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僕は「じぶんの意思でおしっこを漏らした話」をしようと思う【キナリ杯】

バンッ!号砲が鳴る。

ここから42.195キロの長い旅路が始まる。

自己ベスト更新を目指す人...

ゴール後の美味しい麦酒のために走る人...

達成感を味わうために走る人...

走る理由は人それぞれだ。正解はない。いや全部正解だ。

僕は...マラソン中におしっこを漏らすために走った。





ただの酔狂ではない。
おしっこというワードで「ただの下ネタ野郎か...」とそっとブラウザを閉じた人もいると思う。寂しいが、しょうがない。
こちとら初投稿だ。肩ぶん回しながら僕の中の熱を伝えたい。
市販のカレールゥのごとく誰に対しても70点を叩き出すそんな美味しさ(面白さ)は、今は必要ない。
美味いか不味いか、僕の面白いが皆さんの中で刺さるか刺さらないかだ。

面白いの意味は数あれど、僕の中での定義は3つ。

①希少性

みんなと同じ方向を向く、同じ目線で話す。
実生活ではとてもとても大事なことだけど面白さはなかなか出てこない。

男2人が真っ赤なペアルックでヒッチハイクしてみたり...

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九十九里浜で90個栗を並べたり...

北海道のはじっこまでチャリで向かったり...

人がやらないことに全力で取り組む先に面白いがあると思っている。知らんけど。

②実体験を語る

見たり聞いたりなんてものは迫力もないし、人に訴える力もないと思う。試したという知恵、これが人を感動させ、しかも自分の本当の身になる、血となり肉となる知恵だと思う


本田宗一郎さんの言葉。
面白さの定義であり、僕の大事にしている価値観のひとつ。
実体験は言葉に熱量を持たせる。

今の時代、奇抜な恰好でのヒッチハイクはYouTuberだと思われること。

九十九里浜で並べる栗はぬちゃっとしていること。

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北海道を4泊5日で縦断するには毎日20時間程チャリを漕がねばならぬこと(セイコーマートは命の恩人)。

インターネットが発達し、どこにいても様々な物に触れられる世界。
だからこそ体験とその時何を感じたかは大切にしたい。


③恥ずかしいをさらけ出せ

失敗や黒歴史恥ずかしいですよね...

手を振られていると思い、振り返したら自分じゃなかった。

大学デビューしようと思い髪を染めてオシャレな黒縁メガネを掛けてたら陰でトンボと呼ばれていた。

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結婚式の余興でさかなクンの格好で「DHC〜♪」と叫びつつアーモンドフィッシュを会場にばらまいた。
(席に戻ると...何故だろう誰とも目線が合わない)

失恋した女の子を慰めながら「オレじゃ...ダメかな?」と最大限カッコつけた挙句、告白しフラれる。

ふと寝る前に思い出し口を枕に押し付け「くふぅーぃ」と声にならない叫びを発さないとやってられないエピソードの数々。
ところがどっこい、これらのエピソード周りに話してみると案外引かれない。引かれないどころか、笑いになるわ、相手との心の距離がぐーっと近くなる。
だからみんな!もっともっと恥ずかしいをさらけ出していこうぜ!!

そして社会!何かに挑戦して失敗した人・恥ずかしい経験した人を冷笑嘲笑するでなく、自動販売機の「あったか〜い」よろしく柔らかい笑いで包んであげようぜ!!

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おばあちゃん家のコタツのようなそんな温もり


さて、本題に戻ろう。
そんな訳で「マラソン中におしっこを漏らすこと」は
僕の中で面白いの要素を充分満たしていた。

もともとマラソンは趣味のひとつ。
僕自身、一時は自己ベスト更新のため毎日走っていた。そんなランナー達を悩ませる大会当日の難敵が「トイレ問題」である。
尿意がきてトイレへ行くとそれだけで30秒〜1分ロスをしてしまう。
自己ベスト更新を狙うランナーは1キロごとに〇分〇秒で走ると決めているので、トイレ問題は大きな命取りになる。
そんな致命的なタイムロスを無くす必殺技が「ランション」だ。

「ランション」とは走りながらおしっこをすること。
オリンピック等を目指すランナーの中では、そこそこ市民権を得ている行為らしい。
最近でいえば、2016年オリンピック男子フルマラソンカンボジア代表の猫さんが「ランション」したトークをすべらない話で披露していた。

と...ここまで書くと「なーんだ、こいつ。希少性だのなんだの語ってたけど、速く走るために致し方なく漏らしたんじゃないか!」

違うんだ。その日の僕はタイムも何も関係がなかった。言ってしまえばゴールは42.195キロ先ではない。
おしっこを漏らすことがゴールだったんだ。

みんなの気持ち分かるよ..
どこぞの優秀な宇宙海賊でなくても、こう思う。

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ただ、それでも語らせていただこう。

おしっこを漏らすことに対して立ちはだかった壁は2つ。

①常識という名の門番
10キロ過ぎ、尿意を感じる。
よしよし、良い傾向だ。ひとしきり膀胱を褒めた後、おしっこが出来るかトライしてみる。
出来る気配を感じられない中、教育と習慣からくる常識の恐ろしさを感じていた。

ご飯はよく噛んで食べること
廊下は走らないこと
おしっこはトイレですること

20数年間の常識は強力だ。上記の事柄は頭で考えるではなく、体が覚えてしまっている。
僕の中で天使と悪魔がささやく。

天使「頑張って。きっとあなたならやり遂げられるわ。」

悪魔「あなたにはムリです。面白いことがしたいというちっぽけなプライドは木っ端みじんになりますよ。あの地球人のように。」

僕「あの地球人のように…?クリリンのことか…クリリンのことかーーーーーっ!!!!

怒りの界王拳で常識を打ち破ったが、次なる敵は目の前まで来ていた。

②あぁ愛しのおばあちゃん
(ここはトイレ...ここはトイレ...)自己暗示をかけつつ呪文を繰り返し、TOTOの便器がぼんや~り見えた瞬間、沿道からおばあちゃんの声が聞こえた。
「頑張れぇ〜」
くしゃっとした笑顔でマラソン協賛スポンサーの旗をパタパタと振っている。
突如、僕の目の前には茹でたばかりのトウモロコシを祖母が持ってきたあの暑い夏の情景が広がる。
若手芸人のネタ見せのごとく次々と脳内にやってくる祖母との思い出。ダメだっ!ここでは出来ない。僕はおばあちゃんが大好きなんだ。白旗をあげ綺麗な景色を見つつ走る。

そこから5キロほど走った後、ついに歓喜の瞬間が訪れる。
17キロ過ぎ…コースは市街地から人の少ない湖の周りに移っていた。
後方のランナーの姿は見えない。恐らく3分ほど空いている。沿道におばあちゃんの姿もない。
舞台は整った。恥ずかしさに打ち克ち、面白さの階段をもう一段登るんだ。
(ここはトイレ...ここはトイレ...)とにかく頭の中で念じた。

すると…それは東南アジアで雨季に訪れるスコールのように僕のナイキの真っ赤なレースパンツを濡らした。
ポツッと一粒の水滴が落ちたと思った次の瞬間には、激しく流れ出ていたそれ

そうです。僕はおしっこを漏らしたのです。
嬉しさのあまり、ニヤニヤしながら走るパンツびしゃびしゃ男。
僕はこのマラソンでゴールしたんだ。

…話はこれで終わりではないのです。
人間の常識のアップデートの早さとは恐ろしいもので…












35キロ過ぎで何故かもう一度漏らす。

パンツは濡れても心はカラッとしていたそんな11月の話。


…いかがだったでしょうか。
漏らしたついでに心の声も少しお漏らし。
この記事を書いているとき言葉を使った悲しい事件が起きた。
言葉には様々な側面があり、視点が違えば使い方も変わる。
言葉は鋭い。が、柔らかい。
言葉は人を傷つける。が、人を幸せにする。
僕自身、言葉の使い方はまだまだ未熟。人を傷つけることだって今までもこれからもたくさんあるだろう。
それでも…なるべく多くの人が面白いな、楽しいなと思ってもらえるように話したり書いたりしていきたい。

世の中にはこんなバカもいます。辛い状況にある皆さんもクスッと笑ってもらえたら僕と僕のパンツも報われます。

最後に松本さんが詩を書き、浜田さんが歌った名曲『チキンライス』から大好きなフレーズを1つ。

最後は笑いに変えるから

これからもどんどん恥ずかしいを笑いに変える。僕にしか出来ない面白いを目指して。

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