前から受け継がれてきた被覆の技術はまだまだ現役!通信線を空中でまとめるケーブル架線用吊具や、電柱を内側から支える鋼鉄製の柱などに活かされています。
船舶用電線ってなに?
船舶用電線とは、船が動力を得て海上を走るために必要なケーブル全般のこと。船の中の配電や制御に使われるケーブル、通信用ケーブルなど、いろいろな種類があります。
石油などを運ぶタンカー、貨物船、客船、漁船といったさまざまな船の生命線として、なくてはならない存在です。日本では貿易による貨物の99.6%が海上輸送で運ばれているそう。
たとえば、4万トンクラスのばら積み船では約4万メートルの電線が使われています。
貿易を支えるコンテナ船では重い物を運ぶために太い電線がたくさん使われているのだそう。海外からの荷物も電線に支えられているんだなあ。
船舶用電線を手がける電線メーカーは、国内では数社のみ。中でもヒエン電工さんは国内有数のメーカーです。長田野工場では100種類 以上もの船舶用電線を作っています。
そういえば、小型船やフェリーに乗って移動するとき、エンジンの振動が足元に伝わってくることがあります。あの振動の先にも船舶用電線がつながっていたんですね。海の上にいるときでも電線に繋がれるのかと思うと、ちょっと嬉しい。
一隻の船で使われる電線は全長の8300倍!
一隻の船で使われる船舶用電線の長さは、船によってもさまざまです。
特にたくさんの電線を必要とする大型客船の場合、電線の長さは船の全長の8300倍ほどにもなるとか。
船内に客室やレストランなどがあり、使われる電線の種類もさまざまです。
海の上の建築物となる船に使う電線は、外傷や船舶火災、漏電などあらゆるリスクを考慮した設計が欠かせません。
船舶用電線が見てみたい!
船舶用電線は、鉄線を編んで組み合わせた「網代(あじろ)がい装」が施され、さらにその上から腐食を防ぐ塗料を塗るなど、陸で使われる電線よりも多くの工程を経て製造されます。
次回は船舶用電線の製造風景をご紹介します!
INTERVIEW DATE:2022/09/21