[補足]「後ろを歩くもの」に関する事情
「後ろを歩くもの」で当時の社長さんが亡くなった前後には、ほかにもちょっと不思議な話があった。
まず亡くなった当時、当の社長さんが「1年休んで経営の勉強をしてくる」と言って、様々に準備をしている途中だった。
体調が悪いというのが主な理由だったが、それでも別に入院治療が必要だったわけではなく、病気になって身動き取れなくなる前に休暇をとって、ついでに経営の勉強をしに海外に行ってくる、という話だった。
急逝で会社は混乱したが、そもそも社長が居ない体制で回るようにと準備をしている途中だったので、そのまま新体制に移行したのだった。
もう一つは秘書さんの挙動だ。
入院当初は本当に「風邪だと思うけど、医師が様子を見たいから入院になった」という話で、ベッドの上で仕事をしており、見舞いに行った人たちも口々に元気だったと言っていた。
そんな中、ひとり秘書さんだけ様子がおかしかった。
同時期に風邪を引いてようよう出社した私が、会社の玄関でついボーッとしていた時、秘書さんはなぜか私を見ないようにしていた。
様子をおかしく思って近づくとうつむいてしまう。
声をかけたところでやっと私だと理解して安堵の笑みを浮かべたのだが、理由が変だった。
「白っぽい何かが玄関にいたから、社長の幽霊かと思って怖くて見られなかった。マスクだったんだね。」と言う。
私はこの時まだ何も知らず、何事かと事情を聞こうとしたところで部長に声をかけられ、入院を伝えられた。
この時、秘書さん以外は全員「すぐ戻ってくる」という認識だった。なぜひとり秘書さんだけ、そのように思ったのだろうか…。
社長が亡くなった原因は当時は不明だったが、症状から考えて「劇症溶連菌感染症」だったのではないかと思う。
症状についてはwikiが詳しい。
マスコミが「人食いウィルス」とセンセーショナルに報道する2年ほど前の話であり、あの状況で入院させた医師はまさに慧眼であったが、相手が何者かわからないのでは手の打ちようがなかったろう。
あと2年ほど遅かったなら、と今でも思う。