「スター・ウォーズ(エピソード4)」の正しい後継者たち
一九七七年にアメリカで公開され、翌年日本に上陸された「スター・ウォーズ」(現エピソード4/新たなる希望)。この映画は大ヒットしてエンタテイメントの世界を変えた。「スター・ウォーズ」は続編が二本(エピソード5・6)作られ、前日譚三部作・新三部作・そして多数の外伝が多くのメディアで製作され「スター・ウォーズ・サーガ」世界は今なお発展を続けている。しかし、「スター・ウォーズ」(以下エピソード4のみを指す)のみにあって、その後の作品群から失われてしまったものがある。そしてそれは、意外なところで受け継がれていた。
一九七七年夏、アメリカで大ヒットした「スター・ウォーズ」だが、日本での公開が一年遅れることとなったため、東映と東宝は「このスキに『スター・ウォーズ』っぽい映画を作って一儲けしよう!」と目論んだ。そうして急遽制作されたのが東映「宇宙からのメッセージ」、東宝「惑星大戦争」である。中でも「宇宙からのメッセージ」は「仁義なき戦い」の深作欣二が監督し、千葉真一・真田広之・志穂美悦子ら東映のアクションスターたちが顔を揃えた超大作として期待された。ところがフタを開けて見れば、大コケとまでは行かないまでも赤字で、海外興収でやっとトントンくらいの結果となった。
……はい、その通りでございます、外薗先生。原案に石森(現石ノ森)正太郎・野田昌宏の二大巨頭が加わっているにもかかわらず、科学的にと言うか、SF的にあり得ない描写のオンパレード。(たぶん名前を貸しただけの)野田昌宏は小松左京に「お前を日本SF作家クラブから除名するぞ」とまで言われたそうだが、当の小松左京が「さよならジュピター」を製作してしまったことでうやむやになったらしい。
しかしDENNYはこの映画をこよなく愛しているし、「スター・ウォーズ」の正統な後継者だと考えている。
物語は「里見八犬伝」のSF版である。悪のガバナス帝国に侵略された惑星ジルーシアは、伝説の「リアベの実」八個を宇宙に放ち、八人の勇者を集めて故郷を救わんとする。しかしリアベの実が集めた勇者のメンツは
・暴走族二人(一人は真田広之)
・チンピラ
・金持ちのお嬢様
・退役軍人(ヴィク・モロー)
・そのお付きのロボット
・白馬の王子様(千葉真一、ガバナスの正統王位継承者)
・裏切り者
……千葉真一とヴィク・モロー以外、見事に全員がボンクラである。しかし続編群のことを忘れて「スター・ウォーズ」をもう一度見直してもらいたい。主人公チームは
・(士官学校は出てるらしいが)戦争で英雄になることを夢見る田舎の農夫
・ドロイド二体
・借金で首が回らない密輸業者とその相棒の猿人(ウーキー)
・元老院議員の娘(おてんば)
・かつての英雄(ジェダイ)
と、オビワン以外みごとに全員ボンクラである!
「スター・ウォーズ」ラストで、愛すべきボンクラたちは勲章をもらい、英雄となる。そしてスター・ウォーズ・サーガはボンクラたちの物語ではなく、英雄たちの物語として続いて行った。
一方、「宇宙からのメッセージ」のラスト。地球を救ったリアベの勇者とジルーシアの民を英雄として迎えようとする地球大統領(丹波哲郎)に対し、ヴィク・モローは(他のメンバーに相談もせずに)「我々は新天地を目指して旅立つ。新しい時代を作るのは若者の仕事だ」と、勲章を断って去って行くのである! DENNYはここに深作欣二の意地を見た!
「スター・ウォーズ」から「宇宙からのメッセージ」に渡された「ボンクラが宇宙を救う」映画のバトンは「スター・トレック」のパロディとして製作された「ギャラクシー・クエスト」に受け継がれた。
「フィクション」という概念を知らない宇宙人たちが地球のSFドラマを傍受してドキュメンタリーだと思い込み、自分たちの星を救ってもらうために役者たちを(宇宙の英雄だと信じて)集める。しかし彼らは揃いも揃って人間のクズだった……!
「スターを演じる俳優たちが本物と勘違いされ、俳優たちも興行と勘違いして現地に行ってみたら、悪党と本当に戦うハメになって大慌て」というプロットは「サボテン・ブラザース」からのイタダキ(たぶんもっと原典はあると思う)だが、主人公たちが
「作品にマニアックなファンがついたおかげで一生食うに困らなくなった三流役者たち」
であることが作品にヒネリを加えている。クライマックスの
「トカゲ・ヘッドにかけて!」
はマジで泣けるので、こちらもオススメである。
地球のファン(もちろん全員ボンクラ)たちも最後にひと活躍するぞ!
そしてこの系譜を現在進行形で受け継ぐのが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズである。刑務所内で出会ったボンクラたちが堂々と「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(銀河の守護者)を名乗るのも格好いいし、第一作のクライマックス、主人公のクィル(肉体的には最弱)が圧倒的に強大な敵に向かって
「タイマンで勝負をつけよう。ダンス・バトルだ!」
もちろん相手にされないのだが、そこがいい!
「ボンクラが宇宙を救う」映画よ、永遠なれ!