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自分はどのような本を読んできただろうか
自分がどのような本を読んできたか。
中学生の私は、週に1度は駅前の本屋で立ち読みをしていた。もうそれはそれは大昔のことである。
その時に自分で買った本として最初に思い出されるのは『梟の城』だ。
司馬遼太郎の作品は実はそれ以外読んだことがない。
大学生の時分、京王線の車内でどこで乗り換えれば良いかと狼狽していた人がいたので、声を掛けたら『燃えよ剣』のドラマで土方歳三役を昔やっていたんだと、最終的に自己紹介されるという物珍しい経験はあったが、司馬遼太郎作品とは中学生の時読んだその一冊で途絶えている。
その後、歴史小説に耽溺し、北方健三の『水滸伝』の呪縛からはとうとう高校生か大学生まで逃れることができなかったことが思いだされる。
大学生になると、日本文学や海外文学を少しくらいは読んでみるかと、それこそ有名どころは手当たり次第に読んだ。
夏目漱石、芥川龍之介、谷崎潤一郎、太宰治、川端康成、田山花袋、泉鏡花、梶井基次郎、三島由紀夫、森鴎外、安部公房、井伏鱒二、坂口安吾、中島敦、樋口一葉、カフカ、チェーホフ、シェイクスピア、ドストエフスキー、ヘミングウェイ、メルヴィル…
あまり思い出せないが、この人たちの作品は読んだ記憶がある。
こう見るとどうも立派な読書遍歴とは言えそうにない。
しかし、この立花隆の読書遍歴は凄まじいものがある。
今年の4月逝去された「知の巨人」立花隆。
存在こそ知ってはいたものの、彼の著作は全く読んだことがなかった。
「知の巨人」と呼ばれる人の頭の中を少しでも見られるならと、時間のできたこの夏に数冊買い込み、読み込んだ。
彼の本棚(そう呼んでいいのかわからない程に彼の猫ビルは本棚だらけ)と自分の本棚と見比べると、自分は本を読んできた方だという自負がかけらもなくなる。
著書の中で、仕事と一般教養の中での読書について実践に役立つ14箇条を記しており、今それは私の本を買う際、読む際の秤となっていることは間違いない。
・金を惜しまず本を買え
・1つのテーマについては複数の類書を求めること
・選択の失敗を恐れるな
・自分の水準に合わないものは無理して読むな
・中途で投げ出そうと決意した本も最後までページを繰ること
・速読術を身につけよ
・読書と並行してノートをとるな
・人の意見やブックガイドに惑わされるな(といっても私は氏の本の中で勧 める本などは参考にしている)
・注釈は読み飛ばすな
・読書において懐疑心を忘れるな
・著者の示す情報の根拠はどこにあるかを考えよ
・疑問を持ったら、オリジナルデータにあたるまで疑うこと
・翻訳書によくわからないところがあれば、誤訳でないかと疑え
・若いときは何をさしおいても読書せよ、20~30代で得た知識はその後の人生にとって決定的に重要である
簡単に書いたので多少の「誤訳」はあるかもしれないが、以上が氏の考えである。
なるほど、と思うものばかりで関心させられる。
また、専門家についての言及はどの仕事にも置換できるのではないかと思う。
”専門家は専門的な知識でかためられた結論を下す。
しかしそれを外から見てみると何かおかしいと感じるときがある。”
まさにこういうようなことは自分の日常にも潜んでいるのではないかと思う。
氏は、こういった問題に対して、独学で調べ上げ、それらを整理していく。
氏の取り組むようなレベルの高い議論ではないが、私も仕事の上でどうもおかしいと思う箇所があったりして、議論になることがある。
議論というと大仰な言い方だから、口喧嘩とでも言い換えておくが、その口喧嘩ではどうしても納得いく結論に至らないことがしばしばある。
しかし、その分野に明るくない人がそれを見ると、存外すぐに溜飲を下げるような、明朗な答えに至ることがある。
どうしても普段は頭でっかちになり、専門分野であるという柔軟性のない頭が答えを譲ることができない、という事態になったりするが、氏はそれらをしっかりと読み解いていくのだ。
政治、宇宙、生物学、音楽など多種多様なテーマを調べ上げ、類稀なる文筆で書き上げる氏の文章から、ハッとさせられることが多い。
それに引き換え、自分の仕事はそれほどのクリエイティビティに富んだものだろうか、と自省し、情けなく思ってしまうのは私だけだろうか。
最後に
趣味の範疇ですが、Instagramで写真を投稿しています。
よかったら、ご覧になってください。
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deni'm
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