見出し画像

#2  ぴんくのたぶれっと


○ 2 - 1     探偵事務所 昼

応接スペースでライチとヤクザ風のいかつい男(武松)が喋っている。

武松 「お前ら、最近悪さしてない?」アイス食べながら
ライチ 「はい?」
武松 「特に、あいつら」
ライチ 「なにかご迷惑かけました?」
武松 「最近な、どっかのバカハッカーが悪さしてるみたいなんだわ」
ライチ 「クラッキングですか?」
武松 「いや、恐喝だな」

○ 2 - 2     薄暗い部屋(武松の回想)


 大津木(床に正座)が武松に相談している。
大津木 「全財産だったんです」号泣しながら
武松 「7万が?」違うアイス食べながら
大津木 「負けが混んでて」
武松 「あそ。とりあえず警察だろ」
大津木 「ダメです。そいつ、エスパーなんすよ」
武松 「物でも浮かすんか」
大津木 「俺のこと、ゴリっとお見通しなんすよ」
武松 「なんじゃそりゃ?」

○ 2 – 3     人気のない公園 夜(大津木の回想)

夜の公園。大津木が遊具の中に隠れているが、あっさりと見つかる。
自称エスパー 「全部見えてるから」
 怯える大津木。

○ 2 - 4     薄暗い部屋(武松の回想)

武松 「知り合いなんじゃねえの?」
大津木 「でも俺が金髪好きって知ってたんですよ? 妹にも言ったことないのに。だから、だから、エスパーには逆らうなって習ったじゃないですかあ?」
武松 「・・・」

○ 2 - 5     探偵事務所 昼

ライチ 「身内の犯行では?」
武松 「それが、こいつだけじゃねえんよ。被害者」
ライチ 「ハッカーがカツアゲしてるってことですか?」
  ライチと李の目が合い、李が首を振る。
   (少し離れた作業デスクでPCに向かう冬吾と李。冬吾はヘッドフォンしてる)
ライチ 「で、依頼は?」
武松 「犯人見つけて売って欲しい」
ライチ 「なるほど」
  一瞬考えるライチ。
ライチ 「喜んで」笑顔で

---オープニングクレジット---

○ 2 - 6     スマホの中(グラフィックス)

女子高校生のスマホの中のデータたち。
配信アプリの動画、セルフィー、プリクラ、カフェの写真など。

○ 2 - 7     路地裏の一角 夕方

         人目につかない場所。
   二十歳頃の男三人が喋っている。
   水野、加藤、石原。
   その一人、水野がタブレットを扱っている。
加藤 「JK?」
水野 「イエス」
  タブレット(ピンクのケース)でメッセンジャーの画面を示す。
  エリの売春に関するやりとり。価格交渉など。
石原 「やばっ」
加藤 「えろー」
  エリの写真を見て盛り上がる三人。
水野 「エリちゃんやれるんじゃね?」
石原 「マジで?」
加藤 「やば」
加藤 「エロッ」

○ 2 - 8     歩道 夜


 タブレットでマップを見ながら、歩く三人。
     水野、加藤、石原。
     何かを探し歩いている様子。

○ 2 - 9     歩道 夜

   薄暗い道。女子高校生二人が歩いている。
   その二人を背後からつける水野と加藤。石原は離れたところで見張り。
  高校生が別れると、その片方(エリ)に二人が接近。
水野 「鈴木さん」
  エリが振り返る。
水野 「さっきのありみく? まゆちゃんか」
エリ 「はい?」
  逃げようとするエリを加藤が制する。
水野 「ねねねエリちゃんさあ、援交してるよね?」
   エリ驚きながらも、首を振る。
   タブレットを見せる。
エリ 「・・・?」
   エリ、驚く。
加藤 「財布出して」
   エリが震えながら財布を出す。
   石原が財布を奪い、慌ててお札を抜き出す。
加藤 「キミ4千円て」
水野 「喋ったら、全部バラすから」
   走り去って行く三人。

○ 2 - 10     各所 色々な時間

   色々な所で恐喝を繰り返す三人。
   色々な財布からお札を抜き取る描写。

○ 2 - 11     石原の部屋 夕方

   狭いワンルーム。
   缶チューハイを飲みながら会話する水野と石原。
   加藤はタブレットを弄っている。
水野 「俺思うんだけどさあ」
石原 「うん」
水野 「もっとすごいことできんじゃね?」
石原 「例えば?」
水野 「なんか、こう、俺らを社会にアピれること」
石原 「犯罪系?」
水野 「とか、新しいビジネス系」
石原 「例えば?」
水野 「だから、もっと楽して稼げるやつ」
石原 「例えば?」
水野 「・・・」
加藤 「きたっ! やべえこのおっさん!」
   〜  〜  〜
水野 「あ、もしもし。西山四郎さんですか?」
西山(田中の声) 「はい」
水野 「あなたねえ、会社の金、ちょろまかしてるよね?」
西山(田中の声) 「何ですか?」
水野 「佐藤部長と、こそこそメールしてるでしょ」
西山(田中の声) 「・・・」
水野 「10万で黙っときますけど」

○ 2 - 12     公園 夜

マスクで顔を隠した水野、加藤、石原が公園にやってくる。
  ベンチには男性(日下)の姿が。
  水野が西山(= 日下)に接近。石原と加藤は見張り。
水野 「西山さん?」
西山(日下) 「はい」
水野 「お金持ってきた?」
西山(日下) 「はい」
  西山(日下)が封筒を差し出すが、なかなか手を離さない。
水野 「ちょい!」
   見張りの石原と加藤が駆けつける。
   日下が水野をねじ伏せる。
   すると、物陰から田中と李が飛び出し、2人の身柄を拘束する。
  
   ※ 探偵チームの罠で、西山の正体は日下。
   日下と田中が犯人二人をねじ伏せる。
   石原が隙を見て逃げるが、李が走って捕らえる。

○ 2 - 13     車内 夜

   バンの中。
   運転する日下。
   助手席にはライチ。
   真中のシートには冬吾、李、水野。
   後部座席に田中と加藤、石原(泣いてる)。
   田中が取り上げた財布から学生証を見つける。
田中 「君ら大学生?」
李 「ケータイもトバシじゃないすね」
   冬吾はタブレットを触っている。
水野 「どこ向かってるんですか・・・?」
田中 「恐喝罪って結構重いよ」
冬吾 「位置情報オフった」
ライチ 「話してくれたら、罪が軽くなる方法教えてあげる」
   水野が口を開く。
水野 「ネットで買いました」
ライチ 「なんてサイト?」
水野 「あの、なんていうか、普通には入れない」
李 「闇サイト?」
水野 「はい」
李 「入り方知ってたの?」
水野 「えと・・・色々頑張って調べて」
加藤 「あの・・・」ライチに
ライチ 「ああ。自首したらいいよ」

○ 2 - 14     探偵事務所 夜

   机を囲むライチ、田中、武松、李。
   メンバーが武松に事情を説明する形。
   冬吾はPCに向かっている。
   部屋のモニターに闇サイトが映し出される。
李 「タブレットの販売サイトですね」
武松 「30万?」タブレットの値段に驚く
李 「購入をクリックすると、ダミーの輸入玩具のサイトに飛びます。で、諸々記入して決済。で、数日後にロッカーと鍵の位置情報が送られてくる、って流れです」
   画面にはQRコード。(ビットコイン決済)
武松 「こっから黒幕めくれない?」
ライチ 「今やってます」
   PCに向かっている冬吾が頭をかきむしる。
田中 「ちなみに、待ち伏せは無理ですね。ロッカーにブツが入ってからメールがくるので」
李 「で、肝心のコイツですけど。簡単にいうと、他人のスマホを覗けるタブレットです」
李 「覗ける対象は、マルウェアに感染したスマホで、感染経路は、このアプリっすね」
  〈 無料アプリ:ハッキングガード2.0 〉
武松 「セキュリティーのやつ?」
李 「っすね」
武松 「そいつがウイルスばら撒いてんのか?」
ライチ 「皮肉ですね」
   李がタブレットを操作する。
   スマホ端末の情報がずらりと並んでいる。
李 「トーク、SNS、画像、位置情報、その他いろいろ覗き放題です」
   驚く武松。
李 「今こいつで見れるのが、ざっと3000件ですね。それも福岡の人間ばかりなんで、端末ごとにカスタムされてるかもですね」
武松 「これがネットで買えるってわけ・・・?」
ライチ 「そういうことですね」
武松 「これ作ったバカ、絶対に探しだせ」

○ 2 - 15     探偵事務所 夜

   冬吾がPCに向かっている。
   闇サイトやタブレットの分析。
   ライチがパンとコーヒーを冬吾に持ってくる。
   話しかけはしない。
   (冬吾のメモの取り方が独特。立体メモ、グラフ理論でネットワーク系を整理など)
冬吾 「ありがとう」
ライチ 「どう?」
冬吾 「オーナー特定はむずいかも」
ライチ 「冬吾には作れない?」
冬吾 「時間かけたらできるけど・・・ でも、ネットでこれ売るのは、最低だと思う」
ライチ 「そりゃあねえ」
冬吾 「バカにこんなの持たせちゃダメだよ」
   冬吾、タブレットを扱い、色々な人のスマホ情報を覗く。

○ 2 - 16     アプリ開発会社 朝

   後日。
   冬吾とライチが会社を訪問する。
   作業デスクが並ぶ部屋の隅、応接スペース。  
   ライチは記者、冬吾はカメラマンのような格好をし、社員の畑中に応対されている。
畑中 「でもバナーがちょっとうるさいでしょう?」
ライチ 「いえ、全然気になりません」
畑中 「そう言っていただけると」
ライチ 「デザインも素敵ですし」
畑中 「で、取材は僕だけですか?」襟を正す。
ライチ 「・・・すみません。その前に一つ、確認したいことが」
畑中 「はい」
ライチ 「ハッキングガード、ウイルスの媒介になってませんか?」小声で
畑中 「はい?」
畑中 「なんていうウイルスですか?」笑顔で。
冬吾 「新型です。スマホの情報を特定のタブレットからのリクエストだけにpeer to peerで送信するマルウェアです」
畑中 「何の情報ですか?」
冬吾 「電話帳、位置情報、端末内のトークの履歴、アプリの更新履歴・・・」
畑中 「そんなモノあるわけないですよ」笑う
冬吾 「あるんですよ」
畑中 「・・・」怪訝そうな表情。
ライチ 「ソースコード拝見できますか?」
畑中 「ダメに決まってるでしょ。というか、その話はどこから?」苛立つ
   他の社員が注目する。
   (ライチはピンクのタブレットを持っている)
冬吾 「バックドア仕込まれてたりは?」PCを覗き込む。
   畑中が怒りで顔を赤くする。

○ 2 - 17     車の中 昼

   後部座席に冬吾とライチ。
冬吾 「怪しいやついた?」
ライチ 「特には」
冬吾 「あんな会社潰れたほうがいいよ」
ライチ 「あら。毒舌」

○ 2 - 18     冬吾の部屋 夜

   冬吾の部屋。(事務所に間借りしてる)
   冬吾、プリントアウトしたコードを読んでいる。時々何か小声で呟いたり。

○ 2 - 19     クラブ 夜

   騒がしい派手な店。
   強面の男たちが飲んでいる。
   田中が聞き込みしている。
エヌさん 「業者?」
田中 「はい」
エヌさん 「何系?」
田中 「デバイス系ですね」
エヌさん 「は?」
   エヌさんが仲間を見る。皆首をふる。
田中 「あと変なハッカーの噂とか」
エヌさん 「ハッカーはてめえらだろ」
田中 「誰かのスマホが覗かれてるとか」
エヌさん 「そんなことできんの?」
田中 「いや、噂ですよ」笑う
エヌさん 「やり方教えろ」田中の肩に腕を回す
田中 「心当たりあったら連絡ください」
   田中が強引に立ち上がる。
田中 「因みに、もし人のスマホ覗けたら何しますか?」
エヌさん 「マーケティングと治安維持」

○ 2 – 20     探偵事務所 朝

李 「ライチさん」
   李がライチに報告書を渡す。
   マルウェア感染源になっているアプリの一覧。
李 「感染源のアプリです」
ライチ 「こんなに?」驚く
李 「どれも違う会社のアプリですね。全部ベンチャーですけど、そこそこ人気な奴もあります」
ライチ 「このアプリ全部を、第三者が木馬化させてるってこと?」
李 「そうなりますね」
ライチ 「それって可能なの?」
李 「できちゃってますね」
冬吾 「できるね」
李 「企業ぐるみって説は?」
ライチ 「まだ仮説は立てない方がいいよ」
李 「はい」
ライチ 「仮説って愛着湧いちゃうから」
李 「仮説は仮説として扱えってことですね?」
ライチ 「それでも、意外と囚われちゃうから。呪いみたいに」
冬吾 「変な関数多い」
李 「あ?」

ライチのケータイに電話着信。
ライチが応答して席を離れる

李 「ユーザー同士の連携は?」
冬吾 「その機能はないね」
李 「ハクティビスト説は?」
冬吾 「何系?」
李 「監視社会推奨派的なやつ」
  ライチが慌ててやってきてテレビをつける。
  テレビのニュースに釘付けになる三人。

○ 2 - 21     アイドルのライブ会場 昼

  所変わって、小さなライブ会場。
  五人組のアイドルがファン対応している。
  (物販ブースでは運営がファン対応)
あやのん 「今日もありがとう」ファンを笑顔で迎える。
れいにゃん 「ポーズどうする?」チェキをファンと撮っている。
あやんぬ 「来週のリリイベくるよね?」塩対応。
あさみん 「お名前でいいですか?」ブロマイドにサインする。
ことみんメンバーの元にも列ができている。
  物販の列に並ぶユッキー、チラチラことみんの方を見る。
  やがてユッキーの番になる。
ユッキー 「チェキ券20枚サイン券20枚サイン入りCD70枚」
  ユッキーが10万円を運営に渡す。
  周囲が驚く。

〜  〜  〜

ことみん 「あー! ユッキーさん!」笑顔で。
ユッキー 「お疲れ様。CD70枚買った」券をことみんに渡す。
ことみん 「えー!ありがとう!」笑顔で。
  運営がチェキを持ってやってくる。
  ユッキーが自分が被っている帽子を脱ぎ、ことみんに手渡す。ことみん、それをかぶる。
  運営が撮影し、写真をことみんに渡す。
ユッキー 「夏恋パラシュートのフリ今回ちょっと違ってたでしょ? あれわざと?」
ことみん 「え、うん。そう、変えてみた」
  ことみんがチェキにサインを書く。
ユッキー 「ことみんさあ、深海ギルドどこまでいった?」
ことみん 「え?」
ユッキー 「この前勧めたやつ」不機嫌そうに
ことみん 「えっと、まだあんまりやれてなくて」
ユッキー 「面白そうって言ってたじゃん。何でやってないの?」真顔で問い詰める。
ことみん 「あー、ごめんね。ライブと学校で忙しくて。今晩やってみるね」
ユッキー 「ほんと? 何時頃やる?」
ことみん 「えっと・・・」笑顔で
  タイマーが鳴る。
  ユッキーが早歩きで去り、再びことみん列の最後尾に並ぶ。

○ 2 - 22     ことみんの自宅 夜

  ことみん、部屋でつまらなさそうにスマホゲームをしている。
  大輝(彼氏)が背後からやって来てことみんの側に座る。
大輝 「何やってんの」
ことみん 「深海ギルド」
大輝 「流行ってんの?」
ことみん 「いや、オタクがね、勧めてきて」
大輝 「チワワさん?」
ことみん 「ユッキー」
大輝 「手紙くれる人ね」
ことみん 「そう」
大輝 「一緒にプレイすんの?」
ことみん 「せんし。話題合わせとかんと、お金落としてくれんくなるけん」
大輝 「もうそれキャバ嬢やん」
ことみん 「違うし。違うもん」

○ 2 - 23     ユッキーの自宅 夜

  ユッキーがタブレットを見ている。
  画面にはことみんと大輝の2ショット写真。
  ユッキー、仏のような笑顔のまま涙を流す。
  そして、壁に貼ってあることみんのブロマイドをはがし、千切って食べ、嗚咽しながらPCを操作する。

○ 2 - 24     ことみんの所属事務所 昼

  ことみんと末永社長が面談している。
  ことみん、末永社長のスマホを見て驚愕。
  大輝とのトーク画面がネット掲示板にまとめられている。
末永社長 「全部本物?」
ことみん 「いや・・・」動揺が隠せない。
末永社長 「彼氏いるの?」
ことみん 「はい・・・すみません」パニック。

○ 2 - 25    所属事務所のスタジオ 昼

  末永社長とことみん以外のメンバー4人がカメラ(三脚にスマホ)の前に立っている。
  事務所内で謝罪動画を収録中。
末永社長 「この度は誠に申し訳ございませんでした」
  全員が深々と頭を下げる。
末永社長 「しかし。確かに、琴美はアイドルですが、恋人がいないと公言したことはございません。あくまで、プライベートは本人の意思を尊重すべ・・・」
  突然、オタク2人組(とんちゃんとオタクA)が侵入してくる。
とんちゃん 「この犯罪者があ!!」
  とんちゃんが末永社長に殴りかかる。
  悲鳴をあげるアイドルたち。

○ 2 - 26     ことみんの自宅 夜

  ことみんが大輝と電話している。
ことみん 「うん・・・。え・・・? 別れるってこと?」

○ 2 - 27     ことみんの自宅

  部屋のチャイムがしつこく鳴り続ける。
  インターフォンにはオタク(花田)の姿。
無表情で宙を見つめることみん。
ことみん、ゆっくりと何処かへ向かう。
(画面はフレームアウトのまま)
窓を開ける音。
外にいるオタクの声が聞こえる。
花田(声) 「え、ことみん? ことミーン! え? ちょ、何してんの? え、ダメダメダメダメ。え。・・・ちょ、待って。 うぉあああ!!!」

○ 2 - 28( 2 - 20の続き)  探偵事務所 朝

冬吾、ライチ、李がテレビを見ている。
アイドル自殺のニュース。
〈地下アイドル飛び降り自殺。ネット書き込みが原因か〉
新野アナ 「発端は、スマートフォンのデータの流出だと考えられています。また、琴美さんの遺書には、両親とメンバーへの謝罪が綴られており・・・」
冬吾、複雑な表情。

○ 2 - 29     白鬼の自宅 昼

狭く、薄暗い部屋。
高価そうな家具は無く、散らかっている。
白鬼(顔は見えない)が電話している。
サブモニターにはアイドル自殺の記事も。
白鬼 「いろんな使い方があるんですね」
男(電話) 「大丈夫?」
白鬼 「何がです?」
男(電話) 「・・・」
白鬼 「端末からは絶対に足つきませんけど」
白鬼は会話しながら作業を続ける。
男(電話) 「さすが。ごめん、心配性なもんでね」
白鬼 「いえ。良いことだと思いますよ」

モニターには消防庁のサイト。
棚の上にはタブレットが飾ってある。
立っているタブレットの周りを猿の人形が囲んでいる。(モノリスに見立て)

○ 2 - 30   各メディア

ツイッターや2chなどでアイドル自殺事件に関する噂が。
〈ハッキング?〉
〈犯人は彼氏説〉
〈業界の闇。オタクの暴走〉

○ 2 - 31     探偵事務所 夕方

応接スペース。武松が訪れている。
武松 「大ごとになったな」
ライチ 「警察にも期待ですね」
武松 「・・・」
ライチ 「他の地域で似た事件は?」
武松 「いや。福岡だけだな」
ライチ 「・・・」考え込む
隣の部屋から音楽が漏れ聞こえている。

○ 2 - 32     冬吾の部屋 夕方

冬吾の部屋。大音量で音楽(jazzy hiphop系)が流れている。
冬吾、大の字で床に転がっている。

○ 2 - 33     探偵事務所 夜

事務所内で夕食を食べている冬吾とライチ。
冬吾 「ねえ」
ライチ 「ん?」
冬吾 「サイト、クラックしてもいい?」
ライチ 「バレない?」
冬吾 「多分」
ライチ 「焦ってるね」
冬吾 「そんなことないけど」
ライチ 「クラックしてどうする?」
冬吾 「リストとか盗めるかも」
ライチ 「いける確率は?」
冬吾 「五分五分」
ライチ 「本当は?」
冬吾 「90%」
ライチ 「おーけー」

○ 2 - 34     探偵事務所 朝

翌朝。
攻撃の段取りについて議論する冬吾と李。
冬吾 「で、購入フォームの改竄までやりたい」
李 「それいる?」
冬吾 「マスト」
李 「そこまでは頼まれてなくね?」
冬吾 「・・・」
李 「まあ、気持ちわかるけど」
冬吾 「やっぱさ、人を使うデバイスはダメだよ」
李 「は?」
冬吾 「機能が人を振り回すのは良くない」
李 「それはお前の考えっしょ。そこの判断はクライアントに任すしかねえって」
冬吾 「でもライチはOKって」
李 「・・・」
冬吾 「ディレクトリ見る感じ甘めだと思う」

冬吾と李がクラックを開始。
順調に進んでいく。

○ 2 - 35     白鬼の自宅 朝

白鬼の部屋。
PCから警告音がなる。

○ 2 - 36     探偵事務所 朝

冬吾と李がハッキングを続ける。
集中する冬吾。
冬吾 「リストかな」
李 「ハニーポットじゃね?」
冬吾 「かもね」
李 「おい」
冬吾 「大丈夫」
冬吾が色々と試み、トラップをかい潜る。

○ 2 - 37     白鬼の自宅 朝

白鬼が、PCに向かう。
クラックの詳細がモニタに表示されている。
白鬼、無言でモニタを見つめる。

○ 2 - 38     探偵事務所 朝

冬吾と李がハッキングを続ける。
冬吾 「ダミーだらけ」
突然、冬吾のPCに異変。
妙な動画が立ち上がり、再生される。
奇怪なイラストと、「you lose」の文字、けたたましい笑い声。
冬吾 「やばっ!」
李 「哇靠! !」
必死に対処するも、動画を消せない。

○ 2 - 39     白鬼の自宅 朝

  画面を見て笑う白鬼。(顔初登場)

○ 2 - 40 探偵事務所 朝

冬吾と李、必死に対処するも、
どうしようもなく、PCを強制終了する。
呆然とする面々。

○ 記録映像

ハンディカメラ風の記録映像。
田中が画面に向かって喋っている。
田中 「冬吾くんが苛立つのは珍しくて、印象的だったのを覚えています。顔のわからない相手に、私たちは苦戦を強いられます」



いいなと思ったら応援しよう!