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2024年の年間ベストアルバム。邦楽名盤。


2025年になりました。なので去年の邦楽アルバムでトップ10を作りました。



10位 結束バンド『Re:結束バンド
アニメが生んだモンスターバンドのミニアルバム。6曲中4曲がシングルのA面B面であることから純粋に曲が強い。それでいて「月並みに輝け」から始まる疾走感のあるギターロックの流れを「秒針少女」が優しく受け止めてアジカンカバー「Re:Re:」(2016年版を踏襲したアレンジ)で力強く締める構成の上手さ。小さくても腹持ち良い一枚。


9位 macaroom『burning chrome
音楽家であると同時に研究者や武術家であるメンバーも在籍する4人組エレクトロユニット。emaruのウィスパーボイスが載るのは幻想性の中に豊かな情報量が載る作りこまれた電子音。特に「heike」は太鼓などの輪の音と同時に民謡を彷彿とさせる詩、まるで巫女の儀式のような神秘感。アートとポップスの融合を実践した良作。


8位 Mummy-D『Bars of My Life
RHYMESTERのMCが初のソロアルバムを発表。本隊と違い、ナイーブな色合いが濃いドキュメントなアルバム。「O.G.」ではライムスから一貫しているグレートアマチュアリズムあふれるラップ。レジェンド同士の共演となった「同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO」での、うだつの上がらない時代の思いの共有。いつもの洒落たフローから語りかけるかのような姿へ。


7位 踊ってばかりの国『On the shore
長いこと一曲だけ好きな曲があるバンドという立ち位置だった。だが出会ってから十数年、ようやくこのバンドのアルバムと仲良くなれた。彼岸のような1曲目からゆったりとしたサイケデリックに包まれた楽曲世界が広がっていく。今まではその世界のとっかかりが掴めなかったのだが、今回はただ音を揺蕩っているだけで体に染み込んでくる柔らかさがある。間口は広くなったが彼ららしさは変わらない、優しいサイケ。


6位 ポップしなないで『DOKI
ドラムとピアノの男女2人組ユニット。彼女たちのグルーヴ感はいつもどおり素晴らしいが、今作は緩急のバランスが非常に素晴らしい。彼女達らしい中毒性たっぷりの軽快なポップソング「魔王様」「白昼きみとドロン」で流れを作り上げると、しっとりとした「そらをとばない」「ポップコーン・メモリー」の美しいメロディを堪能する。ラスト「落chill」もまた、その優しいメロディで子守歌のように締める。彼らの幅の広さを最も堪能できる。


5位 マカロニえんぴつ『ぼくらの涙なら空にめよう
近年4曲入りのEPが増えてきているが正直、それはシングルであってアルバムではないだろと思っている。だから原則ベストに入ることはないのだがこれは入った、あまりにも素晴らしいから。爽やかなギターロック「忘レナ唄」、得意のラブソングを美メロのミドルテンポで唄った「月へ行こう」からの、ヘンテコ展開「JUNKO」。そして生きづらさを歌いながらそれでも生きていこうぜと明るさを感じる「poole」と非常に見事な構成。4曲中4曲当たりってどんな打率。今まさに黄金期。


4位 柴田聡子『Your Favorite Things
この人ってこういう曲調だったけ?と驚いた。「Movie Light」の美しい歌声から始まったアルバムはブラックミュージックを内包した楽曲が続く。「Synergy」のグルーヴ感を自分流に解釈したポップスからはじまり、そのグルーヴをオフビートに咀嚼した「白い椅子」が続く。そしていよいよ柴田聡子なりのダンスミュージック「SideStep」が出たときにはもうあんたは凄いよと思うしかないのであった。


3位 壊れかけのテープレコーダーズ『楽園から遠く離れて
2007年結成の4人組男女ツインボーカルオルガンロックバンド。そのオルガンの響きが荘厳な響きを鳴らし、優しく囁くかのような小森 清貴、ハスキーがかった遊佐 春菜というタイプの違うヴォーカルが響く。「梢」のようにゆったりとしたメロディで、懐かしい味わも感じるが「The West Land」のように彼らでしかできないロックを体現しており単なるゆったり音楽ではない調和の取れた音楽世界。


2位 井上園子『ほころび
シンガーソングライターのメジャー1stアルバム。フォーク、カントリー、ブルースを咀嚼したアコースティックは1曲目「三、四分のうた」からグッと引き込まれる。彼女の主張性の強い声がまるで演説かのように響く。「きれいなおじさん」では自分を理不尽に攻撃したおじさんに、てめぇがやれよと言い返すさまは痛快である。ここにあるのは井上園子の一本通った芯を見せつける、生き様。














1位 cali≠gari『17.5
今年の1位は異形のベテランV系バンド。
このアルバムは『17』発売後に、全曲追加録音もしくはリミックスした上で3曲を加えた完全版。じゃあ安くもないフルアルバムを不完全な状態として売ってたのかよという不満はまずある。
ただ、その完成度の高さはケチのつけようがない。ノイジーなロック「サタデーナイトスペシャル」で始まると、「龍動論舞曲」の華やかでポップなサビ、なんとも中身のない「バカ!バカ!バカ!バカ!」、「東京アーバン夜光虫」の洗練されたシティミュージック。いつも通り曲ごとに雰囲気の変わる幅の広さ。ただそれは17と共通。
新曲としてジャズロック「ダバダ」真っ当なロック「香る終焉に3のアーキタイプ」に加え、尾崎豊のカバー「十七歳の地図(SEVENTEEN’S MAP)」。このカバー曲によってメンバーが17歳だった80年代というこのアルバムのテーマがより一般リスナーにもはっきりとわかりやすい形でこのアルバムをまとめている。小手先の技を使わず真正面からシャウトで尾崎に敬意を表す。
cali≠gariの80年代はポップスもあればトランスレコードのような破壊的な曲もある。ロックの幅が非常に広い時代だった。それって今のcali≠gariそのものじゃないか


という訳で今年の1位はcali≠gariでした。
彼らは去年も『16』という傑作を作っていて個人的にはそちらの方が完成度は上なのだが、『17.5』もさすがの高い安定感で1位を獲得して今が第2の全盛期です。
でもほかの人の年間ベスト見ても全然これを上げる人いないのはなぜだ。ベテランV系という絶妙にロックファンが無視しそうなポジションのせいか?去年はカリガリ上げる人ちょくちょくいたのに。ということでこの記事で一人でも億の人に聞いてほしい。
なお次点は、片思い『からまるおも』、清春『ETERNAL

昔ほどものすごく熱中するアルバムが無くなってきて本格的に私の音楽ファンの感性が老いさらばえている。今の流行の音楽についていけない。若いバンドの中ではガツンと来ていたギリシャラブ(年間ベスト企画で2回、ベストトラックでは3回選出)が解散してしまい、更に世間と隔たりを。
でもそんな死にかけている音楽ファンでもちゃんと結束バンドやマカロニえんぴつなどの売れ線にひっかる当たり今油乗っている所は強いなぁと思う。

最後にベストトラック置いておきます。





10位 壊れかけのテープレコーダーズ「TheWestLand」

9位 スチャダラパー & STUTS 「Pointless 5 feat. PUNPEE

8位 ポップしなないで「落堕」

7位 結束バンド「月並みに輝け」

6位 しろねこ堂「水金地火木土天アーメン」

5位 PUFFYとついでにTOOBOE「コラージュ」

4位 岸田教団&THE明星ロケッツ「エイトビート・バーサーカー」

3位 初星学園 篠澤広(cv川村玲奈) 「光景」

2位 中田花奈feat.ぽんのみちオールスターズ「ポンポポポン」

1位 リーガルリリー「キラキラの灰」


ガールズバンドアニメ豊作時代だが、しろねこ堂はギターロック中心になりがちな中で異色のポスト相対性理論楽曲。作詞:山田尚子,作曲:牛尾憲輔というメンツでここまで真部感を出せるとはやっぱり達者な人だなぁと。
そして結束バンドはトレードマークの疾走感あるロック。
アニソンで知られる岸田はノンタイアップのアルバム曲。彼ららしい衝動感あふれる、というか衝動しかない叩きつけるような原始的なロック。それをバーサーカー=狂戦士と名付ける説得力。

アニソンに豪華アーティストは普通だが、PUFFYとTOOBOEなんて異色コラボを持ってくるのは驚いた。暗さを感じるTOOBOE曲を二人が心の元気で歌う。
またアイマス曲に長谷川白紙が提供した「光景」は消えてしまいそうな繊細なキャラの声と音の洪水のようなトラックの完全融合。
そんな中である意味豪華なのが中田花奈。麻雀日常系アニメの主題歌で元アイドルの現役プロ麻雀士が歌わせるという。麻雀の役を心地良い言葉遊びに転用し中毒性高いのはアニソンの特権。声優コーラスもいいアクセント

非アニソンは
ポップしなないで、鮮やかないつものメロディと歌声に乗せて 破滅したカップルの歌。ギャップで際立つ破滅感。
スチャダラパー、STUTS、PUNPEEという豪華六人で脱力感のあるラップの成熟性を味わう。
壊れかけは、見事な展開から始まる幻想的なロック

そして1位はリーガルリリー
悲しみを携えたロックはいつも通りなのだがサビの開き方からきらきら星の引用、そしてギターソロ!
その全てが歌詞の世界を高めることに効果を与えておりポップなのに寂しい。リーガルリリーでしか作れないロック。

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