ジーンズの生地は凸凹が命!シャトル織機こそが色落ちのキモだった!?
昨日話したジーンズの色落ち。
その中で肝になるデニム生地のお話。
シャトル織機。別名力織機。
現在の色落ちを楽しむジーンズのために欠かせない
織機です。
このシャトル織機。
今現在世界中どこに行っても生産はされていません。
現存する織機をメンテナンスしながら使わないと
いずれ耳付きのデニム生地は絶滅してしまうかも
しれません。
このシャトル織機。実は問題点の方がかなり多い。
1.織り幅が80cmほどしかない
2.織れる速度が遅い。1時間に5mほど。
3.騒音が大きい
4.均一な織の反物にならない
品質にムラのあるシャトル織機。そして生産効率が
悪い。
これらの問題は生地のクオリティを上げていく上では
解決しなければならない問題でした。
そしてより小売の良い革新的な織機が誕生。
その「革新織機」にとって変わられていくのは
自明の利だったわけです。
そこはリーバイス社とて同じ。
革新的な織機の登場でリーバイス社も工場に
シャトル織機から革新織機の入れ替えを随時行って
行きます。
革新織機は
1.シャトル織機の倍の幅で織れる
2.織れる速度が倍になり、生産効率は4倍に。
3.杼(シャトル)を飛ばさない分騒音が小さい。
4.経糸の上下の動きが小さく、またより均一に緯糸に
力が加わるので、丈夫で均一な反物ができるように。
こうして80年代に入ると世に出回っていたジーンズは
ほとんど革新織機の生地に変わります。
ところが日本人によるヴィンテージブーム到来。
色落ちへのこだわりが叫ばれる段になり、
どうして現代のジーンズが昔のジーンズと同じような
色落ちにならないか喧々諤々始まったわけです。
そこで今一度シャトル織機にスポットライトが
当たります。
色落ちの1番のポイントはムラっ気のある生地による
ところが大きいとわかったわけです。
ここでのポイントは2つ
1.使っていた綿糸の撚りが均一でなくムラ糸に
なっていた。
2.シャトル織機は低速でシャトルを飛ばすため動きが
大きく、ムラのある生地になっていた。
この二つのポイントによりジーンズの表面は
程よく凹凸感が生まれ、色落ちが均一ではない
あの独特の縦落ちや点落ちが生まれたんです。
このことから
◯ムラ糸をまた作ることができれば。
◯その糸を使ってシャトル織機で生地を織る。
そうすれば昔のジーンズに近い色落ちになるのでは
と日本人は考えたわけです。
そこで
綿糸は
コンピューターを使って意図的にムラになるように
プログラミングしコンピュータースラブ糸を
作り出します。
そしてシャトル織機復活。
改めてシャトル織機が色落ちを生み出す仕組みを少し。
シャトル織機はあの「鶴の恩返し」で鶴が織っていた
機織り機と原理は一緒。
経糸を上下に動かしてその間に杼(シャトル)を
飛ばして緯糸を手前に詰めていく。
これをモーターを使って動かしているわけです。
◯経糸の上下の動きが大きいこと。
◯それにより振動が大きいこと。
◯その振動によって生地にムラができてしまうこと
◯スピードが遅く緯糸が革新織機ほど真っ直ぐに
入っていかないこと。
◯まっすぐ入らないことで膨らみのある凸凹の
生地が生まれてしまったこと。
これらの不都合が実はヴィンテージジーンズの
独特の色落ちを生み出していたわけです。
このシャトル織機を復活させるには
これはヴィンテージジーンズブームのタイミングが
良かった。
このブームの1980年代終わりから90年代は
まだ革新織機と入れ替えの最中。
現役のシャトル織機はまだ多く日本に残っていた。
こうして世界でもほとんどない、ヴィンテージデニム
生地を生み出すことのできる国として日本は
世界中から認知されて今に至るんです。
シャトル織機を維持するための努力を惜しまない
日本人。
そしてヴィンテージ生地を生み出すためには
ムラ糸すら作り出してしまうその研究熱心さ。
日本人がいなかったら今のヴィンテージジーンズの
ブームやジーンズの色落ちを楽しむなんて
ことはできなかったかもしれません。
日本人すごい!
ところでセルビッチこれはシャトル織機にしか
付かないディテールです。
細かいことはさておきセルビッチは杼(シャトル)が
左右に動くから作れるんです。
革新織機は緯糸は一方向からしか入りませんから
セルビッチは作れないんです。
それから506XXのTバック。
これも実はシャトル織機で織るが故にできた
ディテール。
大きいサイズのジャケットを作ろうと思うと
シャトル織機の織り幅では足らなかったんです。
そこで真ん中で生地を足して幅を広くしたと
こういうわけです。
今日はシャトル織機のお話でした。